私は平凡周りは非凡

由紀

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平凡少年と非凡家族

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「…なるほどー。この子って、慎二の後輩ってわけか。」

玄関で倒れた少年が隆一に運ばれてソファーに横にされた5分後、双子に構う両親を上三人は見事に無視していた。慎二は姉の言葉に、携帯の画面を見つつ頷く。

「うん。昨日会計をしてる友達からさ~連絡あったんだ、後輩が書類持って行くって。」 
「…へえ。わざわざ休みの日にか。お前、何か奢ってやれよ?」

バスケ部部長で後輩を世話する身として、隆一はその辺は義理がたい様である。それに対し兄の気遣いを理解する慎二は、わかったよ~とヘラりと笑う。

何でさ…
気の抜けた会話なのに、イケメン臭半端ないのだろうか?私が気を抜いた顔なんて、ただの残念な人だよ。
二人の微笑ましいやり取りの筈が、つい内心舌打ちを打つ。それでも弟可愛さに許してしまうのだが。そんな中、ソファーの人物が目を覚ました。

「……うーんん…ん?え!?………………ああああ、かか会長?!すみませっ!」

目を覚まし慎二と目が合った途端慌てて飛び起きると、持っている鞄を漁り出す。

「…アハハ~。まあ、大丈夫だから落ち着きなって?」

慎二が苦笑を浮かべると同時に、後ろから騒がしい声が響く。

「あらあ!起きたのね!こんにちわぁ、いつも慎二がお世話になって います。慎二のママです。」
「慎二のパパでえす。」

双子を構い倒し満足した両親が、息子の後輩と聞きはしゃぎながらお茶やらお菓子やらを持ってくる。

「ちょっ!」

慎二は頬を引き吊らせ、後方を見れば屍の様な双子が視界に映る。

(え?何があったんだよ!?流石にこれ以上双子には相手させられないか。うう~でも。)

天の助けである姉と兄は、そうっと扉に向かっていた。慎二は光速で扉の前に立つ。

「…可愛い弟を見捨てるの?二人とも。」

慎二の切羽詰まる表情に、大好きな姉と尊敬する兄は薄情だった。

「…ほら、人生ゲームしないとだし。」
「ああ。滅茶苦茶忙し過ぎてヤバイ。本当は助けてやりたいが。」

感情の全くと言って良いほど籠らない棒読みの口調に、勿論弟は騙されない。

「いやいやいや!流石に人生ゲームとかさ、心底何も無い時じゃん?!嘘ならもっとマシな嘘つこうよ?!」 

慎二の後輩上谷にマシンガントークをぶつけていた両親も、三人の様子に気付きすぐに近付いてくる。

「あら、ほら上谷君が待ってるわ。早くいらっしゃい?」

上機嫌な母に自分は良いだろうと由香利はドアノブを握るが、今度は両親揃って詰め寄って来た。

「じゃあ私は、部屋戻ってるから。」
「「由香利ちゃんは此処に居て!!」」

ええ~……。

「…頑張ってよ、親なんだから。」

げんなりと呆れ口調で返すが、既に両親は由香利の退路を絶っていた。

「…だってええ。由香利ちゃんがいないとお、隆くんとかあ、しーくんとか、怖いし~?」
「良い年して語尾のばさない。」

溜め息を吐く由香利は、既にくたくたである。その間に、上谷と慎二が話しており、用事が済んだらしい。鞄を持って帰り仕度する上谷に、由香利は軽く会釈する。

「ごめんね、騒がしい家で。わざわざ休みにありがとう。良かったら、また遊びに来てあげて?」
「…え、い、いいえ!此方こそお邪魔しました。」

素直で礼儀正しい少年に、由香利は好感を持てた。

このぐらい普通の容姿で真面目な子が、私の弟っぽいよねえ。なんて言ったら双子がぐれそう…。

「…そんな事ないけど?家にも君と同じ年がいるから、今度話してみれば良いよ。」

慎二と似た笑みに、上谷は少しドキッとしつつ、指された方を見る。そこには、不良風のイケメンと綺麗系統のイケメン。更に尊敬する先輩と話す男前。
更に更に、先輩の両親と名乗る美男美女の夫婦。

(何これ心臓に悪い)

上谷は慌てて頷くと、もう一度礼をして出ていく。

「…ありがとうございました、有川会長のお姉さん。」

急いで出ていった上谷に、由香利は一瞬固まり直ぐに目を見開く。
え?初めて、初見で慎二と姉弟だと思われた?

「…っすっごい良い子だわ!弟にしたいくらい~!」

喜ぶ由香利を尻目に、その言葉に弟達の反応は様々だ。隆一と慎二は、姉を喜ばせた上谷に好感を抱き。三弥と四毅は同じ年だと知り『弟にしたい』という言葉に、上谷へ殺意を抱いた。そんな殺伐とした空気に、空気の読めない両親からは爆弾が投下されたのである。 

「そうだ、今から温泉に行きましょう!」 

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