かぶる猫の大きさは

yumemidori

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救出

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『オレは’今の’お前を愛することはないよ』
この選択が正しいかどうかなんてわからないが羽紅が言っていた嘘の声色のことがあるので本音でぶつかろうと思った
そしたら徐にかつらをとってカラコンを外す目の前の人物
じっと視線を外すことはなく見定めてくるが反応はしてやらない
「これでどう?」
フルフルと首を横に振るとよりドロドロとした瞳になった
ぐるぐると渦巻く感情が処理しきれてないのか全く光が差し込まない瞳孔の開いた瞳がどんな変化も見逃さまいとしている

頬に滑らせていた手が首のうえに置かれる
その時その目に映っているのはオレだけれど違う誰かを重ねているようにも見えた
どんどんと圧迫されていくがもう少しで手がかりを掴めそうで瞬きを繰り返してその瞬間を待つ
苦しくなってきてあともう少しでダメだと思った時やっと掴んだ手がかり
「.ゥ..ァにぃ、さ、」
小さな声だったけれど確かに紡いだ言葉
そうか、なら
首にかけていた手を掴み退けた後その手と繋ぐように包んで語りかける
少しでも伝わるように
『お前が愛してほしい相手はオレじゃなかっただろ
お前が望む相手は今さっき頭に浮かんだ相手じゃないのか
何があってそうなったのかとか愛に飢えてる理由は分からないけれど面と向かってちゃんと愛してほしい本人にはそのことを伝えたのか?
その相手はお前の話を聞いてくれないほどダメなヤツなのか「違うッ!」』
やっと口にした言葉と共に握ってる手に力が加わっていてぇ
『それならちゃんと話し合ってみろよ
相手からの愛が欲しいならまずはお前の気持ちを渡してみろよ
すんなり受け入れてくれるかどうかはしらねぇけど後悔したくないのなら言葉にして伝えないと相手に伝わらねぇんだ」
ポロリと目から溢れた涙
やっと届いたか、と体を起こして落ちていく涙をそっと受け止める

それは突然のことだった
この音のなかった空間に唐突に訪れた乱暴な音
「ッ緑!!!」
「「孔雀!!!ん?」」
「りょっくん!!」
「「くーちゃん!!え?」」
慌ただしく入ってきた音と共に引き離される身体
兄と羽紅に抱きしめられ兄は羽紅を引き剥がしオレの体を確かめてくる
そして止まった視線は首に
あ、もしかしてヤバい系ですか、そうなんですか
羽紅と兄が目の合わせたかと思えば地を這うような低い声が重なって聞こえた
「「おい!」」
目の前の5人は振り返る
「2人とも待てってお願いだから」
急いで必死に抱きつきながらも止めるようとするが病み上がり+身長のある2人には勝てない
「殴らせろ」
そう言ってオレの首を見たであろう呆然とした生徒会連中を押し退けてあいつの胸ぐらを掴んだのを唯一止めれた羽紅に抱きつきながらこればかりは仕方ないと叫んだ

『くろ兄、そいつ殴ったら嫌いになるから!!今後口も聞いてあげない!』
嫌いで顔にぶち当たる寸前でピタリと止まり口を聞かないでこちらを向いて涙目になる
こればっかりは言いたくなかったし何より今までの努力がバレるし何やってんだって話だけど今回の首の跡は間違いなくオレが誘導というか試したからそいつだけが悪いわけじゃない
だから止めたんだけど沈黙と突き刺さる視線が痛すぎる
思わず抱きついていた羽紅に隠れてぎゅーっとしがみつくと慌てて兄が飛んできて羽紅を押し飛ばしオレを抱っこしてベットへと座る
「緑、ごめん 俺殴ってないから嫌いにならないで、口聞かないとか絶対ダメだからね」
『うぅー、バカ!』
恥ずかしくて居た堪れなくて真っ赤になった顔を隠すように兄の胸に顔を埋める
ギュッと抱きしめてくれたけど俺の頭上では羽紅と言い争いをしていた

