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第1章 始まり

21話 調査依頼

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「私のことを知らない人もいると思うからまずは自己紹介をするわね♪この帝都のギルドマスターを勤めているマックス=マッドローグ男爵よ。男爵といっても元は平民の冒険者だったから敬語なんて使う必要はないわ。それでさっそく本題なんだけどあなた達に指名依頼という形で依頼をお願いしたいのよ」

「指名依頼ってのはCランク以上だって聞いてたが、俺はまだFランクだぞ?」
 さっさと戦いに行きたかったのに思わぬ時間を取られていることでイライラしていた。

「んまぁ~、基本的にはそうなのだけど、Cランク以上じゃなきゃいけないってことはないのよ~」

「それで内容は?」
 リュウジンは戦闘系以外の依頼なら断るつもりだった。

「んもうせっかちね~、男は余裕をもっているくらいがいいのよ?」

「さっさとしろ!帰るぞ?」
 リュウジンは本当に帰る気満々な様子だったのでこれ以上はからかえないと思ったギルマスは話始めた。
 その間もう1人の男は小さく縮こまっていた。

「あなた達に依頼したいのはこれよ!」
 そういってギルマスは3人それぞれに1枚の紙を渡してきた。

 ――コロームの森の調査依頼――
 内容:コロームの森の異変の調査、または原因の追求、排除。
 期限:1週間
 報酬:50万フーロ(情報や排除した場合は別途支給)
 失敗:死亡、森に入ることが出来なかった場合
 ―――――――――――――――


「最近コロームの森の浅いところにも中域のモンスターが見られるようになってモンスターの生存域が乱れているのよ。それで元々浅い領域にいたモンスターが大量に森の外に出てきているの。だから依頼は中域までいって何が起きているのか原因を探って欲しいのよ。
 ただ中域に行くためには森の外に出ている大量のモンスターと中域のモンスターを倒していかなきゃならないし、中域のモンスターを追い出すほどの存在がいるのなら生半可な戦力で行かせたら死なせちゃうからある程度強くて少ない人数で行ってもらわないといけないのよ。そこで選ばれたのがあなた達3人なのよ。ここ3ヶ月で一気にBランクまで上り詰めた『深紅の戦姫』ちゃんに、斥候としての評価が高いCランクのテルちゃんとFランクだけど明らかにこの2人より実力の高い・・・そういえば名前を聞いてなかったわね?」
 はて、何だったかしら?と鬱陶しい仕草でこちらが言うのを待っているので

「・・・ッチ!リュウジンだ。選ばれたって適当にそこにいた奴に声かけただけだろうが」
 不貞腐れた様子でリュウジンは答えて睨みつけた。

「リュウジンちゃんね!細かいことはいいのよ♪私が選ばれた時と選んだ時が一緒だっただけよ」
 ギルマスはリュウジンのそんな視線を全く気にすることなく話しを再開した。

「依頼自体は危険だと判断した時点で戻ってきてもらってもいいわ。ただ森に入ることもなく戻ってきた場合は報酬はないと思ってちょうだい。あくまで森の調査依頼だから。今回は事が事だけに依頼放棄となった場合も罰則はないのであなた達でも入れなかったってことも重要な情報になるので森に入れなかったとしても報告はしてね?その情報代くらいは出してあげるから。受けてもらえるかしら?」

「はい、やらせていただきます!」
 テルは即座に返事をしていた。
 リンはこちらの様子を伺っていた。

 リュウジンも多くの敵と戦えそうな依頼であり受けることに文句はなかったが
「俺はこいつのことを良く知らねぇんだが、言っちゃ悪いが足手まといをわざわざ連れて行く気はないぞ?」
「え?」
 テルはそれを聞いてビクッとなった。
「この子は戦闘で期待しているというよりは、斥候や地図マッピング、それに回復スキル持ちということで期待しているのよ。あなた達じゃ、森を探索しても具体的な場所の報告が出来ないでしょ?それに一応戦闘もそこそこできるって聞いてるからそこまであなたの足を引っ張るってことはないはずよ?」
 ギルマスは困った子を見るような目でリュウジンを見つめてそう答えてきた。
「それな・・・「あの!もし足手まといだと思ったら捨てていってくれていいのでクエスト受けさせてもらえませんか?」・・・」

 戦闘面では確実に足手まといだろうが、後衛として回復スキルを使わせておけばいいか。それにたしかに地図マッピングは俺には出来んしな・・・

 そう思ったリュウジンは3人で受けることを承諾した。
 リンはリュウジンが受けるのなら当然受けるのであった。

「それじゃあ、よろしくね♪私はもう行くけど、お互い自己紹介なんかもあるでしょうしこの部屋使ってもいいわよ」
 そう言ってギルマスは部屋を出ていった。

 そして少しの間3人は無言であったが、テルは席を向かえ側に移し、意を決したように話し始めた。
「えっと・・・、それじゃあ自己紹介をします。僕の名前はテルです。細々とですが配信者をやっています。使用武器はダガーで、回復魔法が使えます。MP MAX状態から4回使えてHP30回復することができるので回復が欲しいときは言ってください・・・。あ、あと『深紅の戦姫』さんとパーティーを組めて光栄です。以上です」
 ビクビクとした様子でテルは自己紹介を終えた。

「さっきのギルマスも言っていたが、その『深紅の戦姫』ってのはなんなんだ?」
 リュウジンはずっと疑問に思っていたことを口にした。

「えっと、リンさんの異名といいますか、誰かがリンさんの戦いを見て口にしたのが広まって皆リンさんのことをそう呼んでいます」

「クハハハハ!リンが姫か!似合ってないな!・・・アハハハ」
 リュウジンは耐えきれず大爆笑した。

「む~、酷いっす。乙女心が傷ついたっす!謝罪を要求するっす!」
 リンはむくれながらそう言った。

「・・・悪い・悪い。・・・アハハハ!」
 リュウジンは膝を叩きながら大爆笑した
 プイっとリンはリュウジンと反対側を向いて拗ねていた。
 やっと笑いがおさまってきたリュウジンは改めてリンに話しかけた。

「悪かった悪かった。今度なんか買ってやるから許せ。しかしお前の戦いを目にしてそんな名をつけるとは、そいつのネーミングセンスがないのかどれだけリンが大人しく戦っていたのやら」

「お二人は知り合いなんですか?」

「ああ、同じ流派の門下生だ。名前はリュウジンだ。さっきはああ言ったがよろしく頼む。戦闘は基本的に俺らに任せてくれていい。したいというなら止めはしないが。使う武器は見ての通りこの刀だ」

「刀って手に入るんっすね・・・。あの・・・、差し支えなければどこで手に入れたかお聞きしてもいいですか?」

「ドーラ工房だ」

「うぇ!?あのドーラ工房ですか?!プレイヤーは誰が言っても追い返されるのに・・・。僕も追い返されました・・・」

「まぁ運が良かったのか売ってもらえたんだよ」
 説明がめんどくさくなったリュウジンは適当にそう答えた。

「おい、リン!お前も自己紹介しろ!」
 ずっと不貞腐れていたリンはやっとこっちを向いていつもより低い声で自己紹介をした。

「リンっす。使用武器は剣と拳っす。よろしくっす」

 これは機嫌直すのに時間がかかるな~、と思ったリュウジンはとりあえずさっさとコロームの森に行くことにした。

「よし!それじゃあ行くか!」
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