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ep.10-3
しおりを挟む「んっ、んぅ…」
くやしくて、彼の耳朶を軽くつまむ。ようやく、気づいてくれた彼が、うっすらと瞳を見せる。海底の深い青に見つめられると、僕の理性も彼への愛情でいっぱいになってしまって、何も言えなくなってしまった。耳のへこみや耳朶の柔らかい部分を指先でこねたりさすったりして、彼への愛を指先で伝える。その度に彼は眉を跳ねさせて、舌を強く吸い上げた。
大きい彼のパーカーの下に、冷たい指先がするり、と入り込んできて、へそをひっかいた。ひくん、と大げさなほどに身体が反応してしまう。それから、へそを軽く押されると、これからこの辺りに、待ち望んだ彼が入ってくるのかと気づいてしまい、内腿が震える。もう痛いほど勃ち上がった僕のそれを彼は長い人差し指で撫でる。
「ぅあっ、んぅ…」
思わず声が漏れてしまう。彼が唇に何度か軽く吸い付いて、頬を緩ませて僕を見降ろした。
「一度、出そうか…」
「やぁ…やら…」
つないでいた手をほどいて、彼が僕の前髪を撫でる。両手で彼の背中にしがみついて、首を横に振る。くちゅ、と大きな手のひらに包まれてしまうと、情けない声がこぼれていく。
「ふあ、あ…ら、め…、なかで、さくと、し、たい…や、やあ…っ」
快感から逃げるために、涙を散らして、必死に瞼をきつく閉じて堪える。唇を噛み締めて、意識を反らそうとすると、彼の親指が唇を割り開いた。
「噛むな…」
「ぅ、あ…あ、う…やぁ…」
彼の親指が歯列を開かせると、彼の唇が寄せられた。彼の親指を淡く噛みながらも、舌が中に入り込んでくる。甘い蜜を僕に流し込んできて、それを飲み落とす度に、身体びりびりと痺れるように甘くさざめく。もっとそれが欲しくて、入り込んできた舌を、ちゅうちゅうと吸い付く。その間に、後孔に、ぴたり、と熱い何かが触れた。目を見開くと、彼の瞳は細められていた。
「聖…、愛してる…」
「さく…」
とろけるように唇を合わせて、彼が囁いた。熱量に鼓膜がじわ、と焦げるようだった。
僕は思わず、頬を緩ませてうなずいた。細めた眦からは、涙がつ、と転がっていった。
彼も微笑んで、ぽたりと汗を一粒、落としてから、僕たちをうっとりと口づけをした。すると、ずにゅ、と彼が僕の身体を割り開く。
久しぶりの感覚に、初めての頃のような衝撃が訪れる。くぽ、と彼の頭を飲み込むと、ナカが熱に反応して、びりびりと挿入を悦び、全身を震わせた。爪先は宙に浮き、ぴんと張られてしまう。
ぎち、とナカが久しぶりの彼の質量に対応しきれずに、苦しんでいた。けれど、それ以上に、ようやく、また彼と結ばれている事実に歓喜している。首に両腕を絡ませて、さらにキスを強請る。
「ん、んうう、ぁ…ん、あ…」
彼が挿入されてから、ずっとナカがひきつって、強い電流が身体の中をかけめぐっていた。思考が混沌と濁っていく。彼も小さくうめき、息をつめているのが伝わってくる。けれど、僕たちは唇を離すことも、挿入を止めることもできなかった。
もっと。もっと、奥深くまで、彼に僕を浸食してほしい。
そう願うと、いつもよりも濃度の高く、どろっとした彼の蜜の香りが漂った。それに身体の力が、ふ、と抜ける瞬間があり、彼のアルファがぐにゅり、と奥まで入り込んできた。
「ん、あっ、ああ…あぅ…ん…っぅ…」
ぴゅ、と前から漏れた感覚して、全身が熱く痺れる。爪先が何度も跳ねているのが視界の隅に見えた。快楽の波が落ち着いていくのを見計らって、彼が身体を起した。ぼやけた世界で、彼が前髪をかきあげるのはわかった。そして、僕のパーカーをたくし上げて、脱がそうと脇の下に手を入れた。僕は自分自身を抱きしめるようにして、拒絶した。
