初恋と花蜜マゼンダ

麻田

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ep.1-5

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 舌先が触れ合うと、ナカにいる彼が奥へとさらに割り入ろうと蠢く。ゆっくりと、腰が揺らめきだすと全身が火照りを思い出して、どうしようもなく落ち着かなくなってしまう。

「ぁ、う…」

 瞼を持ち上げて、名前を呼びたいのに、彼の舌に翻弄されて、声は彼の口の中に溶けていってしまうようだった。瞳が合わさると、彼がパジャマの下に手を差し込んで、大きな手のひらで薄い胸を揉んだ。いくらか、そこだけ肉付きが良くなったそこを揉まれると、顔が熱くなる。

「んう、ん…っ」

 抗議の声をあげようとすると、歯列を一本ずつ丁寧に舐めつくすようにされてしまって、何もできなくなる。彼の親指が、尖りを優しく撫でると、びりびりと頭に強い電気信号が送られる。それと同時にゆるんだ後ろに、たくましい彼が追い立てるようにさらに奥へと進む。ずにゅ、と身体の奥で響くような気がして、いけない行為をしているかのような背徳感に眩暈がした。それなのに、彼は、にゅ、と簡単に抜いていってしまいそうで、僕の後ろは勝手にきゅうきゅうと逃がさないというように締め付ける。そうすると、抜けるぎりぎりで彼がもう一度ナカに帰ってきてくれて、全身が歓喜で粟立つ。ねばついた水音が、狭い部屋に響きを増していく。

「聖…っ」
「ぁ、あ、んん、っ」

 大きな舌がぐるり、と口内で周って、また反対側の頬裏をごりごりと舐めつくされる。同時に胸の先端を柔くつまむように遊ばれてしまうと身体の熱を発散させたくなって、ぶるぶると震えてしまう。ベッドが、きいきい、と高い音を立て始める。彼のたくましい亀頭が、出入りする度に僕の弱いしこりを撫でるから、その度に足先がぴくぴく、と痙攣するように反応する。彼は夢中で僕の唇を貪る。息がまともにできなくなってきて、身体の熱は膨れ上がり、唇の隙間から、事ある事に、彼が僕の名前を甘く囁く、好きだとうわ言のように続ける。
 頭も心も、身体も、ぐちゃぐちゃに溶けて行ってしまう。
 彼の手首にしがみつくと、にぎりしめていた手をほどいて、手のひらをなぞられて、指を絡めるように握りあう。そのままシーツに貼り付けられるように強く押さえつけられると、さらに彼と密着しているような感覚があって、胸がいっぱいになる。

「聖、聖っ」
「ん、あ、は…っ、あ、う…んぅ…」

 ようやく舌がいなくなって、呼吸を必死に整えているのに、彼は唇に何度も吸い付く。腰の速度がさらに上がってきて、ごりごりとナカを撫で回されて、ぎゅう、と腹の奥が絞られる。

「や、だ、めぇ…ぁん、あっ…またっ、でちゃ…っ!」
「好きだ、好き…っ、聖、聖…っ」

 鼻先が触れ合う距離で彼がじ、と僕を見つめて、俺以外見るなと、青の宝石が僕に訴えかけてくる。唇を噛み締めて、首を縦に振るが、彼によって起こされる揺さぶりによって伝わったかはわからなかった。けれど、彼が、快感に眉を寄せて苦しい顔をしながらも、ふ、と微笑んだ気がした。甘く、唇を吸われると、ぞぞ、と背筋が震えて、強い浮遊感に襲われた。ぎゅう…、と強くナカを締め付けて、彼の存在をありありと感じると、多幸感に涙が零れた。

「あ、あぅ…っ、さ、くぅ…ん、ぁ…」

 背中をしならせて、びくん、びくん、と身体が何度か大きく跳ねた。彼は、僕の一番奥に頭をすりつけながら、勢いよく射精した。その熱さと勢いに、さらに身体は熱を高まらせて、何度も強い快感が僕の身体を痙攣させた。

「聖…」

 ちゅう、と唇を吸われて、濡れた瞳を開けると、彼が汗を垂らしながら僕を見つめていた。

「ぁ、く…」

 まだ快感に痺れる身体は、呂律がうまく回らなかった。けれど、大好きな彼が、僕を見つめて、ナカでまだ射精を続けている喜びに、頬が緩んだ。自由な手を、そ、と彼の顎に添えて、唇に触れた。

「さく…好き…」

 笑うと、はら、と涙が眦から零れ落ちた。自分の早い鼓動が心地よく感じる。ナカにある熱さも、下腹部のけだるさも、胸先の痺れるような感覚も、何もかもが彼が僕に与えたものだと思うと、ようやく訪れた幸福なのだと実感してくる。
 少し目を見開いた彼は、ナカで射精の終盤を迎えるころで、だんだん質量が戻っていき、ゆるんできたと思ったら、また硬度を取り戻し始めていた。

