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第一章 平凡兄 X 幼馴染 X 天才妹
6.ニューメンバー
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謎の氷漬けから同業者であるスノーダイヤモンドのメンバーを助けて約十日、その間に虹子は索検三級に合格し、無事に能技大へ入学することが決まった。能技大の入学時期は年二回、次は九月の後期入学となる。
「おい、一緒に行ったって中には入れないぞ?
だいたい行ってどうするんだよ」
「別にいいじゃない、ただの付添いと言うか暇つぶしよ。
せっかく合格したのにリクったらお祝いもしてくれないしさ」
「だから土産に魚持って帰るって言ってるじゃねえか。
泊まりで向こうの寮なんだからさ、お前は野宿でもするつもりかよ」
「だって……」
「おにい、虹子は横須賀の女の子が気になる。
ふふ、ふふふ、今からパーティーメンバー申請すれば間に合うけど?」
「紗由ちゃん! いいこと教えてくれたね!
三級合格したんだからリクの探索隊に入れてくれるんでしょ?」
「こらっ、紗由は余計な入れ知恵しなくていいっての。
第一まだ一回も潜ったことないのに、俺も初めてのところはヤバいだろ。
そもそもパーティーに入れるなんて約束してないし、向こうも部屋がないからムリだろうが」
「じゃあまずは舎人に行ってみようよ。
横須賀へ行くのは明後日なんでしょ?」
「そうなんだけどさ……
いいのか紗由? 新型は一台しかないんだろ?」
「うん問題ない、おにいいの分だけあれば十分。
虹子はつるしの公式HMDR使いなよ」
「仕方ねえなぁ、それじゃ紗由はパーティー申請してくれよ。
午後には登録されるだろうから軽く潜ってみるか。
それとHMDRはまず初期化してっと――」
こうしてわがままな幼馴染と俺を困らせるのが大好きな妹に押し切られ、我らが『白湯スープ』は新メンバーを加えることとなった。まあ二人いればテスト用のHMDRに記録不良が出てもなんとかなるから不安は減る。特に今度の新型HMDRは革新的機能満載で不安も満載なのだ。
「おにい、虹子追加の申請は終わったよ。
完了通知が来たら個人データ書き込むからそれまでは適当に説明とかしててよ。
あとお昼ご飯食べたい」
「ほいサンキュ、HMDRのリセットは終わってるから待ちだな。
つーか、飯なんてボタン一つ押すだけなんだから自分でやれよ。
虹子も何か食う? 紗由と同じオムライスでいいか?」
「緊張してあんまり食べられなそうだからサンドウィッチがいいかな……
なるべく邪魔にならないよう頑張る!」
「後ろついてくるだけなら邪魔になんかならねえよ。
勝手にうろついたり走り出したりはしないでくれよな。
後輩指導で同行するときさ、何人かはテンパって走り出す奴とかいるんだよ」
「そんな、笑い事じゃないってば。
ホントすっごく緊張してるんだもん」
「はぐれたら動かないで紗由の指示待てば平気だよ。
どこにいたってすぐに迎えに行ってやるからさ」
「おにい、それって告白?
虹子とらぶらぶなの?」
「絶対違うわ! どれだけ彼女が欲しくてもこいつだけはあり得ん。
紗由と同じでもう一人の妹だと思ってるからな」
「そ、そうだよ、私だってリクのこと弟だって思ってるし……
好きか嫌いかで言えば好きだけど、やっぱ身内だもんね」
思わず妹だとか言ってしまったけど、虹子は俺の一つ上で年上だった。あまりの頼りなさについ妹扱いしてしまうが、小さい頃は身体も向こうのが大きくて頼もしい存在だったことを思い出す。言動や表情からすると多分俺のことが好きなんだとは思うが、それがわかっていてもやっぱりこいつは兄妹としか思えない。
俺は全てを理解しつつもちょっかいをやめない紗由へ目配せし、昼飯の支度をはじめた。
「おい、一緒に行ったって中には入れないぞ?
だいたい行ってどうするんだよ」
「別にいいじゃない、ただの付添いと言うか暇つぶしよ。
せっかく合格したのにリクったらお祝いもしてくれないしさ」
「だから土産に魚持って帰るって言ってるじゃねえか。
泊まりで向こうの寮なんだからさ、お前は野宿でもするつもりかよ」
「だって……」
「おにい、虹子は横須賀の女の子が気になる。
ふふ、ふふふ、今からパーティーメンバー申請すれば間に合うけど?」
「紗由ちゃん! いいこと教えてくれたね!
三級合格したんだからリクの探索隊に入れてくれるんでしょ?」
「こらっ、紗由は余計な入れ知恵しなくていいっての。
第一まだ一回も潜ったことないのに、俺も初めてのところはヤバいだろ。
そもそもパーティーに入れるなんて約束してないし、向こうも部屋がないからムリだろうが」
「じゃあまずは舎人に行ってみようよ。
横須賀へ行くのは明後日なんでしょ?」
「そうなんだけどさ……
いいのか紗由? 新型は一台しかないんだろ?」
「うん問題ない、おにいいの分だけあれば十分。
虹子はつるしの公式HMDR使いなよ」
「仕方ねえなぁ、それじゃ紗由はパーティー申請してくれよ。
午後には登録されるだろうから軽く潜ってみるか。
それとHMDRはまず初期化してっと――」
こうしてわがままな幼馴染と俺を困らせるのが大好きな妹に押し切られ、我らが『白湯スープ』は新メンバーを加えることとなった。まあ二人いればテスト用のHMDRに記録不良が出てもなんとかなるから不安は減る。特に今度の新型HMDRは革新的機能満載で不安も満載なのだ。
「おにい、虹子追加の申請は終わったよ。
完了通知が来たら個人データ書き込むからそれまでは適当に説明とかしててよ。
あとお昼ご飯食べたい」
「ほいサンキュ、HMDRのリセットは終わってるから待ちだな。
つーか、飯なんてボタン一つ押すだけなんだから自分でやれよ。
虹子も何か食う? 紗由と同じオムライスでいいか?」
「緊張してあんまり食べられなそうだからサンドウィッチがいいかな……
なるべく邪魔にならないよう頑張る!」
「後ろついてくるだけなら邪魔になんかならねえよ。
勝手にうろついたり走り出したりはしないでくれよな。
後輩指導で同行するときさ、何人かはテンパって走り出す奴とかいるんだよ」
「そんな、笑い事じゃないってば。
ホントすっごく緊張してるんだもん」
「はぐれたら動かないで紗由の指示待てば平気だよ。
どこにいたってすぐに迎えに行ってやるからさ」
「おにい、それって告白?
虹子とらぶらぶなの?」
「絶対違うわ! どれだけ彼女が欲しくてもこいつだけはあり得ん。
紗由と同じでもう一人の妹だと思ってるからな」
「そ、そうだよ、私だってリクのこと弟だって思ってるし……
好きか嫌いかで言えば好きだけど、やっぱ身内だもんね」
思わず妹だとか言ってしまったけど、虹子は俺の一つ上で年上だった。あまりの頼りなさについ妹扱いしてしまうが、小さい頃は身体も向こうのが大きくて頼もしい存在だったことを思い出す。言動や表情からすると多分俺のことが好きなんだとは思うが、それがわかっていてもやっぱりこいつは兄妹としか思えない。
俺は全てを理解しつつもちょっかいをやめない紗由へ目配せし、昼飯の支度をはじめた。
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