私は平凡周りは非凡

由紀

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登校は疲労です

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はあ~。本当に、あの後は大変だった…。

無駄にはしゃぐ両親と、機嫌が急降下していく弟達。帰りの車中では、コンコンと一ノ瀬君の悪ふざけであり付き合う事は一ミクロンも無いと言い続けて、やっと表面だけは理解してくれたようだ。

もう…一ノ瀬君何のつもりだったんだろう?あんな夜少し話したぐらいで付き合うとか、絶対無いでしょ?あ、イケメンの余裕か?余裕なのか?!まったく…それなら、今度は軽くノってあげるかあ。

一波乱の一晩明けて、現在は月曜日の朝。母の作った久しぶりの焦げたパンを食べ終わり、家を出る。何だかんだ全部食べてあげるのが、有川姉弟の優しい所だろう。
今朝は隆一が部活の朝練の為、早く家を出ており一人での登校である。特に何事も無く電車に乗り携帯を弄っていると、ぽんぽんと肩が叩かれ不思議に思いその人物に目を向けた。

「…おはよー?えっと、有川さん。」

ふわりと笑い掛けられ、由香利も知らず破顔していた。

「わあ、おはよう!藤野さんも電車通学なの?」

ほとんど話せずに休みに入ってしまった為、やっと話せる事が出来て気分もあがっていく。

というか、藤野さんって本当に可愛いな~。何?お菓子で出来てるの?美少女って、何で出来てるの?
由香利のどうでも良い思考等知らず、藤野はクスリと微笑む。

「うん。会えて嬉しいな。あ、良かったら夏希って呼んで?」

きゃあああ!て、天使か!

「うん!分かったよ。私も由香利って呼んで?」
「…ありがとう。えっと、由香利?」

はにかみながら名前を呼ぶ相手に、由香利も内心悶えながらも会話を続ける。連絡先を交換したり、趣味なんかを話してみたり、あっという間に電車は駅に着いていた。

「そういえば、何か連絡事項なんてあった?」

大分砕けて話せるようになってきた由香利が問えば、夏希も少し考え頷く。

「そうだね…うーん。課題も無いし、持ち物も特別変わりなくって…あー、そういえば。」

何か思い出したのか、夏希の眉が寄り言いにくそうに視線を泳がせる。

「…桐島先生がねえ……。」

え?私に何か?

「何々?!気になるよ?」

それでも何とも言えない表情の夏希だが、一つ溜め息を吐いてから視線を戻した。

「桐島先生が、由香利に朝一番で職員室に来るようにって言うように…言われた気がする。」

………………は?

「…え?え…?」
「だよね~。一体何だろうね?朝一番でって、ちょっと怖い。もしかして、何かしたの?」
「………えー。いや?」

不思議そうな夏希を他所に、由香利はある事が浮かんでくる。

もしかして、弁当?不味かったか、あたったか。もしかして、アレルギーでも出たとか?なら、私には責任無いでしょ?いや、押し付けちゃったからな~。

悶々と考えつつ、口は勝手に夏希との会話を途切れさせずにいた。いや私、すげえな。

学校に着くとまだ早かったのか、人もあまり登校しておらず夏希と教室に入る。鞄を片付け、制服の裾を伸ばしながら席に座り夏希と言葉を交わす。

「やっぱり、行った方が良いよね?」
「…うーん、うん。あ、もしかしたら、委員の仕事とかかもよ?」

由香利が行きたくないオーラを醸し出すので、夏希は慌てて軽い口調で返してみる。 

(由香利って素直そうだし、悪い事はしてない筈。)

夏希の励ましに、少し希望の出た由香利は「そうだよね」と引き吊った笑顔で、ゆっくりと教室を出るのであった。重たい足を引きづり、職員室のドアを叩いて静かに入室する。

あー、やだなあ。
気の重い由香利だが、幸運な事に教師の姿は思ったよりは少ない。桐島の後ろ姿を見つけ、意を決して声を掛ける。

「…桐島先生、おはようございます。」
「ん?おお!おはよう、有川!良かった、元気そうじゃないか!」

ジャージ姿の桐島は、相変わらず通る声を張り上げる。他の先生も慣れたのか、此方の様子を見ても苦笑だけに留めている。

「はい、大丈夫です。あの、朝に来るようにって藤野さんに聞いて。」

由香利の言葉に、桐島も思い出したのか「そうだった」と目を見開いて頷く。 

「…弁当の礼をしたくてな。」

そこまで言った先生の次の言葉は、衝撃的な物であった。



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