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恵みの留守
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僕が家へ戻ると父さんは台所で電話をしていた。
「だから本当なんだってばよ、カズの野郎が女の子と二人きりで出かけてたんだぜ」
「今その子を送りに行ってるから帰ってきたら問い詰めてやる」
「えっなんでだよ、お前だって興味あるだろ?」
「なかなかかわいい子だったし、ここははっきりしておきたいじゃないか」
「いやでもさ、あの堅物に彼女ができたならめでたいしさ」
「茶化したり冷かしたりしないって、どういう関係か聞くだけだよ」
「まあお前がやめとけって言うならそうするよ……」
どうやら母さんと話しているようだ。普段はめったに電話なんてしないのに、こういうときに限って余計なことをする。
僕は電話を切った父さんへ後ろから声をかけた。
「ただいま、送って来たよ」
「おうお帰り、今の子はお前の彼女か?」
「いくら近所だからって生き帰りの時間も違うのに、お前がそんな急に親しくなれるわけないよな?」
「今母さんに勘ぐるんじゃないって言われたばかりじゃないの? ちゃんと聞こえてたよ」
「いやまあそうなんだけどな、親として知っておかないといけないこともあるだろ?」
「ったく、物は言いようだね、でも彼女なんかじゃないよ」
「この春に編入してきたんだけど、席が僕の後ろで家も近いからなんだ」
「本当にそれだけかあ? 大体お前が人に教えるようなことがあるのかね?」
「日本語だってペラペラだったじゃないか」
「真弓先生に頼まれたんだよ、さすがに小学生レベルなら僕でも教えられるしさ」
「話すのは大体平気だけど読み書きは怪しいみたいだよ」
「お前がそういうならそうなのかねえ、大体普通に話すことができるのか?」
「練習中に女の子から声援送られるだけでドギマギしてるくせによ」
「それは…… まあ否定できないけど…… でも下心がない相手ならなんてことないさ」
これは大嘘である。どちらかというと下心があるのは僕なのだ。しかしそんなことを悟られてはいけないのでごく自然にふるまう。
「どうでもいいけどあんまり変な方向へは勘ぐらないでよね」
「僕はともかく、相手に失礼だよ」
「そうか、そうだよな、でもこれがきっかけでお前の女嫌いが治るといいんだけどよ」
「なんだかんだ言ってもファンは大切にしないといけないもんさ」
父さんはそう言って笑っている。現役時代は早々に結婚していたはずなのにそんなことを言うなんて、いくらファンへのサービスと言えど母さんが心穏やかだったとは思えない。
「とりあえずコーヒーでも淹れようか、珍しく早く帰ってきたことだし風呂入って早めに寝る?」
「こんな時間に帰ってきたくらいだから明日早いの?」
「おおそうだ、忘れてたよ、明日から出張になっちまったんだ」
「明日はランニングしないで空港へ行かないといけないんだけど、何も用意してないしどうすっかな」
「週末にかけて出張は珍しいね、行くとしても月曜からかと思ってたよ」
「着替えはちゃんとタンスへ入れてあるから自分で詰めてよ、母さんがいなくてもそれくらいできるでしょ?」
「お、おう、もちろんできるさ」
「今回は支社へ行くんじゃなくてホテルだから着替えだけでいいな」
「替えのスーツも持っていきなよ、どうせ向こうで飲んだくれるんでしょ?」
父さんには、以前の出張で初日に飲みすぎてスーツを汚してしまい、現地で一着購入した前科があるのだ。あの時は帰ってきてから母さんにこっぴどく叱られてたっけ。
「そうだな、向こうでクライアントと地元の振興会が接待してくれるらしいんだけどよ」
