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思春期高校生の日常
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今日は午前の授業中寝ることもなく、僕にしてはきちんと授業を受けていた。昼休みはいつものようにフリースペースで野球部の連中と食べていたが、同じテーブルには神戸園子が僕の方を時折見ながら談笑に参加しているのが昨日までと違うところか。
きっと控えめできちんとした性格だと思われる園子は、やたら押してくるわけでもなく自分の話をぶっこんで来ることもなく、僕達のバカ話を聞いて笑ったりいいとこ木戸へ突っ込みを入れるくらいだった。
そんな園子を異性として見てみると魅力的なところがあるものだと感じる。ルックスは地味目で特筆するところがないのは僕と似たようなものだが、色白で健康的にふっくらとしている笑顔は母性が強そうに見える。
咲は眼光鋭く、少し怖い雰囲気だが言い方を変えればクールな軍遺棄と言うことになる。それに、スレンダー体系なのに出るべきところは出ているという、ルックスに関しては相当魅力的な女子だ。性格的には問題があると感じるやつもいるだろうが、それは僕にとってはどうと言うことはない。
掛川由布は全体的に小柄ながら、日焼けした褐色の肌と快活な話し方や態度は体育会系のそれである。なにげにパソコンとかデータ整理が得意そうなのは意外な一面だった。難点は興奮して泣き出すことだろうか。
そして若菜亜美はこれまた違った雰囲気だった。少し暗いと言うかおとなしすぎる感じかと思ったけど、奥に強く想いをためるタイプのようだ。しかしどちらかと言うと思い込みがこれが激しすぎると感じた。
由布よりもさらに小さいその姿は、いつも散歩に連れている子犬が小さく見えないほどだといったら言い過ぎか。
「カズ、さっきから静かだな。 今日はマネちゃんがいないから寂しいんじゃないのか?」
木戸の言ったその発言に園子がピクリと反応したように見えた。
「冗談はやめてくれよ、久しぶりの静かな一日になりそうでほっとしてるんだからさ」
「しかしまあ、週明けまではのんびりできると思うと気が緩むね」
「おいおい、まだ今日の練習が残ってるんだ、しっかり頼むわ」
「練習は予定通り野球盤にするけどよ、ピッチングは少しだけ別メニューでやるぜ」
「そうだな、野球盤だと本気で投げられないから別で受けてもらえるとありがたいよ」
「ねえ木戸君、野球盤ってなあに? 野球部の練習の事?」
園子が口を挟んできた。確かに野球部以外にはわからないことだっただろう。
「んー、野球盤ってのはさ、打った場所によってヒットやアウトを決めておいてそこへ狙い撃つって練習さ」
「ホームラン打ったらアウトになって、そのボールを自分で拾いに行かなきゃいけないとか特別ルールはあるけどな」
続けて僕も説明をする。
「それにピッチャーは空振り三振取っちゃダメなんだ」
「あくまで打たせるのが目的だし、打つほうも長打じゃなくてミートして野手の間を狙うのが大切なのさ」
「なるほどね、色々な練習方法があるのねえ。 野球の事も少しずつ覚えていきたいわ」
そう言って木戸へ向かってほほ笑んだ園子は、その直後に僕の方を見てからまた視線を戻した。どうやら僕を意識しているのは本当らしい。
「パン子よお、カズは相当ガード固いからもっとグイグイ行かないとマネちゃんに置いてかれるぜ」
「ちょっ、木戸、余計なこと吹き込むなよ」
「野球がおろそかになったらお前だって困るだろうに」
「そうよ木戸君、こういうのはね、押せばいいってものじゃないはずよ」
「北風と太陽ってお話有るじゃない? 私は私のペースでのんびりね、それで十分だわ」
ここで丸山が割って入ってきた。
「なんかお前ら気が合うように見えるな。 思い切って付き合えばいい感じになんじゃないのか?」
「そんでその後俺にも誰か紹介してくれよ」
こいつはホントに彼女欲しくて仕方ないって態度だ。そんな風だから話が降ってくることもないんじゃないだろうか、とは本人に言えるわけもなく苦笑で返すのみだった。
