転校してきた美少女に僕はヒトメボレ、でも彼女って実はサキュバスらしい!?

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
上 下
115 / 158

取り返した時間

しおりを挟む
 二度の練習試合を経て感じたのは、僕たちには確実に力がついてきているということだ。このまま日々の練習にしっかり取り組んでいけばいい結果が出せるに違いない。
 
 練習試合の翌日だというのに今すぐにでも投げたくて仕方がない。力が湧き上がってきているのが自分でもよくわかるし、気持ちも充実している今なら何球でも何連投でも出来そうだ。
 
「どうしたの?
 なにかに追い立てられているような、焦っているように感じるわ」

「えっ、僕が焦ってる?
 そんなことないと思うんだけど……
 でもなんというのか、力がみなぎってくる感じがあって身体を動かしたくて仕方ないんだ」

 今僕は咲の家のリビングにいる。例によって朝のランニングの後に声をかけられて、朝食に誘われたのだった。

「そうなの? やる気があるのは結構なことだけど、きっと今は気持ちと身体が揃っていないのよ。
 体は疲れているのに、やる気はみなぎってしまっているから空回りしているように感じるのね」

「自分ではわからないけどそんな風に見えるかな?
 昨日は確かに疲れたけど、それでもまだ投げ足りないくらいだけどなあ」

「でもそうやって結局無理することになって、しまいには体を壊してしまう人がいるわけでしょ?
 休まなきゃいけないときにはきちんと休息をとらないといけないわ」

 咲の言うことはもっともだ。気持ちに任せて無理をすることになったら、何のために連投規制や投球数制限が導入されたのかわからなくなってしまう。僕は咲の言うことはもっともだと思い首を縦に振った。

「うふふ、いい子ね。
 さ、紅茶を飲んで気持ちを落ち着けましょ。
 ハーブティーにはリラックス効果もあるのよ」

 少し冷めてちょうどいい温度になっているカップの紅茶を、一口、もう一口と飲むと段々と落ち着いてくるような気がした。でもそれと反比例するように僕は別のことに心を奪われていく。

 隣に座っていた咲がぐっと距離を詰めてくる。その小さな頭を肩へ寄りかからせて来たたあたりで、僕の関心は野球から咲へと移っていた。

 カップをテーブルへ置いてから隣へ向き直した僕は、優しく微笑んでいる咲の顔にゆっくりと自分の顔を寄せていく。

 すぐ目の前に迫った咲からはハーブティーよりも心地よく落ち着く香りが漂う。正直言うとさっきのラベンダーティーはトイレの芳香剤に近い匂いだったし……

「もっと雰囲気を大切にしないとだめよ?
 さ、いらっしゃい」

「うん…… ごめん……」

「なんで謝るのかしら?
 大丈夫よ、愛しいキミ」

 咲の言葉にはいつも安心させられる。僕は吸い込まれるようにその唇を見据え、そのまま二人は唇を重ねた。

 その艶のある唇はほんのりと暖かい。つかず離れずの距離を行ったり来たりしながら何度も重ねあい、お互いを求め合っていく。

 僕はたまらず咲を抱きしめた。すると咲がほんの少し顔を浮かして言った。

「もっと優しくね。
 痛くしないようお願い」

 ごめんとつぶやいてから、また唇をあわせて体を引き寄せる。優しくゆっくりと静かに……

 二人がそれぞれの口をふさいでいるせいで時折苦しくなるが、息継ぎをする度にちゅぱとかちゃぷとか音が鳴ってしまうことが恥ずかしかった。

 でも咲はそんなこと気にする様子もなく、僕の唇で遊ぶようにキスを繰り返している。そして…… ドサッという音と共に僕はソファへ押し倒された。

「さあ今度は私がいただく番よ。
 よく頑張ったキミはとってもおいしそう」

 そう言ってから仰向けになった僕にのしかかり体を密着させた。お互いの顔はほんのすれすれまで近づいていて、それはキスをしているときよりも照れくさい。

 咲は、僕の肩の下へその細い腕を回してから再び唇を重ねた。その直後、僕の口の中にぬるっとした感触とともに舌が差し入れられてきた。

 僕の舌へからめられている咲の舌は、温かいと言うよりも熱いとさえ感じる。頭がおかしくなりそうに興奮して、息遣いが荒くなっていくのが自分でもよくわかる。

「はあ…… 咲…… んうんん……」

「ちゅぱ…… そのまま身を任せていいのよ、愛しいキミ……」

 咲にすべてを預けた僕は、そのまま頭の中が真っ白になって、気持ちよさと幸福感が身体中を満たしていく。大体、柔らかい感触を乗せているだけでも危ういのに、意思とは裏腹に咲の体を抱きしめて引き寄せてしまう。

 本当は昨日練習試合が終わってから咲と二人きりで過ごしたかったけど、結局小町や一緒に見に来ていた子供たち、それになぜか母さんまでが養護園へ行ってしまった。
 
 おかげで、休日出勤から早めに帰ってきた父さんと僕は、冷蔵庫をあさり発掘した冷凍のナポリタンで夕飯を済ますはめになり、期待外れな晩になっていたのだ。

 でも今は咲と二人きりで邪魔はいない。昨日のうっぷんを晴らすかのように夢中で咲を求めてしまう。

「大好きだよ…… 咲……」

「うれしいわ、愛しいキミ……」

 最後に覚えているのは咲のいつもの言葉だった。そしてそのまま僕は意識を失ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸
青春
 特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。 しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?  さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?  主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!  小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。  カクヨムにて、月間3位

処理中です...