「それが土曜じゃないと都合悪いんだとさ、日本海側だから魚が旨そうで楽しみだ」
「飲み食いを楽しみにするのもいいけど仕事も忘れないでよ」
「そういえば、母さんはいつ帰ってくるとか言ってた?」
「ああ、それそれ、金曜の夜に帰ってくるって言ってたけどさ」
「実は今回の出張へは家族も一緒にどうぞって言われてるんだよ」
「なにそれ? ずいぶん変わったお客さんだね」
「じゃあ母さんは帰ってきたらその足で追いかけるってこと?」
「まあ土曜の朝に出ればいいと思うわ、一応話はしてあるけどまた明日説明しておくよ」
「久美ちゃんの具合も大分いいみたいだしな」
「予定日はまだまだ先なのに大変なんだね」
「男にはわかってやれない苦しみだろうな」
「勝は相変わらず仕事が忙しいみたいだけど、親になるってプレッシャーで落ち着きがないらしいよ」
「そっかあ、兄さんも大変なんだな」
「と言うことは父さんと母さんももうすぐ爺ちゃん婆ちゃんになるってことか」
「それを言うなよ、一気に年取った気になっちまうぜ」
「孫には絶対おじいちゃんなんて呼ばせないつもりだよ」
「だったら少しはお酒を控えて健康でいないとね」
「こりゃ一本取られたな、さてと用意しちまうか」
「僕は風呂入って寝るよ、コーヒーセットしておくから電源切り忘れないでね」
「おう、サンキューな」
僕はコーヒーメーカーをセットしてから自分の部屋へ戻ってガッツポーズを取った。なんといっても週末までは一人になれる。今の僕にとってこんなに嬉しいことはない。
いつの間にか鼻歌を歌いつつ風呂へ入る用意をしていたが、そういえば風呂を沸かしてなかったんだと思い出し風呂場へ向かった。
湯沸かし器の自動ボタンを押してから台所へいくと父さんがまた電話をしていた。
「じゃあ明日の朝迎え来るの待ってりゃいいんだな」
「山本も同じ飛行機に乗るなら空港で朝飯でも食うか、あいつは一人もんだしよ」
「えっ? 飛行機じゃなくて特急で行くのか、じゃあ矢島駅で合流したらいいんかね」
「お前のかみさんが一緒だから立ち食いソバってわけにはいかねえな」
「かふぇにすっか、おしゃれなかふぇよ、デカい駅だからなんかあんだろ」
電話口の向こうはおそらく江夏さんだろう。今回の仕事は三人チームって言っていたから山本さんというのがもう一人のことか。
「そういやよ、カズの野郎が女の子の友達と一緒にいやがってよ、生意気に」
「いや違うって言ってたけどホントのとこはどうかわかんねえな」
まったく、父さんたら江夏さんにまでペラペラと…… 僕はコーヒーをカップへ入れわざと大きな音で父さんの前に置いた。
「おっと、本人に聞かれちまったからこの話はまた明日っつーことで」
「明日もしなくていいってば! もう勘弁してよ!」
「江夏さんだって明日の用意があるんだから早く済ませて寝てください!」
「おーこわ、じゃあ明日待ってるからよろしく」
ようやく電話を切った父さんへ僕はまた苦言を言った。
「だからさ、人のことをあれこれ勘ぐらないでよ、相手にも迷惑かかるって言ったでしょ!」
「わかってるよ、でもつい言いたくなっちゃってよ」
「でも連れ合いがいるってのはいいもんだぞ、やる気が違ってくるからな」
「そりゃそうかもしれないけどさ、でも僕達はそんな仲じゃないんだから」
「なんでそんなにゴシップが好きなんだよ、母さんが帰ってきたら女の子がいる店に飲みに行ってたって言いつけてやるから」
「カズ、そりゃ勘弁だよ、んじゃこの話はこれで仕舞いな」
「さーて風呂でも入るかな、お前先に入るか?」
「ううん、父さん先に入っていいよ、その間に荷物確認しておくね」
「ボストンバッグも出してくるよ」
