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びば学園生活27

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リオネルが退出すると、従者達が先ほどの定位置へと戻っていた。自然に隣へ腰掛けるファビアンから、従者達へ細々と何やら指示が送られる。間もなく従者から手渡される膝掛けが、ファビアンの手からアルフレッドの膝に丁寧にかけられ、テーブルの上には温かなお茶が置かれた。

持ち上げたカップに口をつけ、頬に流れる艶やかな黒い髪に眼鏡越しの伏せる長い睫毛は、同じネコですら溜息物らしい。その磨き上げられた珠の肌に触れられるのは、この世界でただ一人だけ。

「アルフレッド様。」
「うん?」

お茶を一口口にしながらファビアンの横顔を何となしに眺めていれば、気付いた相手から微笑を返される。慈愛に満ちた笑みは、アルフレッドの思考力を鈍らせた。
あー、何でこんな美人なんだうちの正室つまは…。

「…私に何か仰りたい事はありますか?」

ファビアンの口調はあくまで平静だった。言葉を失うアルフレッドの顔から視線を戻し、もう一度カップに指を添える。
意味深に放たれた言葉に、混乱する脳内は正にお祭り状態。どんな意図なのか、何を聞きたいのか…。

何だ?何かしたか俺?ケールの事バレたとか…?まさかアンリかジレスから洩れた?…だよな、それしか思い当たらないし。いや、後は何だ?昨日、帰ってから体調不良じゃなくて酔ってエドウィンの所に泊まっちゃった事?エドウィン側から聞いたのかな、うわーそれだったらキツイよな。何やってんだコイツって呆れただろーな。うん、どれだ?マジわっかんねーわ。うう…何か気持ち悪くなってきた。

「…その、ごめん。」
「やはり、そうだったのですね。」

重苦しく感じた沈黙に耐え切れず、つい謝罪を口にしてしまうがファビアンの返答に確信する。想像よりも冷静な反応に、二日酔いの方が知られたのだと察した。

「あー、うん。」
「それなら、直ぐに会う日時を決めておきますね。」

会う日時?医者でも呼ぶって事かな。いやいや、もう大分身体も落ち着いたんだけどな。

「え…?わざわざ大丈夫だよ!」
「いえ、でも彼方から謝罪をしたいと言っておりますので。」

謝罪?待て、何か話がおかしくないか。

「何を口走ったのかは知りませんが、アルフレッド様が不快な思いをなさったのならば私も知らぬ振りは出来ません。」

そっちー!?ケールの事だったか!何か妙に冷静だったから、その事じゃないと思ってたけど。いや、でも手紙もまだ読み終わってないから、ちょっと待って貰わないと。それにこれはあくまでタチ同士の意地というか。う…でも、ファビアンはフィッツの主家だもんな。

「…分かった。でも、最終的にアンリの件は俺に任せて欲しい。確かに、フィッツ家についてはファビアンが責任を持つ事は分かっているけれど。」
「アルフレッド様。」
「うん。」

思い切って自分の気持ちを口にするが。ファビアンの表情が曇る。やはり、それは受け入れられない意見なのだと理解してしまう。
そう思った矢先、至極不思議そうにアルフレッドを見上げるファビアンの唇が動いた。

「何故アンリの話が出るのでしょう…もしや、何かアンリが粗相でも?」
「え…~っと?うん、アンリは何もしてないよ?うんうん。あー。それよりも、日時を決めるんだよな。」
「ええ。…早めにと言っていたので、数日以内で都合が良い時期を見計らいましょうか。」

ファビアン・デルヴォーは甘い人間では無い。何より社交界に身を置くネコの王族であり、今も脳内でアルフレッドから滑り落ちた言葉を組み立て、理解に努力していた。会話を止めて追求へ向かわないのは、ただアルフレッドへの想いに他ならない。

結局誰と会うんだ?でも、流れとして聞ける雰囲気じゃないな。無理矢理話進めちゃったけど、絶対ファビ怪しんでるって。
意味も無く愛想笑いを浮かべてみるが、愛しの正室からは曇りない瞳が向けられ眩しさに目を細める。

俺は一体誰と会うの?あ、手紙を読まないと。




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