樹くんの甘い受難の日々

生梅

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第一章

56.気分は七三分け

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「他に志望大学があるなら別だけど、特段ないなら一緒の大学にしよう?」
「えぇぇ~…」
「なに?樹は俺らと一緒の大学じゃ嫌なの?」
「嫌じゃないけど、聖学は…」
「樹の人生にマイナスにはならないと思うけど?むしろプラスになるんじゃない?
聖学は偏差値が高い大学だけど、結構ユニークな学部があるし、樹にとっても悪い話じゃないと思うけど」
「そりゃ行けるなら行ってみたいと思う大学だよ?でも、今からやって間に…「合う。いや、合わせるんだよ」」
「ひぃえ」
「だから、これからみっちり1年半やろうね?俺と勝は推薦枠で狙ってるから、樹をしっかりとしごいてあげるね?」
「ひぃぃ」

目が笑ってない雅樹に詰め寄られて俺は、観念した。
もし行けるなら行ってみたいとは思う憧れの大学には違いないし、雅樹の言う通りプラスにしかならない。聖学がダメだったとしても勉強する事は俺のためになる。
それに————好きな奴らと同じ大学に行けたら、こんなに嬉しい事はない。
動機は不純だけど、目指して頑張ってみるのも悪くないかも。

「分かった。俺、頑張ってみるよ」
「本当?」

すっごく嬉しそうに雅樹が笑うから、俺もすげぇ嬉しくなった。

「大学入ったら、3人で一緒に暮らそうか」
「は?」
「家から通えない事もないけど、今よりは遠くなるし課題も増えるから一緒にやれると色々と都合がいいでしょ?何よりも社会人になるまでなんて、俺が待ちきれないんだよね」
「ふへぇぇ…」

ふしゅるるると顔から湯気が出てる気がする。
嬉しくて、ドキドキして口が緩むのを我慢できない。

「万が一別々の大学になったとしても、一緒に暮らせるなら我慢できるだろ?だから前向きに検討しろよ。何度も言うけど、俺も雅樹も樹とはずっと一緒にいるつもりだからな?」
「ひゃい…」

あぁぁぁぁもう!なんなの!このイケメン達っっっ!!!!
俺をトキメキで殺す気?殺す気なの??
トキメキで窒息しちゃう!

「ふふふ。樹、顔が真っ赤。嬉しい?」

雅樹が鼻先にちゅっとキスして、にんまり笑ながら言うから、俺はこくこくと赤べこのように首を縦に振り続けた。

「それに、一緒に住んでればどこででもセックスできるでしょ?」
「ひゃい…」
「やべぇ。想像したら期待で滾る。裸でエプロンとかして欲しいなー。
そんで、後ろから責め立てる。くにゃくにゃになった樹をテーブルの上で貪りてぇな」
「はぅぅ」
「樹ってば、想像して感じちゃった?目が潤んできてるよ?」

妄想で火照った体を2人はキスでさらに追い詰めてくにゃくにゃにした。
俺、もうちょっとでキスだけでいけちゃうかもしれない…。
好きって自覚したのも更にブーストかけてる気がする。
席に戻ったらあずきさんと山田が俺を見て顔を真っ赤にしてたけど、なんでだ?
雅樹が「色気駄々洩れの樹ってヤバいよねー」って言ってたけど、俺に言わせてもらえれば、色気の化身である雅樹に言われたくない、である。



◇◇◇◇◇◇

その日、俺はガッチガチに緊張していた。
気分は七三分けだ(意味はない)
日中、雅樹と勝に呼び出しラインを送っておいた。
俺は、覚悟を決めた。
2人に気持ちを伝えるだけなのに、考えると緊張して震える。きっと、どんな答えでも2人は受け入れてくれると思うけど、それでも緊張する。

「樹?どうしたの、そんな面白い顔して」

いつものサボり部屋に来た雅樹が俺の顔を見るなり噴き出した。なんて失礼な奴だ。

「勝は、日直だから職員室にノート持って行ってから来るって」
「お、おう」

後ろ手に扉を閉めて、そこから動かずにいて俺をじっと見ていた。

「どうした?」
「んー…いやなんでもない」

雅樹が近づいてきて、俺の顔を包み込んで顔を覗き込んできた。

「樹、本当に好きだよ。愛してる」
「ひょ!」
「ふふ。変な声。でも、本当だよ。どれだけ言葉を尽くしても伝えきれないくらい、俺は樹に惚れてる。俺から離れられないように体を調教しちゃおうと考えちゃうくらい、浅ましい気持ちがあるよ」
「ちょ、ちょうきょう…」
「もちろん、無理強いはしないけど。……多分」
「最後、不穏!?」

顔が近づいてきてキスをする。
もう、何度キスをしたか分からないぐらい、こいつらとはキスをしまくっている。
雅樹と勝のキスはそれぞれに個性があって、それぞれに気持ち良くて、俺を脳みその芯からグズグズにしてしまう。

「すまん。遅れた」

勝が入ってきた。
ちょっと、緊張した顔をしている?
ずかずかと近づいてきて、俺を雅樹から奪うとぎゅうと抱きしめてきた。

「勝?」
「樹……すっげぇ好きだ。頼むからさ、ずっと側にいてくれよ」

勝らしくない弱弱しい声で言われてビックリした。
もしかして、2人とも俺の様子から察してるんかな?


「あのさ、今日は2人にちゃんと返事しようと思ってさ」

2人が神妙な顔をして頷いた。

「俺さ、正直、親友の延長線上のお遊びだと思ってたんだよね。少なくとも最初はお前らもそうだったんじゃないかと思う。2人がいつから俺をそういう恋愛対象として見てくれてたんかは分からないけど、肉欲だけの感情に、いつの間にか違う感情が芽生えてたんだ。
2人は俺をすげぇ大切にしてくれて、ドロドロに甘やかしてくれて、心地よくてその状況をあまり深く考える事無く享受しててさ。
気が付いたら親友に向ける感情じゃなくなってた。

お前らが、俺に向けてくれてる気持ちとか、してくれるような事を他の誰かに…って考えたら、すげぇ嫌だなって思ったんだよ。
それを隣で今までみたいに見れるかって言ったら絶対無理だって。

だけど、何度考えてもやっぱり1人だけは選べないし———志木の事も好きだ。
お前らに酷い事を言ってる自覚もある。罪悪感もある。
ビッチって言われても仕方ないし、お前らにふ、ふ、振られる覚悟も…ちょっとだけある。振られたら泣くけど。

だっ…だから、えぇーと、こんな俺…でよければ、お、お付き合いしてくらさい!」

最後、緊張しすぎて噛んだ。

「「………」」

え。2人が黙ったままなんだけど。
ちょ、ちょっと、何か言えよ。段々不安になってくる。
多情すぎる俺に呆れてる??
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