なあ、一目惚れって信じる?

万実

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お出かけしましょう

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その後のことはよく覚えていない。陽貴先輩に手を引かれ、教室まで戻ってきたのは確かだ。

小糸ちゃんが驚いて、私を出迎えてくれた。

「美結、あんた顔が真っ青。それに目が真っ赤だけど、大丈夫なの?」

「···そう?大丈夫よ」

私は無理に笑顔を作ってみせるけど、心と表情はちぐはぐで、とても元気そうには見えないと思う。

「大丈夫そうには見えないけど。それに、陽貴先輩が送ってきたところを見ると、上手く断れなかったの?」

「う、うん」

実際には、それどころではなかった。
よく考えてみると、あれは付き合うことにOKを出したようなものだ。

はあっとため息が漏れる。

でも今は、何もかもがどうでも良くなってしまった。

なんとか浮上したいけれど、すぐには無理だ。
こんなんじゃ、授業にも身が入らない。

「小糸ちゃん、私早退する」

「そう、それがいいよ。先生には私が上手く言っておくから」

「うん、お願いね」

私は荷物をまとめ、外に出た。
今日はバイトがあるから、それまでの間どこかで気分転換をしよう。
バイトの帰りにはユズが迎えに来る。
それまでに、なんとか自分の気持ちを立て直しておかなければ。
笑顔で祝福してあげたい。

それが上手くできるかは、わからないけど。

ゆっくり歩いて校門を過ぎた頃、後ろから駆けてくる足音が聞こえた。

「美結!」

そう呼ばれ振り向くと、私のすぐ後ろには陽貴先輩が、膝に手を置いて荒く息をしていた。

「先輩?」

何故ここに陽貴先輩がいるのだろう?
私は首を傾げていると、先輩は私の頬に手を当てた。  

「教室から君の姿が見えたんだ。体の調子が悪いんじゃないのか?熱はないみたいだけど大丈夫か?」

もしかして、心配して来てくれたの?
わざわざ授業を抜け出してまで···。
さっきは散々泣いて、なだめてもらったのにホントに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「先輩、私体はなんともないの。授業に身が入らなそうだったから、サボっちゃった」

陽貴先輩はホッとして、私の頭に手を置くと言った。

「そうか、良かった。それならこれから一緒に出掛けよう」

「先輩、授業は?」

「俺もサボり。授業よりこっちのが大事」

そう言うと私の手を取り歩きだした。
一人で気分転換をするつもりだったのに、陽貴先輩と出掛けることになってしまった。

陽貴先輩を好きになることができたらいいのだけれど。
そしてユズとは家族として普通に接する。

そうすれば、みんな上手くまとまって問題ないんだろうけど···。

······

そんなことが私にできるのか。
今はとにかく、陽貴先輩に付いていくしかない。


「先輩、何処へ行くの?」

「遊園地なんてどう?今日もバイトだろ?それまでに帰るようにするから」

「ありがとう。遊園地は久しぶりだから楽しめそう」

遊園地なんて小さな頃に行ったきりだ。
駅から隣町まで電車に乗って、遊園地へ到着した。
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