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びば学園生活

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欠伸を噛み殺し、ワープゾーンから足を踏み出す。俺の他にワープゾーンを使用していないのは、俺がタチだからだ。全てにおいてタチ優先、喧嘩があった場合はタチが正義。つか、喧嘩自体無いけど。

世界中から貴族や王族の子弟が集まる学園都市ケラフ。全寮制で幼稚舎から大学院まで併設されている。是非初等部から入学を、と国からの催促を蹴り飛ばし、高等部からの編入にした。ハレム作れって言外に言ってたな。

いや、だってさこの世界の常識しっかり知ってからが良くない?それに小学校位遊ばせろや。ハレム作るの早いだろ。俺の生まれた地域は田舎で過疎地域の為同年代が少なく、運良く子ども時代を謳歌出来たし、ハレムも作らず過ごせた。勉強は外から家庭教師を呼んだ事で世界の常識も知れた。 本当に家族には感謝しかない。

さてと、そろそろ人生を始めるか。

豪奢な門をくぐり抜けて、案内役に入学式を行う場所へと案内を受ける。通されたのは何千人が収容出来る会場で、新一年生の席へと向かう。混雑が気にならないのは、俺が通る道が自然と開いていくからだ。
身につけた紺色のブレザー、タチを意味する黒ネクタイ。次いでにS級を意味する金のライン。
自然と周囲へと広がるフェロモンは、ネコを惹き付ける。

白ネクタイのネコ達にも勿論クラスはあるが、クラスが高いからと、クラスの低いタチより偉い訳でも無く複雑そうだ。

「…アルフレッド・シュタルト様。どうぞ、此方へ。」
「…ああ。」

案内役に連れられたのは、最前列の特別席。三人掛け程のソファーになっており、テーブルも付いている。飲み物まで用意されると聞き、とりあえず紅茶を頼み周囲を観察する。
俺と同じタチだろう、離れたソファー席の一人は幾人かのネコを侍らしていたり、堂々と口付けを交わす者も居る。

「…マジかよ。」
「だよなあ。」

眉を寄せポツリと呟いた所に、隣から声が掛かる。カップを置いた人物は、隣のソファー席で少々眠そうに肩を回す。

「俺は中等部から居るルーク・フェルナンド。A級でハレムは3人。同じ学年にタチが居なかったから凄く嬉しいよ、よろしく。」

へえ。感じの良い奴だな。A級ってめっちゃ高くね?俺が言えた義理じゃないが。
相手から差し出された手を軽く握り返す。

「…此方こそ。俺は今年から編入したアルフレッド・シュタルト。ハレムはまだ作っていない、一応S級だ。色々教えて欲しい。」

S級、と目を見開くルークは「初めて見た」とまじまじ見つめるが、最後は柔らかく微笑むに止めた。そのタイミングで飲み物が運ばれて来たので、飲みがてら学園の事を聞いていく。

高等部は三学年にタチが2人。二学年にタチが3人。そして、一学年は俺とルーク、もう一人D級でタチが3人だそうだ。
A級以上は初等部から見てもルークしか居なかったようで、俺は貴重な存在だと言う。

外見通り隣国出身のルークは貴族出身らしく、穏やかで礼儀作法も心得ている。俺は田舎育ちだからなあ、一応父からタチの心得を教えられているが限界がある。
そう言うと、ルークも笑って「俺で良ければ」と快諾してくれた。なんという良い奴。

まだまだ話したり無いが、入学式が始まるようで口を閉ざし前方へと視線を向ける。









入学式を終え、指定された教室へと向かう。Ⅰ組~ⅩⅡ組ある中で残念ながらルークはⅠ組で俺はⅡ組。まあ、そりゃそうか。
前世の学校とは比べるのも烏滸がましい教室内は、白い壁に照明はシャンデリア、座り心地の良い椅子。あ、というか席は窓側の後ろが良いな。あーでも、俺が言うと絶対言うこと聞くよなー。

教室内の雰囲気として、中等部から見知った者同士のネコは複数のグループでお喋りをしていたり、編入生のネコもお互い探りつつ挨拶している。俺に声を掛けてくる者は勿論居ない。
ルークから聞いた話しでは、ネコからタチに声を掛けるのはマナー違反。タチに用がある場合は、まずハレムを通すらしい。ハレムの無い俺の場合は、俺から声を掛けるのは良いのだと。

…知り合う一歩にしよう。
窓側の一番後ろの席で集まる三人組へと近付く。

「…ねえ、ちょっと良い?」
「っは、はい!何なりとお申し付け下さい。」

三人組の中の緩く髪を纏めた生徒が返事を返す。他の二人は緊張しているのか、もじもじと視線をさ迷わせ頬を赤く染めている。返事をした生徒も勇気を振り絞ったのか、声が震えて瞳は潤んでいた。

男なのに…可愛いだと?!
この学園自体も上流階級の集まりだからか、容姿の整った人は多いけど。なんだろうなー。この世界に産まれてから、男同士に対する抵抗消えたし、ネコが妙に可愛く見えるというか。

「俺さー、窓側の後ろが良いんだけど、もし嫌じゃなかったら変われたりする?無理だったら良いよ。」

なるべく威圧感を与えないように、優しい口調でにこりと笑みを浮かべる。
途端に耳まで真っ赤になる相手は、前世だったら女子に騒がれそうなスラリと伸びた手足に冷たい印象の綺麗な顔立ちである。

「…あ、勿論お使い下さい!ええと、私も席は前の方が見易いので…。」
「そう、ありがとう。ああ、俺はアルフレッド・シュタルト。君は?」
「は、はい。リオネル・チャップマンと申します。初等部から在籍し、家は商いをしています。御尊名お伺い出来まして、光栄です。」

リオネル…。うーん、リオだな。

此方を恋する乙女の様に見つめてくる相手に悪い気はしない。リオネルを直ぐにハレムに入れたいかと聞かれれば、そうとも言えないけれど。相手の気持ちもあるし、教室内の意識がほとんど此方へ向いてる状況で軽々しく出来ない。

「そっか、よろしくリオ。君らもね。」

後ろの二人にもヒラヒラと手を振り、席へと腰掛ける。去っていく三人は、まるで女子の様に集まってきゃあきゃあはしゃいでいる。それを見る他のネコ集団は嫉妬や羨望を浮かべたり、アルフレッドに熱い眼差しを向けていた。

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