59 / 66
第十四章 国王と王妃
60.暗躍(閑話)
しおりを挟む
クラウディアの背に堕とされた刻印の消去は困難を極めた。人工皮膚を作るための材料が足りないらしく、捜索にも時間がかかるようだ。アサクサ曰く、建物の修理に使う材料や、フローリアへ出しているお茶を生成するための材料は代替品を探してきて人工的に生成しているとのことだった。
この四年ほどで学んだ内容はおおむね理解は出来ているつもりのフローリアには、始祖の遺産である宇宙船に残されたとてつもない技術力の高さは十分に理解できている。その技術力を持ってしても、さすがに無から有は生み出せないわけで、何かしらの物質を材料に用いて元素分解や再結合することで近い物質を作っていた。宇宙船の動力もそう言った方法で作り出していたが、現在は地下にある高温のマグマから熱を取り入れて地表との温度差による地熱発電で賄(まかな)っているようだ。
本当は電気を城中へ引いてしまえば色々と楽が出来るし、産業も発展し人口も増え国力は増大するに違いない。そこまでわかっていながら今まで同様ゆっくりとした発展のままにしているのは、当然のように地球の過去に学んだからである。環境破壊の進んだ星を棄てた者たちの子孫であるフローリアが、過去の失敗と同じことを繰り返すのは愚の骨頂だと考えたのだ。だがそうは言っても便利には違いないので部分部分取り入れたりはしているのだが。
結局、現在入手可能な材料で人工皮膚を作るのは困難だとの結論に達したフローリアとアサクサは、万能細胞から培養皮膚を作ることにした。パリーニを抱き込み採取させたクラウディアの一部から培養した万能細胞と、フローリアから取り出した皮膚を合わせ必要な大きさの移植用皮膚を作り施術を施したのだった。とは言えフローリアがやったことは皮膚の提供くらいのものである。
アサクサと出会ってから取り組んだことがもう一つあった。それは自分たちに刻み込まれた遺伝子操作の効果を弱めるものだ。女には日常生活で困るような作用も副作用もないのだが、男の場合は色々と困ることが起きる。主に周囲の女性に、だが。かと言って自分には残したままギルガメスの力だけ取り上げるのはフェアではないし、国を護る上でまだ武力は必要であることも考慮する必要が有った。だが未来永劫ハーレムを必要とするのでは子孫たちが困ってしまうだろう。
とりあえずは研究してみようと、こっそり眠らせた実験体(ギルガメス)から組織を採取し遺伝子の異常部分を調べたり、こっそりとサンプル(ギルガメス)を観察しその作用や副作用を記録していった。その結果、必ずしも性衝動が肉体増強に繋がっているわけではないことがわかったのだ。確かに二つはリンクはしているのだが、自慰行動を取っていない場合にも極端な肉体増強が見られることがわかったのはわずかだが前進と言える。
そのわかったことと言うのは、興奮状態と満足感の組み合わせによる相互作用だった。ギルガメスが騎士と剣の訓練を行い気持ちが高ぶった後、相手に勝つことで得られた満足感や快感、この両方が続けて起こった場合に肉体が強化されていた。それは身体を動かす訓練ならば当然得られる成果であるため、今まで見過ごされてきたと思われる。
この仮説を証明するためにフローリアが取った行動はゲームだった。自らが考案したことにして国中へ普及し流行っているゲーム、リバーシでギルガメスと勝負し、何回も負かして興奮させた後にそれとわからないようわざと負けてみる、と言うのを何度かやってみたところ、やはり勝って快感を感じた後に筋肉をはじめとする肉体に僅かな成長が見られたのだ。
身体を動かしていない為か増強量は少ないが間違いなく効果はある。しかしここからどうやって性衝動を抑えるように持っていくかで悩んでいた。この四年ほどでギルガメスが行った自慰行為は九百回を超えている。これはおよそ二日に一度のペースを大きく超えていて危険水域だ。医学的に危険なわけではないが、王族男子にとっては性衝動が促進され、むやみに女を襲うのではないかと考え心配していた。
あれからギルガメスも大分逞しく大人らしく成長しているので王位を継ぐことには賛成のフローリアだが、国王による独裁制では無くなったこの国で今まで同様の振る舞いは許されないと考えていた。それだけに両親が手を打つことに期待しているのだが、これまでそんな素振りを見せることはなく、かといってハーレムを用意している様子もなかった。
だがあと二回の年明けを経(へ)るとギルガメスは十六歳となり大人の仲間入りである。それは従来の慣習に従えば自分のハーレムを持ち子作りを始める年齢なのだ。とは言え、今まで姉が弟をこっそり監視し記録を取っていたことを明らかにして、本人へ進言、助言するなど出来るはずがない。残された道は両親へ相談し、今後ハーレムをどうするのか確認するしかないと考えていた。
この四年ほどで学んだ内容はおおむね理解は出来ているつもりのフローリアには、始祖の遺産である宇宙船に残されたとてつもない技術力の高さは十分に理解できている。その技術力を持ってしても、さすがに無から有は生み出せないわけで、何かしらの物質を材料に用いて元素分解や再結合することで近い物質を作っていた。宇宙船の動力もそう言った方法で作り出していたが、現在は地下にある高温のマグマから熱を取り入れて地表との温度差による地熱発電で賄(まかな)っているようだ。
本当は電気を城中へ引いてしまえば色々と楽が出来るし、産業も発展し人口も増え国力は増大するに違いない。そこまでわかっていながら今まで同様ゆっくりとした発展のままにしているのは、当然のように地球の過去に学んだからである。環境破壊の進んだ星を棄てた者たちの子孫であるフローリアが、過去の失敗と同じことを繰り返すのは愚の骨頂だと考えたのだ。だがそうは言っても便利には違いないので部分部分取り入れたりはしているのだが。
