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11.シーツ
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私はは心の中で渦巻く感情を抱えながらハズモンドの家を出て走り出した。冷たい空気が肌を刺すがそれでも急がなければならない。そんな決意で私は満たされ手いると感じる。きっとすべてうまくいくはずだ。
家に近づくにつれ自分の選択を思い返す。ハズモンドの言葉を魅力的だと思ってしまった原因はなんなのか。それはわかりきっていて、グラムエルの気持ちとカトリーヌとの関係をずっと気にしていたからだ。
帰り着いた私は家の中に誰もいないことに気が付いた。時間を考えれば当たり前だが二人とも仕事へ行っているのだろう。私だけが毎日家にいられる。これは一見すると幸せなことだし、その環境を与えてくれているのはグラムエルである。彼は確かに私を一般的に想像されるようには愛して暮れていないように見える、しかし全てを与えてくれていることもまだ事実なのだ。
白だろうが黒だろうが結婚していることには変わりない。私はそんな形式にこだわるべきではなく、彼が最初に言ったように結婚なんて契約であると割り切ることを心に決めて帰って来たのだ。
以前あれだけ話し合って理解したはずだったグラムエルの愛の形。それを再び疑ってしまったことを詫びなければならない。そこにこそ私の幸せは存在するはずなのだからなんとしても繋ぎ止めなければならない。
それでも彼の、ハズモンドの言葉が頭の中で繰り返される。
「君を幸せにできる」そのフレーズは何度も何度も反響していた。幸せとは一体何なのか? グラムエルとの関係が幸せでないとでも言う燈なのだろうか。他人にはわからない関係性がそこにあり、私は十分幸せに暮らしている、そう信じたかった。
そしてカトリーヌ、彼女は一番の親友でなんでも話せる大切な人。私よりもいくつか若くやわらかで美しい魅力あふれる女性…… 私にとってかけがえのない大切な友人、助けになってくれる存在だ。
しかしグラムエルと一緒にいるところを見ると心がざわついてしまう。寄りに選って親友に対し妬みや羨みを感じてしまうのだ。私はそんな自分の心の穢れを恥じているのだが、そのことをしまいこもうとするたびに、チクリと抵抗感がが産まれてくる。
一体どうすればいいのか、どう考えればいいのか、色々と考えてみても答えは出ないし、少しでもおかしなことをしたら二人の関係が崩れてしまうだろう。結婚生活は形式的であったとしても、友情は大切に守りたい。
『涙……? なぜ? 別に悲しくなんてないのになんで涙が出てきたのかしら』そんなことを思い浮かべながら私は吸いこまれるようにグラムエルの部屋へと入ってしまった。
朝起きたままで整えられていないベッド、たまには妻らしく家事をするのも悪くない。気晴らしにもなるし、たまには帰ってきた夫の喜ぶ顔が見て見たい。シーツや枕カバーを交換してきちんと整えて行くと気持ちまで整えられていくようだ。
私はまっ白いシーツを抱えて庭へと出た。井戸から水を汲み上げていくと桶が溢れていく。中に入れたシーツは当然水を吸って色を変えて行った。徐々に消えて行くワインの香りと、桶の中で揺らぐ長い髪…… ポツリポツリと水面には水滴が落ちていた。
なんでこんなことになっているのだろう。私が一体何をしたと言うのか。確かに完璧な妻ではないのかもしれないが、それでも出来ることはやろうと心掛けてきたし、グラムエルのために、彼の望むように過ごしてきたはずだ。
私は間違っていない。本当に過ちを犯しているのはグラムエル、そしてカトリーヌなのだ。いつの間にか洗濯をする手が止まって動かなくなっていた。それでも桶の水面には水滴が落ち続け、ぽちゃんぽちゃんと音を立てる。
