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「大丈夫?疲れてない?」
「うん、大丈夫!それに今からすごく楽しみ!」
「そうだね、まさかサーシャがこっちに来てくれるなんて夢みたいだよ!」
「ふふ、クリスは大袈裟よ」
見知った景色からどんどんと変わり途中で休憩するポイントでこんな会話をしながら旅を楽しむ
日が暮れて来たところで近くの街で宿に入った

「それにしてもクリスはその踊り知ってるの?」
「うん、知ってるよ、’ボンオドリ’って言ってね?この世界にはないらしい独特で面白い踊りだよ」
「聞けば聞くほど楽しみだわクリスも踊れる?」
「うーん、ちょっとしか出来ないけどこんな感じかな」
「全然見たことのない動きね!」
「初めは動きづらいかもしれないね」
ますますその’ボンオドリ’?って言うのに興味がわいたわ
後2日かかるのよね?
待ち遠しいけど今日は家族以外の人とこんなにお喋りできてすっごく楽しかったわ
まだまだこんな日が続くなんてほんと夢のよう
ずっとこんな日々が続けばいいのにな
早朝からの出発と馬車移動で疲れたのか
その日の夜はぐっすりと眠ってしまったわ

朝起きて支度をしていると何やら外の方が騒がしくなっていたわ
何かしら?
気持ち早めに支度を済ませ宿の前へと降りていく
近くにつれて怒号のような声が聞こえてくる
扉が閉まっているのにここまで聞こえてくるのは中々の声量だわ
誰かしら?こんな朝早くに迷惑よ
そんなことも考えられない方々なのかしらね??
外へと続く扉を開けてその光景を目にした瞬間私は衝撃が全身を駆け巡る

「.......ウソだ、ろ?」
いつも無表情なのに怒りを顕にして地を這うような低い声でクリスに向かって何かを言っていたが途端悲痛な顔へと切り替わって驚いた
しかし何故こんな場所にルドルフ様がいらっしゃるのかしら?しかもレオン様もいらっしゃるのでは?
幸いそこまでギャラリーはそこまでいないみたい
状況はよくわからないけれどとにかく辞めさせなくちゃ近隣に迷惑だわ!!

「お話中失礼致します。この騒動はどういった経緯でしょう?」
「、っ!!サーシャ!!」
、、え??
本当にこれはどうしたらいいんでしょうか?
グイッと腕を引かれてルドルフ様の胸元あたりにそっと抱きとめられ背中側に腕が回されてます
咄嗟に離れようとしても身動きが取れません
?、、そういえば今愛称で呼ばれなかったかしら?
名前を一度も呼ばれたことのない人の口から愛称が出るなんて私の耳がおかしかったのかしらね?

「ッなあ、サーシャはこいつのことが好きなのか?
だからこのままこいつの国に行って
俺との婚約をなかったことにするつもりでいるんだろう?
前にサーシャから婚約を解消してほしいと言われた時にいいと言わなかったから強行突破のつもりなのか?

..........

..........

...........

サーシャを傷つけたくないんだ
っッ?!」

「そこまでにしときなさいってば~
サーシャちゃんが怖がるだろぉ?一旦冷静になれって~」
ぎゅうぎゅうと締め付けられていく腕が少し緩まる
プハッ
途中から息が苦しくって半分くらい聴いてられなかったんだけれど大丈夫だったかしら?
それにしてもルドルフ様ってこんなに喋れるのね!!
すごく怒っていて口調が乱れているのには驚きを隠せない

...それでなんて言っていたかしら?
聞こえていた部分が少ないからそこで判断するしかないのだけれどこいつのことが好きって言うこいつは誰のことかしら?
婚約解消の件も少し聞こえた気がするわ
あれはうーんっと?なんだったかしら?
持ちうるピースが全然足りないわね
誰かさっきの説明をしてくれない???


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