結局、現在入手可能な材料で人工皮膚を作るのは困難だとの結論に達したフローリアとアサクサは、万能細胞から培養皮膚を作ることにした。パリーニを抱き込み採取させたクラウディアの一部から培養した万能細胞と、フローリアから取り出した皮膚を合わせ必要な大きさの移植用皮膚を作り施術を施したのだった。とは言えフローリアがやったことは皮膚の提供くらいのものである。
アサクサと出会ってから取り組んだことがもう一つあった。それは自分たちに刻み込まれた遺伝子操作の効果を弱めるものだ。女には日常生活で困るような作用も副作用もないのだが、男の場合は色々と困ることが起きる。主に周囲の女性に、だが。かと言って自分には残したままギルガメスの力だけ取り上げるのはフェアではないし、国を護る上でまだ武力は必要であることも考慮する必要が有った。だが未来永劫ハーレムを必要とするのでは子孫たちが困ってしまうだろう。
とりあえずは研究してみようと、こっそり眠らせた実験体(ギルガメス)から組織を採取し遺伝子の異常部分を調べたり、こっそりとサンプル(ギルガメス)を観察しその作用や副作用を記録していった。その結果、必ずしも性衝動が肉体増強に繋がっているわけではないことがわかったのだ。確かに二つはリンクはしているのだが、自慰行動を取っていない場合にも極端な肉体増強が見られることがわかったのはわずかだが前進と言える。
そのわかったことと言うのは、興奮状態と満足感の組み合わせによる相互作用だった。ギルガメスが騎士と剣の訓練を行い気持ちが高ぶった後、相手に勝つことで得られた満足感や快感、この両方が続けて起こった場合に肉体が強化されていた。それは身体を動かす訓練ならば当然得られる成果であるため、今まで見過ごされてきたと思われる。
この仮説を証明するためにフローリアが取った行動はゲームだった。自らが考案したことにして国中へ普及し流行っているゲーム、リバーシでギルガメスと勝負し、何回も負かして興奮させた後にそれとわからないようわざと負けてみる、と言うのを何度かやってみたところ、やはり勝って快感を感じた後に筋肉をはじめとする肉体に僅かな成長が見られたのだ。
身体を動かしていない為か増強量は少ないが間違いなく効果はある。しかしここからどうやって性衝動を抑えるように持っていくかで悩んでいた。この四年ほどでギルガメスが行った自慰行為は九百回を超えている。これはおよそ二日に一度のペースを大きく超えていて危険水域だ。医学的に危険なわけではないが、王族男子にとっては性衝動が促進され、むやみに女を襲うのではないかと考え心配していた。
あれからギルガメスも大分逞しく大人らしく成長しているので王位を継ぐことには賛成のフローリアだが、国王による独裁制では無くなったこの国で今まで同様の振る舞いは許されないと考えていた。それだけに両親が手を打つことに期待しているのだが、これまでそんな素振りを見せることはなく、かといってハーレムを用意している様子もなかった。
だがあと二回の年明けを経(へ)るとギルガメスは十六歳となり大人の仲間入りである。それは従来の慣習に従えば自分のハーレムを持ち子作りを始める年齢なのだ。とは言え、今まで姉が弟をこっそり監視し記録を取っていたことを明らかにして、本人へ進言、助言するなど出来るはずがない。残された道は両親へ相談し、今後ハーレムをどうするのか確認するしかないと考えていた。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
命短し乙女の花は情熱の瞳に手折られる〜皇女アライシャの恋
Lise.K(星野藍月)
恋愛
精いっぱい生きるその命が儚いなんて誰が言えるだろう。
今年も王宮に夏がやって来た。
あと何回、この夏を、この花を見られるだろうか。
~・~・~
皇帝の第二皇女アライシャ。十八歳。二十歳までの余命宣告。 命短し皇女とそんな彼女を密かに慕う王子の恋物語。
王子は皇帝にアライシャを妻に娶りたいと申し出る。そのためなら王位継承権も捨てると言う。驚愕する皇帝とアライシャ。
「妻として娶っても、あなたには指一本触れないと誓います」
🔹登場人物
・皇帝アルスタ四世
アライシャの父
・アライシャ・エグゼルスタ
主人公
皇帝の第二皇女
・エルランド・ゴルト・ギルレイ
ギルレイ家第一王子
・ギリアス
アライシャの護衛官兼教育担当官
・エミリア
アライシャお付きの女官頭
⭐️表紙および挿絵はオリジナル(AIイラスト)です。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
転生したら前世チートで無双する
ゆる弥
ファンタジー
殺し屋をしていた男が人を殺すのに躊躇いを覚えるようになった。
だが、組織はその男のことを手放さなかった。
ある日その男は死ぬ事を選んだのだった。
ビルから飛び降りた。
そこからこの話は始まる。
気付けばテンプレの白い空間。
「お前に罪を償う機会を与えよう」
「何をすればいい?」
「私の指定する世界に転生してくれるだけでいい。それで償いになる。好きに生きよ」
「それで償いになるのならば」
異世界で二十歳の体で生まれ変わった。
突如悲鳴が聞こえた。
好きに生きれるのか?
この世界?
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる