媚薬の恋 一途な恋

万実

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仕組まれていた

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なんてことだろう。

私は迂闊にも自分の机の上に【媚薬】を置いたことで、フィンさんに利用される結果になってしまった。

アレクが【媚薬】を飲んだのは偶然ではなく、フィンさんが故意に入れたが故だった。

自分の危機管理の無さに嫌気が差すが、やってしまった事をどうこう言ったところで、どうにもならない。


「何のためにそんな事をしたんですか?【媚薬】を試すだなんて、生徒会長はあなたの友達でしょう」

私の言葉にフィンさんは本当に驚いて目を見開いた。

「はっ!友達?バカを言うな。アイツを友達だと思ったことは一度もない」

「えっ?!」

友達ではないの?
そんなふうには見えなかった。

あれはずっとフィンさんが演技をしていたということなの?

アレクはショックを受けるのではないか。

友達だと思っていた人に裏切られたのだから。


「アイツはどんな気持ちだろう?この【媚薬】で、本来の性格をさらけ出したんだ。君との恋人ごっこは観物だった。ただ、計算外のことが一つ。君だよ」


「···私?」

「君はメガネで隠していたのか?その美しさを。アイツにやるには惜しい」

「······」

口角を上げたフィンさんは、ゆっくりと私に近づいて来た。


「来ないで」


私の言葉は聞き入れられない。

じりじりと後ずさる私のすぐ前まで来たフィンさんは、立ち止まり【媚薬】を目の前にかざした。


「今度はこの【媚薬】を君に使う」

「えっ?」

「俺に恋する君の姿をアイツに見せつける」

「なぜそんな事を?!」

「アイツにとって君は弱点になりうるからだよ。アレクの物は全て奪い取る。俺の目的の為に」

この人はヤバい。

危険すぎる。

フィンさんはもっと優しい人だと思っていたのに、私は本当に人を見る目がない。

彼は目的の為なら人がどうなっても関係ないんだ。

フィンさんとは考えが全く相容れない。

会話が成り立たない以上、近くにいちゃダメだ。逃げないと!

でも、どこに?

入口の扉は閉まっている。

どこにも逃げ場なんて無いことはわかってるけど、少しの間でも離れないと、媚薬を飲まされたら大変なことになる。

アレク······。

アレクの顔が脳裏をよぎる。
ここにアレクがいてくれたら···。


弱気になっちゃダメ。

なんとか一人で切り抜ける方法を考えないと。


私は目線だけで上を見て一呼吸し、小さく頷く。

フィンさんの手が私に伸びた瞬間、重心を低くし、横へと走り出した。
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