「え、さ、く…?」

 僕も驚いて、思わず視線を下に落としてから、彼の美しい身体に沿って視線をあげると端正な顔を固くして、僕をぎらり、と見下ろしていた。小首をかしげると、彼は僕の汗で張り付いた前髪を撫でつけて、頬をなぞった。

「こんなに可愛い人が、俺の恋人だと思うと嬉しくてどうにかなりそうだ…」

 あまりにも糖度の高い言葉に、瞠目していると顔に熱が集まっていく。

「なんて可愛い…美しいんだ…、本当に俺だけを愛してくれるのか…?」
「さ、く…? な、にいって…」

 はあ、と溜め息をついて、彼の額が僕の頬を撫でるように抱きしめられる。広い肩に手を添えると、嬉しそうにさらに抱き寄せて擦り寄ってきた。

「嫌だと言っても絶対に離さない…、聖は俺だけのお姫様だ…」

 出会ったあの時から、僕の中でも、彼の中でも、あの約束はずっとあった。
 そう気づかされる彼の睦言に、全身が淡くざわめいて、嬉しさにナカがきゅう…と収縮してしまう。それに呼応するように、ずくり、と大きさを増して、奥を撫でた。

「んぅ…さくぅ…」
「聖…愛している…。俺には、聖だけなんだ…」

 彼の筋の通った鼻梁が僕の輪郭を撫でると、顎や口の端、頬など顔中にキスの雨が降る。それと同時に、後ろからは、ぐじゅり、と音がして、ゆったりと入ったり出たりが始まる。

「聖、かわいい…どうして、もっときれいになっていくんだ…」
「や、…や、だ…っ」

 何度も何度も、かすれた色香を放つ彼の声が僕を翻弄する。こんなことを言われた事の無い僕は、茹で上がった頭を、横にして逃げるようにするしかなかった。けれど、身体の火照りは増す一方で、すっかり彼の手によってどろどろにされてしまった身体は、緩慢な動きだけでは満足できない。

「長い睫毛も、潤んだ瞳も、きめ細かい肌も、甘い唇も、男を魅了する黒子も、全部…全部が愛おしい…」

 熱い吐息が耳朶をかすめて、息が漏れる。ぬろ、と耳を湿った熱い何かがなぞる。

「ひゃっ、ぁんう…っ、んん…っ」

 ちゅ、ぢゅ、と脳内を直接舐められているかのようで、鳥肌が立ち、全身がびりびり、と痺れる。たまらなくて、仰け反ってその熱を逃がそうとするのに、そうすればするほど、彼は僕を抱き寄せて、ぬぽ、と舌を刺し入れてくる。

「聖…、好きだ…俺の、お姫様…」
「やぁ、あ…っ、さ、くう、や、あ…っ」

 甘い唾液で滑ったそこに吹きかけるように熱い吐息と言葉を囁きかけられると、それだけで達してしまいそうになる。ぞわぞわとずっと鳥肌と快感が全身をめぐり、出口のなさに息がつまる。
 ごりゅ、ごりゅ、と容赦なく奥を力強く叩かれると、貪欲な身体はもっと奥に彼を欲してしまう。ナカの方で細かくピストンをかけられてしまうと、もう悲鳴しか出なくて、ただただ彼に湿った広い背中にしがみついて身体を密着させるしかなった。彼も、ぎゅう、と力強く抱きしめてくれて、ぴったりと肌が合わさるとそれだけで気持ちが良いのに、ナカも、耳も、言葉も、全身が僕を甘やかす。それなのに苦しいほどの快楽が僕を支配していく。

「好き、聖っ、好きだ…、俺のことも、好きに、なって…っ」
「ん、あ、あっ、すき、すきっ、さく、すきだから、あ、も、でちゃっ」

 じゅぽじゅぽ、と後孔から泡立った彼の精子やらが溢れている感覚にも、ぞわりと身体が反応する。唇を噛んで、鼻から止まらない甘い声を漏らしていると、彼が、くすり、と耳元で笑ったのがわかって、視線を向ける。頬を染めて、眦を垂らした、ゆるゆるの笑みを見せる端正な顔立ちの彼がいた。

「俺も、聖が好き」

 きゅう…と胸の締め付けと同様に、ナカもきつくうなり、彼を強く抱きしめてしまう。彼のたくましいペニスの血管すら感じとってしまうようで、それだけで全身が、びくん、びくん、と跳ね、頭の中がぐにゃり、と歪み溶け落ちていく。


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