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おまけ 『アシュフィールド公からアンダーソン侯宛てに届けられた、いつかの手紙』
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32年〇月×日
学園で大切な人ができたの? すごい! よかったじゃない。
私との婚約なんて、気にすることないわよ。この年になってもまだ結ばれてないのだから、両家ともそこまで乗り気じゃないってことでしょうし。
それよりも! 大切な人に愛想尽かされないように気をつけなさいね。私との手紙もほとほどにするのよ。
兄妹みたいな関係だって言っても、その人からしてみたら知ったことじゃないんだから。
33年▽月〇日。
あらいやだ。どこから私の話なんて漏れたのかしら。
別に私の親のことなんて気にしなくていいわよ。どうせ、逃がした魚が惜しくなっただけなんだから。
どうしても結婚してほしかったのなら、もっと頼みこめばよかっただろうにそうしなかったのよ? 気にするだけ無駄だわ。
それよりも、私も明日から学園に通うのよ。あなたみたいに大切な人と出会えることを祈ってくれるかしら。
33年×月■日。
ねえ! ねえ! 聞いてちょうだい。あ、ごめんなさい。手紙はほどほどにって言ったのに私から送って。でも、どうしても誰かに聞いてもらいたかったの。
だからさっさと本題に入るわね。今日ね、ちょっと体調を崩して困ってたのよ。
ほら、まあ、なんて言えばいいのかしら……あまり私、友達がいないから助けてくれる人もいなくて。
あ、そこは別に気にしなくていいわよ。大事なのはこの先だから。
それでね、どうしても動けなくて困ってたら、助けてくれた人がいたの。
運動があまり得意じゃなくて、他の武術科生にからかわれてるのを見たことがある人なんだけど……それでも、頑張って私のことを抱えて、医務室に運んでくれたのよ。
すごいと思わない? 苦手なのに、私を抱えてくれたのよ! 人一人抱えるのってすっごく大変なのに!
どうしようかしら。何かお礼をしたほうがいいわよね。ああどうしましょう、誰かにお礼なんて久しぶりで、何を贈ればいいかわからないわ。
33年〇月▼日
お礼の品をようやく渡せたわ。転んだのを見かけたから、そっとハンカチを差し出したの。
すごく自然で素敵だと思わない?
あ、そういえば子供が産まれたのよね。おめでとう。確か二人目、だったわよね。
いらない布が何枚もあるから、一緒に送るわ。よだれを拭くのにでも使ってちょうだい。
質はいいはずよ。歪んだ刺繍さえ気にしなければ、だけど。もちろんそんな細かいこと気にしないわよね?
35年■月〇日
もう、困ったわ。親が学園在籍中に結婚相手を見つけてこいって言うのよ。
後半年もないのに。そういうことはもっと早く言ってもらわないと。私の体が弱いことは知れ渡っているし、もらってくれる人なんているかしら。
誰かいい人がいたら紹介してくれると助かるわ。
35年■月▼日。
ごめんなさい。先日の紹介だけど、忘れてちょうだい。
それよりも、すごい奇跡が起きたのよ。ほら、前に助けてくれた人がいたって手紙に書いたの、覚えてる?
その人がね、結婚してほしいって言ってくれたの。家を通してだから直接、ではないけど。
これで親からもう結婚しろって言われなくなるわ。
二度も助けてくれるなんて、もしかしたら私の王子様なのかもしれないわ。もちろん、冗談よ。
36年〇月×日
あなたに招待状を送れないのが残念だわ。親が頑なにあなただけは呼ぶなって言うのよ。
昔馴染みであることは変わりないのに。
婚約が駄目になったとか、勝手なことを言わないでほしいわ。
まあでも、昔馴染みのあなたなら、呼ばれなくても私のことを祝福してくれるわよね?
私はね、兄のように思っているあなたが大切な人と巡り会えて、可愛い子供にも恵まれたことを本当に嬉しく思っているのよ。
だからちゃーんと、奥さんと子供たちを大切にして幸せになってね。愛想尽かされるようなことしたら、蹴飛ばしに行ってあげるんだから。
もちろん、私も私で幸せになるわよ。
だって、私の王子様と結婚できるんだから、幸せにならないはずがないでしょう?