庭へと広げられたシーツはきれいな白だ。その色はまるで私を惑わすようにはためいている。『グラムエルはバーバラを愛していない。白い結婚であることは誰でも知っている』ハズモンドの言葉が再び頭の中でこだまし始めていた。
家に近づくにつれ自分の選択を思い返す。ハズモンドの言葉を魅力的だと思ってしまった原因はなんなのか。それはわかりきっていて、グラムエルの気持ちとカトリーヌとの関係をずっと気にしていたからだ。
帰り着いた私は家の中に誰もいないことに気が付いた。時間を考えれば当たり前だが二人とも仕事へ行っているのだろう。私だけが毎日家にいられる。これは一見すると幸せなことだし、その環境を与えてくれているのはグラムエルである。彼は確かに私を一般的に想像されるようには愛して暮れていないように見える、しかし全てを与えてくれていることもまだ事実なのだ。
白だろうが黒だろうが結婚していることには変わりない。私はそんな形式にこだわるべきではなく、彼が最初に言ったように結婚なんて契約であると割り切ることを心に決めて帰って来たのだ。
以前あれだけ話し合って理解したはずだったグラムエルの愛の形。それを再び疑ってしまったことを詫びなければならない。そこにこそ私の幸せは存在するはずなのだからなんとしても繋ぎ止めなければならない。
それでも彼の、ハズモンドの言葉が頭の中で繰り返される。
「君を幸せにできる」そのフレーズは何度も何度も反響していた。幸せとは一体何なのか? グラムエルとの関係が幸せでないとでも言う燈なのだろうか。他人にはわからない関係性がそこにあり、私は十分幸せに暮らしている、そう信じたかった。
そしてカトリーヌ、彼女は一番の親友でなんでも話せる大切な人。私よりもいくつか若くやわらかで美しい魅力あふれる女性…… 私にとってかけがえのない大切な友人、助けになってくれる存在だ。
しかしグラムエルと一緒にいるところを見ると心がざわついてしまう。寄りに選って親友に対し妬みや羨みを感じてしまうのだ。私はそんな自分の心の穢れを恥じているのだが、そのことをしまいこもうとするたびに、チクリと抵抗感がが産まれてくる。
一体どうすればいいのか、どう考えればいいのか、色々と考えてみても答えは出ないし、少しでもおかしなことをしたら二人の関係が崩れてしまうだろう。結婚生活は形式的であったとしても、友情は大切に守りたい。
『涙……? なぜ? 別に悲しくなんてないのになんで涙が出てきたのかしら』そんなことを思い浮かべながら私は吸いこまれるようにグラムエルの部屋へと入ってしまった。
朝起きたままで整えられていないベッド、たまには妻らしく家事をするのも悪くない。気晴らしにもなるし、たまには帰ってきた夫の喜ぶ顔が見て見たい。シーツや枕カバーを交換してきちんと整えて行くと気持ちまで整えられていくようだ。
私はまっ白いシーツを抱えて庭へと出た。井戸から水を汲み上げていくと桶が溢れていく。中に入れたシーツは当然水を吸って色を変えて行った。徐々に消えて行くワインの香りと、桶の中で揺らぐ長い髪…… ポツリポツリと水面には水滴が落ちていた。
なんでこんなことになっているのだろう。私が一体何をしたと言うのか。確かに完璧な妻ではないのかもしれないが、それでも出来ることはやろうと心掛けてきたし、グラムエルのために、彼の望むように過ごしてきたはずだ。
私は間違っていない。本当に過ちを犯しているのはグラムエル、そしてカトリーヌなのだ。いつの間にか洗濯をする手が止まって動かなくなっていた。それでも桶の水面には水滴が落ち続け、ぽちゃんぽちゃんと音を立てる。
庭へと広げられたシーツはきれいな白だ。その色はまるで私を惑わすようにはためいている。『グラムエルはバーバラを愛していない。白い結婚であることは誰でも知っている』ハズモンドの言葉が再び頭の中でこだまし始めていた。
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