「おう、よろしくな」
まったく、母さんがいないとホントわがままな子供みたいになっちゃうんだから困る。でも両親の仲がいいのはいいことだし、だからこそ父さんも子供みたいなままでいられるのかもしれない。
僕はコップへ牛乳を入れてからほんの少しだけコーヒーを足す。それを一口飲んだ後に押入れのボストンバッグを取りに行き、父さんがタンスから出しただけの着替えを畳みながら全て詰めた。
入れ替わりで風呂へ入った僕は、上機嫌で湯船に浸かりながら肩を揉んでいた。明日と土曜日は完全に一人、ふいに訪れた自由な時間だ。早く咲にも伝えたい気分になっていた。
風呂から出てスウェットに着替えた僕は、残っているコーヒーを父さんのカップへ注ぎ、飲みかけのコーヒー牛乳を飲み干した。
「父さん、荷物は出来てるけど仕事のものは自分で入れてね」
「明日は同じ時間でいいんだよね?」
「ありがとな、時間はいつもと同じでいいかな」
「江夏が六時ごろに来るって言ってたからよ」
「わかったよ、それじゃおやすみ」
「コーヒー飲んだら水はっておいてね、明日洗うからさ」
そういって僕はそそくさと自分の部屋へ引き上げた。とにかく今は早く咲と話がしたかったのだ。
親が留守にするだけでこんなに舞い上がるなんて、ついこないだまでの僕では考えられないことだったが、今の自分にはそれがおかしいことだとは思えず明らかに冷静さを欠いている。
それくらい咲に夢中になっている僕は、部屋に戻ってすぐにベッドへ転がりうきうき気分で咲へメールを送った。
しばらくすると咲からもメールが返ってくる。こんななんてことないやり取りで幸せな気持ちになれるなんて、女子と付き合うことも悪いもんじゃない。
おやすみとひとことのメールをするつもりが、明日から父さんも出張なことや土曜は完全にフリーなことまで咲に伝えていた。
そしてそんなやりとりをしながら、いつの間にかスマホを握りしめたままで眠りについてしまったのだった。
「だから本当なんだってばよ、カズの野郎が女の子と二人きりで出かけてたんだぜ」
「今その子を送りに行ってるから帰ってきたら問い詰めてやる」
「えっなんでだよ、お前だって興味あるだろ?」
「なかなかかわいい子だったし、ここははっきりしておきたいじゃないか」
「いやでもさ、あの堅物に彼女ができたならめでたいしさ」
「茶化したり冷かしたりしないって、どういう関係か聞くだけだよ」
「まあお前がやめとけって言うならそうするよ……」
どうやら母さんと話しているようだ。普段はめったに電話なんてしないのに、こういうときに限って余計なことをする。
僕は電話を切った父さんへ後ろから声をかけた。
「ただいま、送って来たよ」
「おうお帰り、今の子はお前の彼女か?」
「いくら近所だからって生き帰りの時間も違うのに、お前がそんな急に親しくなれるわけないよな?」
「今母さんに勘ぐるんじゃないって言われたばかりじゃないの? ちゃんと聞こえてたよ」
「いやまあそうなんだけどな、親として知っておかないといけないこともあるだろ?」
「ったく、物は言いようだね、でも彼女なんかじゃないよ」
「この春に編入してきたんだけど、席が僕の後ろで家も近いからなんだ」
「本当にそれだけかあ? 大体お前が人に教えるようなことがあるのかね?」
「日本語だってペラペラだったじゃないか」
「真弓先生に頼まれたんだよ、さすがに小学生レベルなら僕でも教えられるしさ」
「話すのは大体平気だけど読み書きは怪しいみたいだよ」
「お前がそういうならそうなのかねえ、大体普通に話すことができるのか?」
「練習中に女の子から声援送られるだけでドギマギしてるくせによ」
「それは…… まあ否定できないけど…… でも下心がない相手ならなんてことないさ」
