樹くんの甘い受難の日々

生梅

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第一章

44.どうしてもイけない……(番外編④)

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「なんか、寂しそうだったね」
「な」

アディーロが嵐のように去った後、部屋に取り残された俺らはお茶を飲んでいた。
瞳の事を褒めたら、あの傲岸不遜なアディーロに影が差して、そのギャップにびっくりした。

「それにしても、随分と気に入られちゃったね?本当に帰してもらえないかもしれないね」
「それな。犬か猫みたいな可愛がり方だけどな。物珍しいんだろ」

それから、何日も何日もアディーロは俺だけを抱いた。
同じベッドには美鈴もいるが、抱くのは俺だけ。
最近は美鈴はアディーロとはしないが、アディーロに抱かれている俺とキスしたり
俺のちんこを扱いたり、フェラをしたりした。
俺らのセックスを見ながら自慰をする美鈴を見たアディーロが面白がって、美鈴に命じたからだ。

「なぁ、美鈴。あんま無理すんなよ」
「何が?」
「そ、その…アディーロとしてる時に、さ」
「あぁ!あれね。全然!むしろ役得?」
「へ?」
「セックスでとろとろになってる小鳥遊君は凶悪な可愛さだからね。
初めて2人のセックス見た時からしたかった事だから、逆に喜んでるよ?」
「そ、そうなのか…?本当に無理してない?」
「うん!ホントほんと!まぁ、出来れば…僕も小鳥遊君としたいかな」
「ふぁ?!」
「小鳥遊君さえ良ければ、だけど」
「えぇぇぇぇ…」
「小鳥遊君のイイトコロ、大体分かっちゃったもん。
でも、小鳥遊君全然イケないね?」
「うん…すげぇ辛い」

そうなのだ。
あれから何度もやってるけど、俺が達した事は一度もない。
最近はアディーロも気にして色々やってくれるが、どうしてもイケない。

「前からそうなの?」
「うぅん。そんな事ない。むしろ早漏…?」
「ぷっ!」
「わ、笑うなよ!気にしてんだから…」
「ごめんね。可愛いなぁと思っちゃって」

よしよしと頭を撫でられた。解せぬ。
最近の美鈴は、俺のお兄ちゃんって感じの頼もしさが出てきて、最初の庇護対象という印象がすっかり無くなった。元々しっかりした奴なんだろうな。

「それにしても…いつ神気が充分に満たされるんだろう」
「僕、思うんだけど、寝室にある巨大な玉あるじゃない?あれが器なんじゃないかなって。その証拠に、毎日中に何かが溜まっていってるんだよね」
「マジで?!」
「うん。小鳥遊君は毎回ふにゃふにゃになってるから気づいてないだろうけど」
「全然気づいてなかった!」
「だよね。で、その玉なんだけど、もうそろそろ一杯になるよ」
「マジか!!!!!」


その日の午後、最も唾棄すべき奴が部屋を訪れた――クワトロだ。

「神子様、ご機嫌麗しゅう」

相も変わらず俺なんぞ見やしない。別にいいけど。

「ねぇ、クワトロさん。神気なんだけど、もうそろそろ満杯になるんじゃない?」
「……どうしてそれを?」
「やっぱり。寝室にね、ある玉が神気の器なんだろうなって。それを見るともうすぐ満杯になるんだよね。と、いう事は僕たち帰してもらえるんだよね?」
「………いかにも」
「良かった!家族も心配しているだろうし、早く帰りたいんだ」
「えぇ。分かっております」

クワトロが苦虫を嚙み潰したような顔で美鈴と話している。
こいつ、美鈴を帰したくないんだろうな。
残念ながら俺らは帰るんだよ。ケケケ!

「それって具体的にいつ頃になんの?」
「……」

俺はガン無視かよ!

「クワトロさん、いつ?」
「…そうですな。恐らくは2~3日中には満杯になるかと思いますので、その後の1~2日には可能かと」
「そっかぁ。ありがとう」
「いえ……」

ていうか、なんで俺をそんなに毛嫌いするのかマジで分からん。
俺、身を削ってこんなにもこの世界に貢献しているのにお礼の一つもないとかありえん!

「失礼いたします。サディアス様がいらっしゃいました」
「宰相さんが?」

「神子様方、ご機嫌麗しゅう。…クワトロ殿?如何された?」
「あ…いや、神子様のお体の調子をな…」
「そうですか。タカナシ様にご負担を強いていおりますからな」
「そのようですな…」

かなり嫌そうな顔をして渋々ながら同意した。

「神子様方。神気はそろそろ満たされようとしております――が、ご相談が」
「なんでしょう?」
「何度か陛下にも言われておりますのでご存知かと思いますが、実は陛下のそくし――「お断りします」」

食い気味に返答した。

「そうですか…とても残念です。せっかく陛下が他人をお求めになったので、可能でしたら是非、残って側室になって頂きたかったのですが」
「どゆこと?」
「神子様方ですから、申し上げますが――陛下は何人にも興味を持てず、あぁ、まぁ閨の相手としてはご興味を持たれるのですが、自分の側に置きたいと思うような人には恵まれなくて」
「はぁ」
「側室にいたっても、ご自分から欲しいと言った事はなく、我々が手配をしそれに従っているだけと申しますか」
「王様なんてそんなもんじゃねーの?」
「確かに、そうです。が、陛下は子供の頃から誰かを切望しておられたのです。唯一無二の存在を。我々は為政者としての孤独な陛下に、いつかそんな存在が現れてくれたらと思っておりました」
「んー…でもさ、アディーロとの事はセックスで頭がバカになってる時の事だから、肉欲でしかないと思うんだけど」

そう言うと、サディアスは力なく首を横に振って否定した。

「そうではない。そうではないんです…これまでだって、どれだけ情熱的に閨を共にされようとも、お気に入りとして何度か呼ばれても、その人物を求めた事はありませんでした。タカナシ様にいたっては、最初は確かに肉欲だったかもしれません。ですが、今は違うと思います」
「そうかなぁー。別に特別なにかしたとかあったとかねーよ?体の相性がアディーロにとっては良かったってだけじゃね?」
「うまくはいえないのですが、違うのです」
「ふぅーん」

グモモモモ…とすごい圧を感じた。発信源を見ると、クワトロが俺を射殺しそうな目で睨んでいた。

「お、お前というやつは…なんと不遜な口を叩くのだ!」
「へっ?」
「陛下を呼び捨てにし、サディアス様に対しても…下賤な者のくせに分かったような口をきいて…不敬であるぞ!!!」

なんかすげぇ激昂しているけど、こいつマジでなんなん?

「クワトロ殿。神子様に対して失礼ですよ。こちらが呼んで協力して頂いてるのです。下賤などとは二度と言ってはいけません。
それに、陛下が名前で呼べとおっしゃってるのですよ」
「ぐっ…」

サディアスが静かに、でも怒気を隠そうともせずに言った。最初はなんてやつだと思ったけど、一応はきちんと分かっているやつなんだな。
ちょっとだけ見る目が変わった。
クワトロは目だけは憎悪を隠さず、口だけ謝罪をして退室した。

「あいつ、マジなんなの…」
「本当だよ!小鳥遊君をずっと目の敵にして、すごく失礼な事ばかり!あの人大嫌いだ!」
「み、美怜…」

俺のためにめちゃくちゃ怒ってくれて嬉しくて美怜にちょっとキュンとした。
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