ダンジョン階層主の日常

研究25 直立不動と悪夢

　ゴブリン視点

　しばらく時は流れ、その間階層主は何をしていたのだろうか。
　階層主は完全に忘れ去られていた。

　ゴブ（おーいだれかー。）
　ゴブ（誰かーいませんかー）

　呼びかけても何の反応もない。

　さて、なんか説明があるといわれてからしばらくたった。
　だが、何の連絡もなかった。

　ダンジョンマスターや監視者には特別なスキルがある。
　状況次第では最悪にもなるスキルを。

　あの時監視者はある力を使っていたのだ。
　それは、配下の魔物を従わせる力だ。

　それは、ダンジョンマスターが暴走したときのためにこちらから抑え込むための能力だった。

　本人の意思にかかわらず効果ははっきりと発動する。
　あの時受けた命令はただ一つ、連絡があるからそれまで待てという命だ。　

　しかし、一応は最高権力者である監視者からの命なので動けない。
　本人が気が付き、止めればよかったのだがそれどころではなかった。

　その結果出来上がったのは、動けない階層主という現状だった。
　直立不動で動けなくなってしまいしばらく時間がたった。

　そうしてさらに時間は流れ、階層主には異変が起こった。
　それは、時とともに少しずつ階層主の精神をむしばんでいった。

　ゴブ（どうなってるんだ。）
　ゴブゴブ（俺らはしょせんザコだ、彼らの目にすら入ってねえんだよ。）

　階層主はとうとう不貞腐れた。
　何事にもやる気を出さないこんな状態である。

　ゴブ（はあ）
　ゴブ（はあー）

　最近はずっとため息をついているような状態だった。
　しかしそれでも動けない。

　ゴブゴブ（・・・）
　ゴブ（大丈夫か？）

　ゴブリンが理解不能な声を垂れ流し始めた。
　同族であるゴブリンならば理解できるはずなのに全く理解できない。

　すぐに連絡する。
　そういわれたのに、まったく音沙汰がない。
　つまりいつまでたっても動けない。

　ゴブ（まあまあ、おちつけよ）
　ゴブ（きっとすぐに連絡が来るよ。）
　
　仲間のゴブリンが励ました。
　しかし、階層主は状態は変わりそうにもない。
　
　そして、時は流れ
　そこには、いつまでたっても動けない階層主がいた。

　きっと忘れられているんだろうそう思った時だった。
　頭に突然声が飛び込んできた。

　「お久しぶりです、連絡です。」

　ゴブゴブ（お久しぶりです。）

　反射的に反応を返したが、いったいどうなっていたのだろうか。
　いろいろと聞きたいことはあったが、とりあえずこの状態をどうにかしてもらわなければ。