私は平凡周りは非凡

由紀

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新高校生活

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それから三日後、由香利は真新しい高校の制服を着て、家の前に立っていた。入学式は終わっているので、両親は日本に居ないがどうでも良い。

三弥と四毅の登校を見送り、同じ電車に乗る隆一と足を進めた。歩いている途中、二人の携帯が同時に鳴りピロリンと軽快な着信音が響く。
初めに開いた携帯の画面を見た隆一が、由香利に意味ありげな視線を向ける。

「…慎からだ。」

隆一の反応を不思議に思い首を傾げながら、由香利も自分の携帯を開く。
何だろう?ちょっと怖いな。

『おっはよ~! やっぱり生徒会長になっちゃったよ!!今日、早速代表挨拶~。』

その文面を見て思わず脱力しそうになる。慎二のテンションの高い口調が思い浮かびそうな文面を読み終えて、思わず隆一と顔を見合わせた。

「…あの子、会長出来るの?」
「…果てしなく不安だな。」

疲れた様な重い息を吐く隆一に、同意する様に苦笑する。
慎二の話しをしている内に駅に着いたので電車に乗り込む。背が高く男前な隆一の側にいる為、スムーズに電車に乗り込めた由香里だった。

…実は心配だったんだよね。この電車って、痴漢とかかつあげあるらしいし…。

家の外では口数の少なくなる隆一の為、近付こうとするミーハーな女子も居ない。途中降りる駅に着くと、乗り過ごさない様に開くドアから素早く出て行く。
ドアから出る間際、隆一の低い声がさりげなく耳に届いた。

「…気をつけてな。」

その声にすぐに振り向き、笑みを向けて頷いたのである。

…良い子だなぁ。
小さく手を振る由香利に頷き返して来る隆一を見送り、駅を後にした。

…はぁ。緊張する。結構大きい所だなあ。

駅から徒歩10分程度の学校に着くと、緊張しながら早速職員室に向かう。初めに教科書を取りに来る様に言われたからだ。

ああ…帰りたい帰りたい帰りたい。
一度ノックをしてから、解けない緊張と共に職員室のドアを開けた。

「…失礼します。」

そう言いながら職員室に入ると、此方に視線を向けてきた一番手前に居る女性教師に声を掛ける。

「あの、1年B組の有川 由香利ですが、先生は…?」

おずおずと伺うと、すぐに教師は頷いて目線を離れた場所に向けた。

「…有川さんね。桐島先生~!生徒さんですよ?」

視線の先に居た教師はその声に気付くと、恐ろしく凄い勢いでやって来た。

「…おお!お前が有川か!もう身体は大丈夫か?…俺は担任の桐島 徹夫だ、よろしくな!そうだ!教科書を渡さないとな!」

息継ぎ無しで言い終えた桐島に、由香利は相槌すら打てずに固まってしまう。

…熱血系?服装もジャージだし。…苦手かも。

桐島は由香利の様子に気付かず、机から大量の教科書を持って来て説明を始めていた。 妙に長い説明を半分受け流しながら聞いていると、職員室に1人の生徒が入って来た。入って来た生徒は、桐島の話をげんなり聞いていた由香利の後ろで足を止める。
どうやら同じクラスだろうか?

「…桐島先生、部活と委員会の名簿が出来たので、お願いします。」

妙に耳に残る良い声に由香利が振り向くと、生徒はにこりと微笑んだ。色素の薄いさらりと揺れる髪に、100人が100人は振り返るだろう容姿に知らず口を開けたまま視線を奪われる。

…超カッコ良い!!

その生徒に対し、一度説明を止めた桐島は笑顔で名簿を受け取る。

「…おお、ありがとう一ノ瀬!…そうだ、ついでに有川の教科書を一緒に運んでやってくれないか?」

…へ?
教師の突然の頼みにも関わらず、一ノ瀬は教科書と由香利を見ると躊躇無く頷く。

「分かりました。」

戸惑う由香利をそのままに、一ノ瀬は教科書を桐島から受け取ると職員室を出て行く。由香利も慌ててそれを追う。

「…待って!ゴメン、半分持つから。」

一ノ瀬は重さを感じさせない綺麗な姿勢のまま、柔らかい笑みを浮かべる。

「大丈夫だよ、男が持つのは当たり前だし。」

…更に性格も良いのか!そんな男居るんだ。

「…それより、俺は一ノ瀬 千尋。学級委員なんだ、よろしく。」

ニコニコと感じの良い一ノ瀬に、由香利もようやく笑顔で答える事が出来た。

「あ、私は有川 由香利。本当にありがとう、一ノ瀬君。」
「どういたしまして。…俺こそこれから色々助けて貰うと思うし?」

…うん?学校生活でって事かな?

「…そっかな?というか、私何の委員会だろ…?」
「…聞いてないの?」

不思議そうにキョトンとする一ノ瀬に、すぐに頷き聞いてみる。

「…私がどの委員会だか知ってる?」
「うん。俺と一緒だよ?」
「……………は?」

由香利は一瞬言葉の意味を理解しそこねた。いや、理解したくなかったのだ。一ノ瀬は邪気の無い笑顔で続ける。

「だから、俺と同じで学級委員だよ。頑張ろうね?」

マジかぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!


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