「丸山はガツガツしすぎだし、その容姿から余計にがっついて見えるんじゃないかね?」
「かといって自然体にしていても異性の気配がみじんも感じられぬ僕みたいなのもいるがな」
ハカセにしては意外な言葉だと感じる。もしかして表に出さないだけで彼女が欲しかったりするのかもしれない。あだ名はハカセが浸透しているためインドア派に思われることもあるが、別にそんなこともなく野球への取り組みもまじめな方だ。となると、一般的な男子高校生としては彼女が欲しいと思っても何もおかしくはなかった。
「だってよお、待ってるだけじゃチビベンみたいなことなかなか起きるもんじゃないぜ」
「どこでどう目をつけられたんだろうな」
「去年の学園祭の後だよ、打ち上げでカラオケ行ったんだ」
「野球部はチビベンと僕に後は当時の二三年生とかだったかな」
ハカセが淡々と意外な事実を暴露したので僕達はあっけにとられてしまった。まさかそんなことがあったのか、と僕は横から口を出す。
「何言ってんだカズ、お前は行かないって断ったんじゃないか」
「ちなみに丸山と木戸はラーメン食べに行くから先に帰るって言って、打ち上げの話も聞いてなかったはずだ」
「あれ? そうだっけ?木戸と丸山が先に帰ったのは覚えてるけど、自分の事は覚えてなかったな」
「でも佐戸部君と山下君が打ち上げに参加するなんてね。 どちらかと言うと一番行かなそうなのに、なんだかおもしろいわ」
仕舞いには園子までも話に乗ってきた。高校生は男女問わず色恋沙汰の話が好きなのかもしれない。しかし木戸はこういう話にあまり参加してこなくなったように思う。もちろんゼロではないけど、前みたいに今はどこの誰と付き合ってるとかも話題に上らなくなった。
主将にもなって大会の事も考えないといけない、そんな責任感がヤツを本気にさせているなら僕達他の部員も気を抜くところなんてありはしないだろう。
だから女子にうつつを抜かしている場合じゃないんだと丸山に言いたいところではあったが、咲との関係を隠している僕はそんなことを口には出せなかった。
まあ昼飯時だからこうやってバカ話をしているが、練習になると頭をきっちり切り替える部員ばかりだから心配はいらないだろう。一番心配があるのはもしかしたら僕かもしれない
なんと言っても、咲の事が片時も頭から離れることがないのだから。
きっと控えめできちんとした性格だと思われる園子は、やたら押してくるわけでもなく自分の話をぶっこんで来ることもなく、僕達のバカ話を聞いて笑ったりいいとこ木戸へ突っ込みを入れるくらいだった。
そんな園子を異性として見てみると魅力的なところがあるものだと感じる。ルックスは地味目で特筆するところがないのは僕と似たようなものだが、色白で健康的にふっくらとしている笑顔は母性が強そうに見える。
咲は眼光鋭く、少し怖い雰囲気だが言い方を変えればクールな軍遺棄と言うことになる。それに、スレンダー体系なのに出るべきところは出ているという、ルックスに関しては相当魅力的な女子だ。性格的には問題があると感じるやつもいるだろうが、それは僕にとってはどうと言うことはない。
掛川由布は全体的に小柄ながら、日焼けした褐色の肌と快活な話し方や態度は体育会系のそれである。なにげにパソコンとかデータ整理が得意そうなのは意外な一面だった。難点は興奮して泣き出すことだろうか。
そして若菜亜美はこれまた違った雰囲気だった。少し暗いと言うかおとなしすぎる感じかと思ったけど、奥に強く想いをためるタイプのようだ。しかしどちらかと言うと思い込みがこれが激しすぎると感じた。
由布よりもさらに小さいその姿は、いつも散歩に連れている子犬が小さく見えないほどだといったら言い過ぎか。
「カズ、さっきから静かだな。 今日はマネちゃんがいないから寂しいんじゃないのか?」
木戸の言ったその発言に園子がピクリと反応したように見えた。
「冗談はやめてくれよ、久しぶりの静かな一日になりそうでほっとしてるんだからさ」
「しかしまあ、週明けまではのんびりできると思うと気が緩むね」
「おいおい、まだ今日の練習が残ってるんだ、しっかり頼むわ」
「練習は予定通り野球盤にするけどよ、ピッチングは少しだけ別メニューでやるぜ」
