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たのしい休日8

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「シュタルト様、デルヴォー閣下、お二人ともご機嫌麗しく存じ上げます。」
「ご機嫌よう、チャップマン君。君はお出かけかな?」
「こんにちは、リオ。」

馬車から顔を覗かせたリオネルが品良く礼を取る。挨拶を返す此方へと嬉しそうに微笑み、家の商いの為に向かっていますと告げる。
確かリオは家が商いをしているんだったっけ。商人とはいえ貴族科に在籍しているのだから、そこらで店を開く者とは別次元だろう。

「実は今度、他国から人の入りが多いこの通りで、新しい店舗を増やそうかと考えておりまして…。どういった店にするかを、商会で話し合う所なのです。」

俺と同じ年なのに凄いなー。
この世界のネコは一様に働き者だ。タチが好きなことをしてふんぞり返っている中で、ネコは人数の多いハレムで役割を分担し、子を育てて家事を行い、他家との付き合いをこなし、仕事に精を出す。

「…そう、ご苦労様。実りのある話し合いとなるよう願っているよ。…それじゃあ、また学園で。」
「はい、ありがとうございます。では、また…。」

気付いた時にはリオネルとファビアンの会話が終わり、切りの良い所で挨拶を交わしあっていた。そこへ、アルフレッドがある事を思い出して声を掛ける。不思議そうに「どうかなさいましたか?」と小首を傾げる姿は、リオネルの冷たい印象を和らげた。

「休みが明けたらで良いんだけど、俺が考えている案の相談に乗って貰いたいんだ。」
「?はい。私などでよろしければ、お手伝いさせて頂きます。」

先程の会話で、リオネルの家はそれなりの商人だと察する。ならば、図案の纏まってきたボードゲームを見て欲しい。商品化出来るかともかく、商売をする者にとってどう見えるのかが重要だからだ。
シンプルに娯楽を増やしたいのと、何か自分の将来への一つの可能性にもしたい。実はエドウィンと話していた時にトランプゲームを簡単に教えたら、思っていた以上に興味を持ってくれた。

簡単に説明をすると、俺の話しにリオネルも喜んで相槌を打ちながら聞いてくれる。やはり感触は悪くないらしい。話し始めたら切りが無くなるが、滑りの良くなった口は止まらず相手も瞳を輝かせて興味津々だ。これはリオネルが商人として、此方の案に乗りたいと思っているからか。…それとも。

「…アルフレッド様、そろそろチャップマン君もお仕事に向かうのではありませんか?」
「あっ、そうだったね。ごめん、引き止めて!…話しの続きは、また学校でしようか。」

話しは尽きないが、一度会話が途切れた所でファビアンの声が掛かる。その言葉は尤もだと思い、直ぐにリオネルに仕事へと戻って欲しいと伝えた。
「はい、それでは失礼致します」と、頭を下げるリオネルとファビアンの視線が交差する。アルフレッドは次の行き先を御者と相談を始めて気付いていなかったが、その一瞬は確かにネコ同士の牽制であった。

いや、ネコ同士というよりかは、ハレムの正室から他のネコへ向けてが正しい表現だろう。

「ファビ、次はまだ行ってない東側に行こう。」
「はい、東側ですと砂漠の民が多く暮らす地域ですね。…」

つい先程の素振りすら見せず、和やかにアルフレッドに応じるファビアン。

二人は夕刻までのんびりと街の散策を行った。東側の砂漠の民や森の民が暮らす地域、西側の海近くの人々が行き交う地域、短い観劇を楽しもうと劇場にも足を運んだ…。







「…はあ~!いや、楽しかったー。あれ凄くなかった?西側に居た象で荷物を運ぶ商人一行。」
「ええ、そうですね。私は初めて実物を見ましたが、とても迫力がありましたね。」

学園には戻らず、都市部の高級宿の部屋でゆっくり身体を休める。俺としてはもう少し安い宿でも良かったんだけど、ファビアンから「アルフレッド様の身を守る為に」と言われればそれ以上言えなかった。
学園に来てから上流階級の生活には慣れてきたが、まだまだ染み付いた庶民根性は抜けない。

従者に手渡した上着は綺麗に掛けられ、食事処に行き二人で夕食を食べ終えて、貸し切りの大浴場で汗を流して部屋へと戻る頃には、部屋から従者や護衛も引き上げていた。
彼らもこの宿に泊まっていると言う。

絹の様な手触りのシーツがかけられたベッドに腰掛けて、ファビアンから飲み物を受け取る。少しアルコールの入った果実水は口当たり良く、自然と飲むペースも早くなった。

「うん、旨いな。」
「アルフレッド様は、何でも美味しそうに召し上がられますね。」

だって全部美味しいんだよ。この世界のというか、少なくともケラフに来てから口に合わない物はほとんど無かった。
穏やかに此方へと寄り添ってくる相手に、自然と受け入れている自分に気付く。既にファビアンは側に居るのが当たり前になっていたのだ。

学園では無い違う場所での、愛する者との二人だけの空間。込み上げてくる思いに、自然と身体が動く。そっとベッドに倒す相手は少し目を瞬いたが、直ぐに朱に染めた頬のまま微笑を浮かべ見上げてくる。

「…ずっと、待っておりました。」

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