61 / 61
おまけ 『アシュフィールド公からアンダーソン侯宛てに届けられた、いつかの手紙』
しおりを挟む
32年〇月×日
学園で大切な人ができたの? すごい! よかったじゃない。
私との婚約なんて、気にすることないわよ。この年になってもまだ結ばれてないのだから、両家ともそこまで乗り気じゃないってことでしょうし。
それよりも! 大切な人に愛想尽かされないように気をつけなさいね。私との手紙もほとほどにするのよ。
兄妹みたいな関係だって言っても、その人からしてみたら知ったことじゃないんだから。
33年▽月〇日。
あらいやだ。どこから私の話なんて漏れたのかしら。
別に私の親のことなんて気にしなくていいわよ。どうせ、逃がした魚が惜しくなっただけなんだから。
どうしても結婚してほしかったのなら、もっと頼みこめばよかっただろうにそうしなかったのよ? 気にするだけ無駄だわ。
それよりも、私も明日から学園に通うのよ。あなたみたいに大切な人と出会えることを祈ってくれるかしら。
33年×月■日。
ねえ! ねえ! 聞いてちょうだい。あ、ごめんなさい。手紙はほどほどにって言ったのに私から送って。でも、どうしても誰かに聞いてもらいたかったの。
だからさっさと本題に入るわね。今日ね、ちょっと体調を崩して困ってたのよ。
ほら、まあ、なんて言えばいいのかしら……あまり私、友達がいないから助けてくれる人もいなくて。
あ、そこは別に気にしなくていいわよ。大事なのはこの先だから。
それでね、どうしても動けなくて困ってたら、助けてくれた人がいたの。
運動があまり得意じゃなくて、他の武術科生にからかわれてるのを見たことがある人なんだけど……それでも、頑張って私のことを抱えて、医務室に運んでくれたのよ。
すごいと思わない? 苦手なのに、私を抱えてくれたのよ! 人一人抱えるのってすっごく大変なのに!
どうしようかしら。何かお礼をしたほうがいいわよね。ああどうしましょう、誰かにお礼なんて久しぶりで、何を贈ればいいかわからないわ。
33年〇月▼日
お礼の品をようやく渡せたわ。転んだのを見かけたから、そっとハンカチを差し出したの。
すごく自然で素敵だと思わない?
あ、そういえば子供が産まれたのよね。おめでとう。確か二人目、だったわよね。
いらない布が何枚もあるから、一緒に送るわ。よだれを拭くのにでも使ってちょうだい。
質はいいはずよ。歪んだ刺繍さえ気にしなければ、だけど。もちろんそんな細かいこと気にしないわよね?
35年■月〇日
もう、困ったわ。親が学園在籍中に結婚相手を見つけてこいって言うのよ。
後半年もないのに。そういうことはもっと早く言ってもらわないと。私の体が弱いことは知れ渡っているし、もらってくれる人なんているかしら。
誰かいい人がいたら紹介してくれると助かるわ。
35年■月▼日。
ごめんなさい。先日の紹介だけど、忘れてちょうだい。
それよりも、すごい奇跡が起きたのよ。ほら、前に助けてくれた人がいたって手紙に書いたの、覚えてる?
その人がね、結婚してほしいって言ってくれたの。家を通してだから直接、ではないけど。
これで親からもう結婚しろって言われなくなるわ。
二度も助けてくれるなんて、もしかしたら私の王子様なのかもしれないわ。もちろん、冗談よ。
36年〇月×日
あなたに招待状を送れないのが残念だわ。親が頑なにあなただけは呼ぶなって言うのよ。
昔馴染みであることは変わりないのに。
婚約が駄目になったとか、勝手なことを言わないでほしいわ。
まあでも、昔馴染みのあなたなら、呼ばれなくても私のことを祝福してくれるわよね?
私はね、兄のように思っているあなたが大切な人と巡り会えて、可愛い子供にも恵まれたことを本当に嬉しく思っているのよ。
だからちゃーんと、奥さんと子供たちを大切にして幸せになってね。愛想尽かされるようなことしたら、蹴飛ばしに行ってあげるんだから。
もちろん、私も私で幸せになるわよ。
だって、私の王子様と結婚できるんだから、幸せにならないはずがないでしょう?
だからもう、心配しないでね。
学園で大切な人ができたの? すごい! よかったじゃない。
私との婚約なんて、気にすることないわよ。この年になってもまだ結ばれてないのだから、両家ともそこまで乗り気じゃないってことでしょうし。
それよりも! 大切な人に愛想尽かされないように気をつけなさいね。私との手紙もほとほどにするのよ。
兄妹みたいな関係だって言っても、その人からしてみたら知ったことじゃないんだから。
33年▽月〇日。
あらいやだ。どこから私の話なんて漏れたのかしら。
別に私の親のことなんて気にしなくていいわよ。どうせ、逃がした魚が惜しくなっただけなんだから。
どうしても結婚してほしかったのなら、もっと頼みこめばよかっただろうにそうしなかったのよ? 気にするだけ無駄だわ。
それよりも、私も明日から学園に通うのよ。あなたみたいに大切な人と出会えることを祈ってくれるかしら。
33年×月■日。
ねえ! ねえ! 聞いてちょうだい。あ、ごめんなさい。手紙はほどほどにって言ったのに私から送って。でも、どうしても誰かに聞いてもらいたかったの。
だからさっさと本題に入るわね。今日ね、ちょっと体調を崩して困ってたのよ。
ほら、まあ、なんて言えばいいのかしら……あまり私、友達がいないから助けてくれる人もいなくて。
あ、そこは別に気にしなくていいわよ。大事なのはこの先だから。
それでね、どうしても動けなくて困ってたら、助けてくれた人がいたの。
運動があまり得意じゃなくて、他の武術科生にからかわれてるのを見たことがある人なんだけど……それでも、頑張って私のことを抱えて、医務室に運んでくれたのよ。
すごいと思わない? 苦手なのに、私を抱えてくれたのよ! 人一人抱えるのってすっごく大変なのに!