「や、やだ…っ、このままが、いい…」
たぼついたパーカーを抱きしめると、ふわ、と優しい彼の匂いがする。スウェット生地に鼻をうずめると、思わず声がもれてしまい、ナカがきゅ、としまる。
「なぜ? 俺は、聖ともっと密着したい…」
「んう…っ」
彼が小首をかしげながら僕の様子をうかがいつつ、パーカー内に差し入れた手で、僕の弱い二つの尖りを親指でこねるように撫でた。びく、と背中がしなり、後ろが絞られて彼の熱棒がどく、と脈打っているのを感じる。
「や、あ…、これ、さくの、におい、するからぁ…」
このまま、と彼を見上げながら涙を零すと、彼の輪郭がややはっきりとする。眉を寄せて険しい顔をする彼は、剣呑に瞳をぎらつかせて、顔を染めていた。汗が、ぽた、と僕の振り落ちると、そこから毒が回るように、全身に悦が広がっていく。
「目の前に本物がいるのに?」
「あ、っ」
ゆす、と彼が腰を揺らめかす。ぐじゅ、と彼が腰を引いた時に、ナカからどろついた愛液が溢れ出る。そして、また粘っこい水音を鳴らしながら、さらに奥を目指して帰ってくる。腰から背中を辿って、うなじを痺れさせて、脳内で火花が飛び散る。
「聖…、聖はゴム一枚嫌だって言ったのに、俺には、生地一枚我慢しろって?」
「ん、んう、あ、さ、くう…」
彼の匂いがさらに強まって、視界が濁る。彼の言っていることの認識も明確ではなくなっていく。けれど、僕の弱いしこりを、彼は当たり前のように覚えていて、たくましい頭で大切にこねるように撫でたと思うと、立派なカサをひっかけるように腰を引く。その度に内腿が大げさなほど震えて彼の背中に爪を立ててしまう。
「聖、俺とその服、どっちがいい?」
「あ、あん、ぅっ」
ゆっくりとナカをこねていた彼が引き抜かれてしまう。ぬぽん、と逃げていくと、はく、はく、と寂しさに入口が開閉して外気がナカに入り込んでくる。それがより寂寥感を募らせて、僕は目を見開いた。彼を見上げると、ぎら、と瞳を光らせた彼が見下ろしていた。
「ほら、聖、答えて」
「んう、あ、さ、くう…っ」
ちゅぷ、と入口に先端がキスするように宛がわれて、ぬ、と少し挿入される。また現れた彼に身体は悦びと期待で満ちて震える。けれど、頭をすべて挿入しきる前に、また逃げていってしまう。
「やあ、なん、でぇ…さく、さくぅ…」
彼を上目で見上げながら、涙が頬を伝う。
(もっと、奥をかきまぜてほしい…)
いつもみたいに、思いっきり腰を打ち付けて、奥をいじめてほしい。思えば思うほど、身体があの時を思い出し、一か月もの間我慢を強いられていたことにより感度が増していく気がした。おまけに、身体は発情していて、一刻も早く、彼の精子を胎内に吸収したかった。
身体をかがめた彼から、神経を焦がす甘い匂いが漂う。それだけで、ふるり、と身体は震えて、後ろがにじむ。
「答えたら、聖の好きな場所、甘やかしてやる」
「あ、あ…ぁ…んう…っ、…」
耳元でかすれたバリトンで囁きかけられると、全身をかけめぐって、指先がびりびりと痺れる。くちゅ、と彼の熱い舌が耳朶を舐めて、鼓膜が犯される。その度に肩がすくんで、息がつまり苦しさに涙が止まらなくなる。
「は、っ、あ、や…っ、ら、めえ…っ、これ、や、やら…さ、くう、あ、う…っ」
舌が耳穴に挿入されて、ぐぢゅ、ぐぢゅ、といやらしい音を脳内に直接注ぎ込まれる。胸を反らして快感に耐えると、後孔の入口を、ちゅぽちゅぽ、と彼の頭が出入りする。もっと、奥をいじめてほしくて、思わず腹部に力が入るのに、彼はその前に外へと逃げてしまう。
(やだ…やだ、さく…、もっと、さくと、一緒になりたいのに…)
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