これは大嘘である。どちらかというと下心があるのは僕なのだ。しかしそんなことを悟られてはいけないのでごく自然にふるまう。
「どうでもいいけどあんまり変な方向へは勘ぐらないでよね」
「僕はともかく、相手に失礼だよ」
「そうか、そうだよな、でもこれがきっかけでお前の女嫌いが治るといいんだけどよ」
「なんだかんだ言ってもファンは大切にしないといけないもんさ」
父さんはそう言って笑っている。現役時代は早々に結婚していたはずなのにそんなことを言うなんて、いくらファンへのサービスと言えど母さんが心穏やかだったとは思えない。
「とりあえずコーヒーでも淹れようか、珍しく早く帰ってきたことだし風呂入って早めに寝る?」
「こんな時間に帰ってきたくらいだから明日早いの?」
「おおそうだ、忘れてたよ、明日から出張になっちまったんだ」
「明日はランニングしないで空港へ行かないといけないんだけど、何も用意してないしどうすっかな」
「週末にかけて出張は珍しいね、行くとしても月曜からかと思ってたよ」
「着替えはちゃんとタンスへ入れてあるから自分で詰めてよ、母さんがいなくてもそれくらいできるでしょ?」
「お、おう、もちろんできるさ」
「今回は支社へ行くんじゃなくてホテルだから着替えだけでいいな」
「替えのスーツも持っていきなよ、どうせ向こうで飲んだくれるんでしょ?」
父さんには、以前の出張で初日に飲みすぎてスーツを汚してしまい、現地で一着購入した前科があるのだ。あの時は帰ってきてから母さんにこっぴどく叱られてたっけ。
「そうだな、向こうでクライアントと地元の振興会が接待してくれるらしいんだけどよ」
「それが土曜じゃないと都合悪いんだとさ、日本海側だから魚が旨そうで楽しみだ」
「飲み食いを楽しみにするのもいいけど仕事も忘れないでよ」
「そういえば、母さんはいつ帰ってくるとか言ってた?」
「ああ、それそれ、金曜の夜に帰ってくるって言ってたけどさ」
「実は今回の出張へは家族も一緒にどうぞって言われてるんだよ」
「なにそれ? ずいぶん変わったお客さんだね」
「じゃあ母さんは帰ってきたらその足で追いかけるってこと?」
「まあ土曜の朝に出ればいいと思うわ、一応話はしてあるけどまた明日説明しておくよ」
「久美ちゃんの具合も大分いいみたいだしな」
「予定日はまだまだ先なのに大変なんだね」
「男にはわかってやれない苦しみだろうな」
「勝は相変わらず仕事が忙しいみたいだけど、親になるってプレッシャーで落ち着きがないらしいよ」
「そっかあ、兄さんも大変なんだな」
「と言うことは父さんと母さんももうすぐ爺ちゃん婆ちゃんになるってことか」
「それを言うなよ、一気に年取った気になっちまうぜ」
「孫には絶対おじいちゃんなんて呼ばせないつもりだよ」
「だったら少しはお酒を控えて健康でいないとね」
「こりゃ一本取られたな、さてと用意しちまうか」
「僕は風呂入って寝るよ、コーヒーセットしておくから電源切り忘れないでね」
「おう、サンキューな」
僕はコーヒーメーカーをセットしてから自分の部屋へ戻ってガッツポーズを取った。なんといっても週末までは一人になれる。今の僕にとってこんなに嬉しいことはない。
いつの間にか鼻歌を歌いつつ風呂へ入る用意をしていたが、そういえば風呂を沸かしてなかったんだと思い出し風呂場へ向かった。
湯沸かし器の自動ボタンを押してから台所へいくと父さんがまた電話をしていた。
「じゃあ明日の朝迎え来るの待ってりゃいいんだな」
「山本も同じ飛行機に乗るなら空港で朝飯でも食うか、あいつは一人もんだしよ」
「えっ? 飛行機じゃなくて特急で行くのか、じゃあ矢島駅で合流したらいいんかね」