どうしようかしら。何かお礼をしたほうがいいわよね。ああどうしましょう、誰かにお礼なんて久しぶりで、何を贈ればいいかわからないわ。
33年〇月▼日
お礼の品をようやく渡せたわ。転んだのを見かけたから、そっとハンカチを差し出したの。
すごく自然で素敵だと思わない?
あ、そういえば子供が産まれたのよね。おめでとう。確か二人目、だったわよね。
いらない布が何枚もあるから、一緒に送るわ。よだれを拭くのにでも使ってちょうだい。
質はいいはずよ。歪んだ刺繍さえ気にしなければ、だけど。もちろんそんな細かいこと気にしないわよね?
35年■月〇日
もう、困ったわ。親が学園在籍中に結婚相手を見つけてこいって言うのよ。
後半年もないのに。そういうことはもっと早く言ってもらわないと。私の体が弱いことは知れ渡っているし、もらってくれる人なんているかしら。
誰かいい人がいたら紹介してくれると助かるわ。
35年■月▼日。
ごめんなさい。先日の紹介だけど、忘れてちょうだい。
それよりも、すごい奇跡が起きたのよ。ほら、前に助けてくれた人がいたって手紙に書いたの、覚えてる?
その人がね、結婚してほしいって言ってくれたの。家を通してだから直接、ではないけど。
これで親からもう結婚しろって言われなくなるわ。
二度も助けてくれるなんて、もしかしたら私の王子様なのかもしれないわ。もちろん、冗談よ。
36年〇月×日
あなたに招待状を送れないのが残念だわ。親が頑なにあなただけは呼ぶなって言うのよ。
昔馴染みであることは変わりないのに。
婚約が駄目になったとか、勝手なことを言わないでほしいわ。
まあでも、昔馴染みのあなたなら、呼ばれなくても私のことを祝福してくれるわよね?
私はね、兄のように思っているあなたが大切な人と巡り会えて、可愛い子供にも恵まれたことを本当に嬉しく思っているのよ。
だからちゃーんと、奥さんと子供たちを大切にして幸せになってね。愛想尽かされるようなことしたら、蹴飛ばしに行ってあげるんだから。
もちろん、私も私で幸せになるわよ。
だって、私の王子様と結婚できるんだから、幸せにならないはずがないでしょう?
だからもう、心配しないでね。
51
お気に入りに追加
5,257
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(328件)
あなたにおすすめの小説
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。
ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。
程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが…
思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。
喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___
※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)
異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
一気読みしました。面白かったです。最初にチラリと感想を拝見していたので、ざまぁを期待しないで読んだので、サイラスの不器用さにイライラせずに 笑いながら読めました。
父親と妹に関しては、ざまぁというより「更正」とか「改心」とか、そんなタグがあるのか分かりませんが、そんな印象を受けました。父に関しては、最後の手紙を読んだとしたら「後悔」という感じでしょうか。
本当は、その気になってさえくれれば、アルフの方が主人公の助けになってくれたし 相性の良い夫婦になったと感じますが、サイラスの不器用だけど一生懸命な所に絆されたなら、サイラスが初心さえ忘れなければ、きっと、主人公は 幸せになれるのだろうな と思いました。
ただ、ヒロインのお母様に関しては 気の毒で、父の思い込みにより辛い目に遭わされたのですから、父親がもっと激しく後悔したり、ヒロイン母への詫びの心があってくれたら…と最後の手紙を読んで泣けました。
外に愛人がいた事にも気がついていて、苦しい思いをしていたんだろうな と、手紙の浮かれた幸せそうな感じと対比して、しみじみしてしまいました。
兎に角、ヒロインの待遇が変わって 幸せになって良かったです。ワンコ気質の旦那さんを上手く操縦して、幸せになるんだろうな とほのぼのしました。
面白いお話を有難うございました。
円満に着地したのは、まぁ良いんですけど、ざまぁ要素が欠片も無いのにざまぁタグを付けるのは眉を顰めます。
ざまぁ対象であろう父親と継母&娘が真実を知って凹んでる父親と共に領地に引っ込んでお終いって、どこがざまぁなのやら。
ざまぁって読者がざまぁとスカッと出来るモノを言うのに、読者にフラストレーションを与えるだけ与えて対象は尻すぼみに消えて行きました〜と説明で終わらせるってざまぁでも何でも無いですよ。
なにも過激なざまぁにしろって話ではありません、やらかした事に対する報いとフラストレーションの解消をハッキリ演出してくれらそれで良かったんです。
そういうのがまるで無いじゃないですか。
せいぜい自業自得要素ありが妥当では?
タグの見直しをお願いします。
感想ありがとうございます。
ざまぁに関しては、各個人によって塩梅が変わるようで、当作品に関してもざまぁである感じる方と、ざまぁではないと感じる方がいらっしゃるようです。
なので、完全にざまぁを取り切るのはざまぁだと感じる方がいる以上少し違うと思うので、タグを「ざまぁ?」と「自業自得要素あり」に修正してみました。
シェリルママこんなにもパパとの出逢い
結婚についてときめかせてたのに・・・
これを読んだら、そりゃ自分の最低な行いを悔やむ日々だよね。
シェリルとサイラスの結婚生活が上手くいってますように。
感想ありがとうございます。
母親が生きている間ならいつでも軌道修正できたのですが……。
シェリルとサイラスは決定的にすれ違う前に軌道修正できたので、父親と同じ道を歩むことはないでしょう。
おまけも含め読んでいただきありがとうございます。