だからもう、心配しないでね。
学園で大切な人ができたの? すごい! よかったじゃない。
私との婚約なんて、気にすることないわよ。この年になってもまだ結ばれてないのだから、両家ともそこまで乗り気じゃないってことでしょうし。
それよりも! 大切な人に愛想尽かされないように気をつけなさいね。私との手紙もほとほどにするのよ。
兄妹みたいな関係だって言っても、その人からしてみたら知ったことじゃないんだから。
33年▽月〇日。
あらいやだ。どこから私の話なんて漏れたのかしら。
別に私の親のことなんて気にしなくていいわよ。どうせ、逃がした魚が惜しくなっただけなんだから。
どうしても結婚してほしかったのなら、もっと頼みこめばよかっただろうにそうしなかったのよ? 気にするだけ無駄だわ。
それよりも、私も明日から学園に通うのよ。あなたみたいに大切な人と出会えることを祈ってくれるかしら。
33年×月■日。
ねえ! ねえ! 聞いてちょうだい。あ、ごめんなさい。手紙はほどほどにって言ったのに私から送って。でも、どうしても誰かに聞いてもらいたかったの。
だからさっさと本題に入るわね。今日ね、ちょっと体調を崩して困ってたのよ。
ほら、まあ、なんて言えばいいのかしら……あまり私、友達がいないから助けてくれる人もいなくて。
あ、そこは別に気にしなくていいわよ。大事なのはこの先だから。
それでね、どうしても動けなくて困ってたら、助けてくれた人がいたの。
運動があまり得意じゃなくて、他の武術科生にからかわれてるのを見たことがある人なんだけど……それでも、頑張って私のことを抱えて、医務室に運んでくれたのよ。
すごいと思わない? 苦手なのに、私を抱えてくれたのよ! 人一人抱えるのってすっごく大変なのに!
どうしようかしら。何かお礼をしたほうがいいわよね。ああどうしましょう、誰かにお礼なんて久しぶりで、何を贈ればいいかわからないわ。
33年〇月▼日
お礼の品をようやく渡せたわ。転んだのを見かけたから、そっとハンカチを差し出したの。
すごく自然で素敵だと思わない?
あ、そういえば子供が産まれたのよね。おめでとう。確か二人目、だったわよね。
いらない布が何枚もあるから、一緒に送るわ。よだれを拭くのにでも使ってちょうだい。
質はいいはずよ。歪んだ刺繍さえ気にしなければ、だけど。もちろんそんな細かいこと気にしないわよね?
35年■月〇日
もう、困ったわ。親が学園在籍中に結婚相手を見つけてこいって言うのよ。
後半年もないのに。そういうことはもっと早く言ってもらわないと。私の体が弱いことは知れ渡っているし、もらってくれる人なんているかしら。
誰かいい人がいたら紹介してくれると助かるわ。
35年■月▼日。
ごめんなさい。先日の紹介だけど、忘れてちょうだい。
それよりも、すごい奇跡が起きたのよ。ほら、前に助けてくれた人がいたって手紙に書いたの、覚えてる?
その人がね、結婚してほしいって言ってくれたの。家を通してだから直接、ではないけど。
これで親からもう結婚しろって言われなくなるわ。
二度も助けてくれるなんて、もしかしたら私の王子様なのかもしれないわ。もちろん、冗談よ。
36年〇月×日
あなたに招待状を送れないのが残念だわ。親が頑なにあなただけは呼ぶなって言うのよ。
昔馴染みであることは変わりないのに。
婚約が駄目になったとか、勝手なことを言わないでほしいわ。
まあでも、昔馴染みのあなたなら、呼ばれなくても私のことを祝福してくれるわよね?
私はね、兄のように思っているあなたが大切な人と巡り会えて、可愛い子供にも恵まれたことを本当に嬉しく思っているのよ。
だからちゃーんと、奥さんと子供たちを大切にして幸せになってね。愛想尽かされるようなことしたら、蹴飛ばしに行ってあげるんだから。
もちろん、私も私で幸せになるわよ。
だって、私の王子様と結婚できるんだから、幸せにならないはずがないでしょう?
だからもう、心配しないでね。
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