「お前のかみさんが一緒だから立ち食いソバってわけにはいかねえな」
「かふぇにすっか、おしゃれなかふぇよ、デカい駅だからなんかあんだろ」
電話口の向こうはおそらく江夏さんだろう。今回の仕事は三人チームって言っていたから山本さんというのがもう一人のことか。
「そういやよ、カズの野郎が女の子の友達と一緒にいやがってよ、生意気に」
「いや違うって言ってたけどホントのとこはどうかわかんねえな」
まったく、父さんたら江夏さんにまでペラペラと…… 僕はコーヒーをカップへ入れわざと大きな音で父さんの前に置いた。
「おっと、本人に聞かれちまったからこの話はまた明日っつーことで」
「明日もしなくていいってば! もう勘弁してよ!」
「江夏さんだって明日の用意があるんだから早く済ませて寝てください!」
「おーこわ、じゃあ明日待ってるからよろしく」
ようやく電話を切った父さんへ僕はまた苦言を言った。
「だからさ、人のことをあれこれ勘ぐらないでよ、相手にも迷惑かかるって言ったでしょ!」
「わかってるよ、でもつい言いたくなっちゃってよ」
「でも連れ合いがいるってのはいいもんだぞ、やる気が違ってくるからな」
「そりゃそうかもしれないけどさ、でも僕達はそんな仲じゃないんだから」
「なんでそんなにゴシップが好きなんだよ、母さんが帰ってきたら女の子がいる店に飲みに行ってたって言いつけてやるから」
「カズ、そりゃ勘弁だよ、んじゃこの話はこれで仕舞いな」
「さーて風呂でも入るかな、お前先に入るか?」
「ううん、父さん先に入っていいよ、その間に荷物確認しておくね」
「ボストンバッグも出してくるよ」
「おう、よろしくな」
まったく、母さんがいないとホントわがままな子供みたいになっちゃうんだから困る。でも両親の仲がいいのはいいことだし、だからこそ父さんも子供みたいなままでいられるのかもしれない。
僕はコップへ牛乳を入れてからほんの少しだけコーヒーを足す。それを一口飲んだ後に押入れのボストンバッグを取りに行き、父さんがタンスから出しただけの着替えを畳みながら全て詰めた。
入れ替わりで風呂へ入った僕は、上機嫌で湯船に浸かりながら肩を揉んでいた。明日と土曜日は完全に一人、ふいに訪れた自由な時間だ。早く咲にも伝えたい気分になっていた。
風呂から出てスウェットに着替えた僕は、残っているコーヒーを父さんのカップへ注ぎ、飲みかけのコーヒー牛乳を飲み干した。
「父さん、荷物は出来てるけど仕事のものは自分で入れてね」
「明日は同じ時間でいいんだよね?」
「ありがとな、時間はいつもと同じでいいかな」
「江夏が六時ごろに来るって言ってたからよ」
「わかったよ、それじゃおやすみ」
「コーヒー飲んだら水はっておいてね、明日洗うからさ」
そういって僕はそそくさと自分の部屋へ引き上げた。とにかく今は早く咲と話がしたかったのだ。
親が留守にするだけでこんなに舞い上がるなんて、ついこないだまでの僕では考えられないことだったが、今の自分にはそれがおかしいことだとは思えず明らかに冷静さを欠いている。
それくらい咲に夢中になっている僕は、部屋に戻ってすぐにベッドへ転がりうきうき気分で咲へメールを送った。
しばらくすると咲からもメールが返ってくる。こんななんてことないやり取りで幸せな気持ちになれるなんて、女子と付き合うことも悪いもんじゃない。
おやすみとひとことのメールをするつもりが、明日から父さんも出張なことや土曜は完全にフリーなことまで咲に伝えていた。
そしてそんなやりとりをしながら、いつの間にかスマホを握りしめたままで眠りについてしまったのだった。
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