「そうだな、野球盤だと本気で投げられないから別で受けてもらえるとありがたいよ」
「ねえ木戸君、野球盤ってなあに? 野球部の練習の事?」
園子が口を挟んできた。確かに野球部以外にはわからないことだっただろう。
「んー、野球盤ってのはさ、打った場所によってヒットやアウトを決めておいてそこへ狙い撃つって練習さ」
「ホームラン打ったらアウトになって、そのボールを自分で拾いに行かなきゃいけないとか特別ルールはあるけどな」
続けて僕も説明をする。
「それにピッチャーは空振り三振取っちゃダメなんだ」
「あくまで打たせるのが目的だし、打つほうも長打じゃなくてミートして野手の間を狙うのが大切なのさ」
「なるほどね、色々な練習方法があるのねえ。 野球の事も少しずつ覚えていきたいわ」
そう言って木戸へ向かってほほ笑んだ園子は、その直後に僕の方を見てからまた視線を戻した。どうやら僕を意識しているのは本当らしい。
「パン子よお、カズは相当ガード固いからもっとグイグイ行かないとマネちゃんに置いてかれるぜ」
「ちょっ、木戸、余計なこと吹き込むなよ」
「野球がおろそかになったらお前だって困るだろうに」
「そうよ木戸君、こういうのはね、押せばいいってものじゃないはずよ」
「北風と太陽ってお話有るじゃない? 私は私のペースでのんびりね、それで十分だわ」
ここで丸山が割って入ってきた。
「なんかお前ら気が合うように見えるな。 思い切って付き合えばいい感じになんじゃないのか?」
「そんでその後俺にも誰か紹介してくれよ」
こいつはホントに彼女欲しくて仕方ないって態度だ。そんな風だから話が降ってくることもないんじゃないだろうか、とは本人に言えるわけもなく苦笑で返すのみだった。
「丸山はガツガツしすぎだし、その容姿から余計にがっついて見えるんじゃないかね?」
「かといって自然体にしていても異性の気配がみじんも感じられぬ僕みたいなのもいるがな」
ハカセにしては意外な言葉だと感じる。もしかして表に出さないだけで彼女が欲しかったりするのかもしれない。あだ名はハカセが浸透しているためインドア派に思われることもあるが、別にそんなこともなく野球への取り組みもまじめな方だ。となると、一般的な男子高校生としては彼女が欲しいと思っても何もおかしくはなかった。
「だってよお、待ってるだけじゃチビベンみたいなことなかなか起きるもんじゃないぜ」
「どこでどう目をつけられたんだろうな」
「去年の学園祭の後だよ、打ち上げでカラオケ行ったんだ」
「野球部はチビベンと僕に後は当時の二三年生とかだったかな」
ハカセが淡々と意外な事実を暴露したので僕達はあっけにとられてしまった。まさかそんなことがあったのか、と僕は横から口を出す。
「何言ってんだカズ、お前は行かないって断ったんじゃないか」
「ちなみに丸山と木戸はラーメン食べに行くから先に帰るって言って、打ち上げの話も聞いてなかったはずだ」
「あれ? そうだっけ?木戸と丸山が先に帰ったのは覚えてるけど、自分の事は覚えてなかったな」
「でも佐戸部君と山下君が打ち上げに参加するなんてね。 どちらかと言うと一番行かなそうなのに、なんだかおもしろいわ」
仕舞いには園子までも話に乗ってきた。高校生は男女問わず色恋沙汰の話が好きなのかもしれない。しかし木戸はこういう話にあまり参加してこなくなったように思う。もちろんゼロではないけど、前みたいに今はどこの誰と付き合ってるとかも話題に上らなくなった。
主将にもなって大会の事も考えないといけない、そんな責任感がヤツを本気にさせているなら僕達他の部員も気を抜くところなんてありはしないだろう。
だから女子にうつつを抜かしている場合じゃないんだと丸山に言いたいところではあったが、咲との関係を隠している僕はそんなことを口には出せなかった。
まあ昼飯時だからこうやってバカ話をしているが、練習になると頭をきっちり切り替える部員ばかりだから心配はいらないだろう。一番心配があるのはもしかしたら僕かもしれない
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