恥ずかしさが多少なくなってハッと思い出す
抱っこされてたところを押し返すと上から降ってくる声は悲しそうだったがそれも気にしていられない
「やっぱり緑は俺のこと嫌いになったか?」
その言葉を返すよりも先にやらなければいけないことがある
今ある部屋を出て一直線に向かうのはとりあえずわかっている内藤の部屋だった
勢いよく扉を開けて近くにあったスイッチを押すと電気がつく
唐突についた電気と扉の音にびっくりしたのかビクッと体を震わせた
急いで駆けつけようとしたが小刻みに震える身体に気付きそーっとゆっくりと近づいていく
『内藤こっち向いて』
お願いだから何も映してないその目にオレを認識して
5日間も見つけてあげられなくてごめん
ベットの横でしゃがんで下から内藤を見上げる
『きぃ』
「..ぁ、!..」
ゆっくりと手を伸ばして頬に触れる
何度か滑らせた後
「そ、たいちょ、、おれ、」
本当は泣きたいだろうに遅れて入ってきた大勢の前で強がるこの子を隠したくてその頭を抱き寄せる
縛られた足と手を解いてる間オレに身を寄せて静かに涙していた
後ろにいた者たちは声も出せずに静かに見守っている
我慢する子だから流れていた涙はすぐに止まり恥ずかしそうに笑ったのを見て伝える
『きぃ、すいを迎えに行こう』
頷いてくれたところをだき抱えて転入生に視線を送る

それについていくと反対側の部屋に通された
きぃが5日でこうなるなら10日も見つけてあげられなかったすいはどうなってるだろうと怖かった
「紫水!」
きぃが呼んだ声に反応はなくどこか一点を見つめている
顔を歪めてきぃが悔しそうにしているのが視界に入った
もう一度抱き抱え直して一歩ずつすいの方へと近づいていく
すぐ側までやってきてやっとこちらに目線が向いたと思ったらその瞳は潤み始める
「あ、来ないで、嫌、いやだ、いや、助けて」
オレやきぃを認識していない
「紫水!!」
「やだ!!!」
「紫水!聞いて、おれだよ!輝石だよ、!」
ボロボロと流れてくる涙が痛々しい
オレの腕から声をかけるきぃの言葉は届かない
それならばときぃごとすいを抱きしめた
大分抵抗されたけれどきぃの呼びかけとオレらのハグに徐々にそれは治っていく
『すい、きぃと一緒に助けに来たよ』
「..,..!、あ、れ?輝石?、緑くん?」
「ああ!」
『そうだよ』
「ぁ、あ、本当?」
オレらを見比べて先ほどよりもボロボロと泣き出したすい
輝石に任せて足と手の拘束をオレがとくと視界に歩いてくる誰かが入る
それは覚悟を決めたように歩いてくる転入生だった

「紫水、輝石、そしてたろー基、緑。本当にごめんなさい、謝っても許されない取り返しのつかないことだけれど謝らせてほしい、ごめんなさい
俺はみんなからの愛が欲しかった
そうだったはずだけれどそれは僕が現実逃避して気を逸らしていただけだったんだ
紫水は海を輝石は晶をそして緑は柘榴をそれぞれの関係が羨ましくて僕は嫉妬してたんだ
それに僕が本当に愛して欲しい相手は別にいるってこと、それは全部緑が気づかせてくれた
ありがとう
俺はとんでもないことをしたしこんなことで償えるとは思ってないけど自主して罪を償おうと思う」
部屋に沈黙が流れる
くるりと踵を返し部屋の入り口で聞いていた生徒会連中の方に向かっていく

「ま、って」
横から聞こえたすいの声はそれを止めるには十分だった
きぃとすいは顔を見合わせて頷いていた
「おれら確かに監禁されてたしお前以外誰とも会わずに気が狂いそうだったけれど」
「別に暴力振るわれたとかじゃなくてご飯とかもあったわけだし」
「その、おれら親衛隊もこれより前にお前に制裁を加えたわけでさ、全部失敗で終わったけどね、、でもこっちこそ謝らなくちゃごめんなさい」
「今回は親衛隊をまとめきれなかった僕らの行動の報いが僕ら2人と緑くんに火の粉がかかったから今回はお互い様ってことにしてくれると助かるんだけど、、」
「ダメか?」
再び訪れる沈黙
「それはダメだよ、俺のほうが罪が重い」
「いや、おれらのほうがやばかったと思う」
「たしかに複数対1だもんね」
堂々巡りでどちらも譲らない

「少しいいか」
ここで兄が声を上げた





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