13 / 33
のんびり土曜日?
しおりを挟む明くる朝、隆一は部活の為早々に出て行ったが、双子はまだ眠りの中である。
…りゅうは部活かぁ。
ベッドから起き上がった由香里は、ぼうっとする頭をガシガシと掻くと着替え始めた。本来の由香里の性格上は家ではパジャマで居たい性格だが、黙っていても容姿の良い弟を持つと気になったりするのだ。
例えば自分も釣り合う容姿だったり、邪険に扱われるのなら良いのだが…。自他共に認めるシスコンらしいし?
更に、滅多に帰って来ない両親には太鼓判を押されている。
「「由香里ちゃんが居れば、隆君と慎ちゃんとしー君とみっくんはグレないから助かるよ(わ)!」」
…いや、お前ら親の仕事しろ!まあ…もう慣れたけど。というか、今さら親の言うこと聞かないだろうな。この前、父さんが四毅に話し掛けてたら普通に舌打ちしてたし。…うん。手遅れだね。
髪を整え部屋着に着替えリビングに降りると、鼻腔を擽る匂い。
…おお、流石慎ちゃん。
器用で料理上手な慎二を内心褒めると、ソファーに腰掛けた。この弟がモテない筈は無い。
「おはよー。」
「…あ、おはよ~姉さん!今日はパスタで良い?」
「うん、お願い~。」
まったりと返事を返し、テレビを点ける。
ほんと料理出来る男ってポイント高いよねぇ。あー、でも慎男子校か。残念だよね。
どうでも良い事を考えつつ、何とは無しにニュースを流して置く。
「姉さん~、で?何処行く?」
ん?
「何が?」
脈絡の無い慎二の言葉に、きょとんと首を傾げる。それを聞いた慎二の方は慌てて駆け寄って来た。
「昨日言ったじゃん?何処か行こうって!」
あー…うん。そんな気もする様な?何か面倒臭くなってきたな…。
と言っても、行きたいオーラ溢れる弟にそうは言えない。
「じゃあ、レンタルショップでも行く?」
適当にDVDでも借りよっか…。
軽い口調でそう言えば、パアッと慎二の顔が嬉しさ満点で輝く。
「うん、行こ行こ!」
嬉しそうな弟に、思わず由香里の口元も綻ぶ。
やっぱり可愛いなぁ。
性格の為、普段家族内で弄られ役の慎二だが、根っから素直で明るい慎二に由香里も助けられてきたのだ。
「じゃ、二人が起きる前に行っちゃおっか?」
ニコッと頷く慎二に、由香里も頷き返し部屋に着替えに戻った。有る物で簡単に着替え、慎二と玄関を出る。
…あ~。もうノーコメントだね、うん。
隣を歩く軽くセットした髪に、普段着だと言うのに何処のモデルかと聞きたくなる弟をチラ見する。
別に良いさ。…DVD借りるだけ借りるだけ、よし自己暗示。
自然と繋がれる手を振り払うのも諦め、最後には笑って歩き続ける。その時、進行方向を塞ぐ人物に気付く。
ん?中学生くらいかな?凄い…紫メッシュに目付き悪。…四毅タイプだな。
呑気に考え事をしていると、その少年が此方に目を向け距離を縮めて来る。
「…おい、ここら辺に有川四毅って奴の家があるらしいが、何処だか知ってるか?」
……………うん。
今にも射殺さんばかりの怒気の籠る視線に、由香里は表情に出さないよう小さく嘆息した。
何したって言うの、あの子は…!
面倒臭い為、無言を貫き慎二に任せる事に決めた。空気を察した慎二は目で頷くと、見事な外向けの笑みを浮かべる。
「さあ、名前ぐらいは聞いた事あるけど家まではなぁ…何か用なの?」
…よしよし、上手い慎ちゃん。
それを聞いた少年は更に剣呑な雰囲気を出す。
「…あの野郎、一回締めとかねーと気が済まねぇ…。見つけ次第ぶち殺す…!」
わーい…こえええ。今どきの中学生って嫌ですね。アハハー。
相手の言葉にドン引きしつつ、目を合わせないよう無言を貫く。
「そっかあ、じゃあ俺達はこれで。」
爽やかに慎二が告げれば、少年は苛立たしそうに舌打ちをし離れて行く。
…あ~良かった。
慎二と顔を見合せホッとした時、耳に響く怒声が聞こえた。
「…見つけたぞ!金城ーーーーー!覚悟しろてめええええ!」
遠くから勢い良く聞こえる集団の足音に思考が止まる。あっという間に足音は目の前まで近付いている。
え?関係無いよね?関係ないはず。
と思っている間に、少年と一緒に囲まれた由香里と慎二。
「ヤバい…。」
ポソッと呟く慎二に、由香里も身を固くしたのだった。
0
お気に入りに追加
1,335
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる