私は平凡周りは非凡

由紀

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慎二の代表挨拶side慎二

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…あ~だるい。

姉と兄にメールを送ると、携帯を閉じる。
生徒会長になったと言ってもほとんど強制であり、自分はあまり乗り気では無かったのだ。

…でも、姉さんに頑張れって言われたしなぁ…。

軽くため息を吐くと、周囲から妙な視線が向けられた。
慎二の通うのは有名な私立《男子》高校。幼稚舎から大学部まであり、全寮制の超名門校だ。
それだけなら良かった。価値観の違いなら、空気の読める慎二には合わせる自信が合ったからだ。

しかし、問題は違った。途中入学の生徒は特に問題は無かったのだが、根っからこの学園の持ち上がり組は驚くべき性癖があったのだ。
女子が居ない為か、慎二はなんとなく男子しかいない特殊なこの空気を察してしまった。

自分の容姿を自覚していた慎二は、入学して直ぐに理解した。そう、自分の信望者ファンが居る事を…。
ただ自分だけでは無く他の生徒会メンバーにも居り、容姿の良い生徒にも居たのだが。
その上、生徒会にはそれぞれのメンバーにファンクラブもあるらしい。

…え?俺男だよ?皆も男だよね?

それでも拒みきれないのは、生徒会には多くの特権があるというメリットだ。授業免除、学生食堂半額、休日の帰省自由諸々…。 
慎二は涙を呑んで、生徒会を1年間やりきった。
元々は真面目な性質なので仕事の評価は高く、それが功を奏してしまい生徒会長に抜擢されてしまったのだが…。

泣くな、俺…。内申書が良くなるじゃん。ガンバレ俺!土日は姉さんに会えるし、大丈夫生きろ!

胸中の葛藤を顔には出さず、司会に促されステージに上がる。生徒会メンバーの登場に、館内はアイドルのコンサート並の歓声に包まれた。 

…姉さん、帰りたいよ~~~。

勿論そんな思い等知る筈の無い司会は、うっとりと生徒会メンバーを眺めながら進行を進めていく。

「…では、まずは生徒会庶務の方から順番に挨拶をお願いします。」

その言葉に並ぶ椅子の端に腰掛ける1年生が立ち上がり、マイクを受け取ると中央に移動する。

「…庶務をさせて頂きます。1年A組の上谷 次郎です。会長と皆さんのお役に立てる様に頑張ります。」 

館内に好意的な拍手が起こる。慎二も、真面目そうな彼のコメントに好感を持った。会長、と敢えて口にするのは、慎二の人気を知っての事だろう。思わず微笑を向けると、上谷は気付いたものの何故か戸惑い目を逸らす。

…あれ?嫌がられたかな?
不思議そうに首を傾げていると、またマイクが次に渡る。

「書記の1年A組 白鷺 充。有川会長様の手となり足となり、お支えお守り申し上げます。」

校内でも入学早々、その美しい容姿で名が知られる1年生の台詞に、妙などよめきと黄色い悲鳴が起きた。

…は?お支えお守り?なんだそれ!?

なんとなく背筋にうすら寒いものが走る慎二は、自分を熱っぽく見つめる白鷺を敢えて視界に入れず無心で壁を見ておく。

「…2年B組 本庄 奏だ。元会計で、今年も会計になった。よろしく頼む。」

彼の簡潔な自己紹介に、好意的な大きな拍手が沸いた。慎二と目が合うと、本庄は小さく頷く。
本庄は慎二と同じく中等部からの入学であり、一種一般の常識とは離れた校内では珍しく常識人なのだ。因みに他校には彼女も居る様らしく良く話しもしている。

…良かったよ~!本庄も一緒かぁ。

そう思ってほっと安堵する間にマイクが次に渡ると、先ほどよりも更に大きな黄色い悲鳴が響き渡った。

「2年A組 天王寺 廉斗だ。慎二の副会長になった。言って置くが、慎二の言う事に逆らえば容赦しねぇからな。」

わぁぁぁ!きゃー、素敵ー!
応援しますうーー!きゃあああ!

…何故喜ぶ!?応援します?…うん、あんまり深く考えたくない。

そっと涙をこらえ、姿勢を正しマイクを握る。館内が一瞬で静まり、此方を期待に満ちた視線が集まるのを感じる。

「…2年B組、生徒会長の有川 慎二です。1年間という短い間ですが、皆で過ごしやすい学園を築いていきましょう。
特に外部からの新入生は、分からない事がありましたら何でも聞いて下さいね。」

にこりと笑みを浮かべて頭を下げ、よく通る声で言い終えると館内から割れんばかりの拍手が起こった。

…終わったぁ!…これから頑張らないとなぁ。

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