15 / 104
びば学園生活10
しおりを挟む「…2年前にクラスを落とされた彼は、その翌年である昨年の秋頃にコション様の足を踏んだという理由で、二度目のクラスを落とされます。Eクラスの下はありませんので、奴隷身分となったそうです。」
獣人くん…いやチコの背景は酷いものだった。父は亡くなり産みの親は妾で財産は無い。成績が優秀だったおかけで国から補助金を貰い学園に入れたものの、 コションのハレムに入れられてから勝手な理由で奴隷身分に落とされた。
確かにタチには理由があれば、ネコのクラスを動かすことが出来る。ハレムの者が故意的にタチに傷を負わせた場合などだ。数少ないタチを守る権利だが、それを悪用するなんて…。
それにクラスを下げるのも、相手に父が居る場合は難しい。大体はクラスを下げる代わりに金銭を受け取り取り消すことが多い。
今回の場合、チコには助けてくれる父も財産も持たなかった。奴隷身分になった場合、名字を失い戸籍を失う。今後国からの補償も受けられない。
コションが居たら便利だからというだけで、許されてるのは学園の生徒である地位だけ。
そんな悲しすぎる人生有り得ないだろ。
説明を終えたジレスが扉へと下がり、アンリが飲み物を運んできた。いつの間にかファビアンが頼んでいたらしい。
幾つか並べられた種類から珈琲を選び、砂糖とミルクをたっぷり入れてかき混ぜる。糖分を補給して頭を整理したい。珈琲を一口飲み、何となく元気の無くなったファビアン、眉を顰めるキャベンディッシュを横目に確認する。
「…アンリ、ジレス、二人とも座ってくれ。」
扉の側で控える二人に向けて、ソファーの他にある椅子に座るよう促す。チコの話を聞いて、護衛といえどネコを立たせておくのすら嫌になってきた。
「…ですが、そうしますとシュタルト様を直ぐお守り出来ません。」
そう返したのはアンリの方だ。ジレスの方は頷いて椅子に近付こうとしていたので、相方の反論に心底驚いているようだ。
アンリの反論に対し、俺が答える前にファビアンの叱責が飛ぶ。
「アンリ・フィッツ。アルフレッド様のお心遣いに口答えをするのか?お優しさに付け上がるとは無礼にも程がある。」
「…申し訳ございません。」
元々の主に叱られ、忠実な護衛は悲しげに膝を着き頭を下げる。
まてまてファビアン。アンリは至極普通の考えを言っただけだぞ?俺を思うあまり、護衛くん達と関係が悪くなったら不味い。
「…ファビアン、良い。気にしていない。」
「アルフレッド様!…申し訳ありません、差し出がましい真似を。」
大丈夫だよ、と頭をよしよしと撫でておく。キャベンディッシュの視線が痛いのは、呆れているからに違いない。それより、落ち込むアンリをフォローしないと。
ソファーから立ち上がり、アンリへと側へ近付く。 うつ向いた顔は泣きそうに見えて、原因であるアルフレッドの心が痛む。
「…アンリ、立ってくれ。」
「はい…。」
立たせた相手の背中に腕を回し、すっぽりと抱き締める。小柄なアンリはアルフレッドに覆い隠される形となる。驚いて何か言う背後はとりあえず気にせず、腕の中の反応を伺う。
「…俺の方が大きいだろ?」
「シュ、シュタシュタ…っシュタルト様!ど、どうかお離しを…………はうう…」
目を回し真っ赤な顔であわあわと手をばたつかせる様子は、普段の生真面目そうな姿とかけ離れたものだ。ゆっくり身体を離すと、「手を出して」と話し掛ける。息を整えながら手を差し出す相手の手に、自身の手を重ねる。
稽古や鍛練を行ってきたアンリの掌は硬くて傷痕も多い、だが重ねたアルフレッドの手より少し細くて小さい。
それを見て、ニッと口角を上げてアンリをじっと見つめる。
「…ほら、体も手も俺より小さい。君の事は信頼も信用もしている。だから、俺の事も信じて欲しい。俺だって、ネコを守るタチなのだから、君も頼ってくれ。」
「…………………………はい。」
熱に浮かされた様にアルフレッドを見上げるアンリは、時間をかけて頷く。 「いいこだ」と微笑み、アンリとジレスが座るのを見届け、自分もソファーへと戻る。
何となく拗ねている様に見えるファビアンが不思議だが、話を進めようと口を開いた。
「…小国で育った俺の素朴な疑問だ。奴隷からクラスを戻すのは可能なのか?」
65
お気に入りに追加
1,088
あなたにおすすめの小説
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる