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遭遇
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俺がアスカと出会ったのは、ほんの三日前の出来事である。俺は、寝坊をして、通学を急いでいた。途中、近道をする為に大通りから、右側にある裏路地へ続く細くて薄暗い路地へと身を進ませた時である。
丁度、路地の真中あたりに来た時、何が俺の頭上の方から、ズドンっと落ちて来た。いや、落ちてきたと言うよりも何かが着地した。
「なっ!!」
落ちてきたのは、スーツ姿の男だった。その男は、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。一瞬、もう死んでしまったのだろうか。と、そんな考えが俺の脳裏の片隅にあった。男の側に近寄ってみる。
飛び降り自殺ってわけでは、なさそうだ。見た感じでは、出血は、していない。打ち所が悪くて気絶しているだけか。
それとも……。
「あの? 大丈夫ですか?」
俺は、少し大きな声で聞いてみた。反応があるのか、少し心配だったが男は、ムクリと顔だけを上げて俺を見据えた。
「あの……」
と、俺は、もう一度声を掛けてみようとしたが、男は平然とその場で立ち上がり辺りを見渡した。まるで、俺の存在を認識していない様子でその男は、周りを警戒している様子だった。そして、再びズドンと何が落ちてきた。
「えっ!?」
落ちてきたのは、見たことのない様ような…16…7歳の美しい少女だった。何処の学校の制服かわらないようなセーラー服に身を包んだ少女は、冷たい視線で俺の姿を見据えた。
俺は、空を見上げた。何も無かった。在るのは、空とビルの屋上。ビルの小さな窓からでは、人が飛び降りるなんて出来ない。出来るのは、ビルの屋上からだ。
10階以上あるビルの屋上から…飛び降りて無事でいる人間なんて居ない。なのに少女とサラリーマン風の男は、俺の頭上から着地した。俺は、見たんだ。夢…幻の話では、なく。それは、現実に起きた出来事だ。
男は、その少女の姿を見たとたんに身構えた。そして、なんの戸惑いも見せずにその少女に殴りかかった。だが少女は、冷静にその男の左ストレートをかわすと、その男の左腕を掴み引き倒した。そのままの状態から、少女は、右足を上げて男の頭を叩き潰す勢いで振り下ろす。
ガツンと鈍い音がこだまする。少女の振り下ろしたた足は、黒いアスファルトに潜り込んでいた。なんと言う衝撃だろうか。そんなものをまともにくらったら、人間の頭蓋骨なんて卵に様に簡単に割れそうだ。
間一髪で少女の一撃を避けた男は、素早く飛び起きると俺の方へ向かって来た。咄嗟の事で判断が遅れた俺は、男に腕を捕まれた。
「なっ……」
男は、俺の腕を掴んだまま少女の方へ向き直る。凄い力だ。俺が振り解こうと腕を引っ張ったがビクともしない。少女がユックリと男と俺の方へ近付いてくる。
俺は、少女の前に押し出される様な格好で男に後ろ首を掴まれていた。丁度、少女と俺との距離が1メートルぐらいになった時、男は、俺の身体を力強く突き出した。
「グッ……」
俺の身体は、少女の方へ投げ出された。驚く間もなく、俺の身体は、少女によって受け止められていた。気がつけば、あの男の姿はなく、その場には、俺とその少女の二人だけの姿が存在していた。
あの男は、少女が俺の身体を受け止めてる間に上手く逃げ出したようだ。そして、ようやく突然の出来事に麻痺していた俺の思考が活動を始めていた。
いったい何だったのだろうか。この少女とあの男の戦いは、俺の目から見れば、非現実的に映った。まるで夢の中での出来事のようだ。とても信じられない。
「あの……こんにちは」
俺は、目の前に居る少女にそう間抜けな言葉を掛けた。どんな言葉を掛けたらいいのか、悩んだ末の言葉だったが、声にしてようやくその間抜けさを認識していた。
「コン……ニチハ……? こん……にちは」
少女は、何か理解しがたい言葉を聴いた様子で首を傾げそう言った。そして、俺は、冷静になった頭で少女の姿を再び眺めた。見た目は、普通の女子高生といった感じだ。
しかし、少し違って見えたのは、その少女がとてつもない美少女だって事。普段街中を探しても…見つける事ができるかどうか…それほど、何か違和感のあるほど、整った顔立ちをしている。
「あのさ、君…上から落ちてきたよね?」
先程から、俺の頭の中で渦巻いていた疑問を少女にぶつけてみた。少女は、何て答えるのだろうか。俺は、期待と興味で少女の言葉を待った。
「この国の言語は、理解した」
「はぁ?」
質問の答えにしては、的外れな言葉だったので俺は、そんな声を上げた。
「ああ、お前の質問に対する答えは、その通りだと言っておこう」
そしてもう一度、口を開いた少女のその言葉は、俺の質問に対する答えだった。その言葉と見下したようなでかい態度に俺は、正直良い気分ではなかった。
ただ、何の感情も持ち合わせて居ないような少女の冷たい視線に俺は、釘付けになっていた。でも、少女の回答が…少女自身が人でない事を俺は、理解できた。
上から、落ちてきた。つまり、屋上から飛び降りて五体満足に立っている少女は、人ではないと言う事だ。それにあの男との戦闘は、何だったのだろうか。俺は、これ以上この少女と係わりを持ちたくなかった。
人でないにしろ、人であったとしても…これ以上係わりをもてば、行掛りじょう引き換えない事件に巻き込まれそうな予感があったからだ。
「そうか。それじゃ、これで……」
俺は、そう言って少女の横を通り抜けようとした。
「待て!! お前に聞きたい事がある」
少女は、直ぐ横を通り抜けようとした俺の右腕を掴んだ。
「え?」
俺は、驚いた。これ以上係わりたくなかったのに、少女は、俺の腕を掴み引き止めたのだ
丁度、路地の真中あたりに来た時、何が俺の頭上の方から、ズドンっと落ちて来た。いや、落ちてきたと言うよりも何かが着地した。
「なっ!!」
落ちてきたのは、スーツ姿の男だった。その男は、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。一瞬、もう死んでしまったのだろうか。と、そんな考えが俺の脳裏の片隅にあった。男の側に近寄ってみる。
飛び降り自殺ってわけでは、なさそうだ。見た感じでは、出血は、していない。打ち所が悪くて気絶しているだけか。
それとも……。
「あの? 大丈夫ですか?」
俺は、少し大きな声で聞いてみた。反応があるのか、少し心配だったが男は、ムクリと顔だけを上げて俺を見据えた。
「あの……」
と、俺は、もう一度声を掛けてみようとしたが、男は平然とその場で立ち上がり辺りを見渡した。まるで、俺の存在を認識していない様子でその男は、周りを警戒している様子だった。そして、再びズドンと何が落ちてきた。
「えっ!?」
落ちてきたのは、見たことのない様ような…16…7歳の美しい少女だった。何処の学校の制服かわらないようなセーラー服に身を包んだ少女は、冷たい視線で俺の姿を見据えた。
俺は、空を見上げた。何も無かった。在るのは、空とビルの屋上。ビルの小さな窓からでは、人が飛び降りるなんて出来ない。出来るのは、ビルの屋上からだ。
10階以上あるビルの屋上から…飛び降りて無事でいる人間なんて居ない。なのに少女とサラリーマン風の男は、俺の頭上から着地した。俺は、見たんだ。夢…幻の話では、なく。それは、現実に起きた出来事だ。
男は、その少女の姿を見たとたんに身構えた。そして、なんの戸惑いも見せずにその少女に殴りかかった。だが少女は、冷静にその男の左ストレートをかわすと、その男の左腕を掴み引き倒した。そのままの状態から、少女は、右足を上げて男の頭を叩き潰す勢いで振り下ろす。
ガツンと鈍い音がこだまする。少女の振り下ろしたた足は、黒いアスファルトに潜り込んでいた。なんと言う衝撃だろうか。そんなものをまともにくらったら、人間の頭蓋骨なんて卵に様に簡単に割れそうだ。
間一髪で少女の一撃を避けた男は、素早く飛び起きると俺の方へ向かって来た。咄嗟の事で判断が遅れた俺は、男に腕を捕まれた。
「なっ……」
男は、俺の腕を掴んだまま少女の方へ向き直る。凄い力だ。俺が振り解こうと腕を引っ張ったがビクともしない。少女がユックリと男と俺の方へ近付いてくる。
俺は、少女の前に押し出される様な格好で男に後ろ首を掴まれていた。丁度、少女と俺との距離が1メートルぐらいになった時、男は、俺の身体を力強く突き出した。
「グッ……」
俺の身体は、少女の方へ投げ出された。驚く間もなく、俺の身体は、少女によって受け止められていた。気がつけば、あの男の姿はなく、その場には、俺とその少女の二人だけの姿が存在していた。
あの男は、少女が俺の身体を受け止めてる間に上手く逃げ出したようだ。そして、ようやく突然の出来事に麻痺していた俺の思考が活動を始めていた。
いったい何だったのだろうか。この少女とあの男の戦いは、俺の目から見れば、非現実的に映った。まるで夢の中での出来事のようだ。とても信じられない。
「あの……こんにちは」
俺は、目の前に居る少女にそう間抜けな言葉を掛けた。どんな言葉を掛けたらいいのか、悩んだ末の言葉だったが、声にしてようやくその間抜けさを認識していた。
「コン……ニチハ……? こん……にちは」
少女は、何か理解しがたい言葉を聴いた様子で首を傾げそう言った。そして、俺は、冷静になった頭で少女の姿を再び眺めた。見た目は、普通の女子高生といった感じだ。
しかし、少し違って見えたのは、その少女がとてつもない美少女だって事。普段街中を探しても…見つける事ができるかどうか…それほど、何か違和感のあるほど、整った顔立ちをしている。
「あのさ、君…上から落ちてきたよね?」
先程から、俺の頭の中で渦巻いていた疑問を少女にぶつけてみた。少女は、何て答えるのだろうか。俺は、期待と興味で少女の言葉を待った。
「この国の言語は、理解した」
「はぁ?」
質問の答えにしては、的外れな言葉だったので俺は、そんな声を上げた。
「ああ、お前の質問に対する答えは、その通りだと言っておこう」
そしてもう一度、口を開いた少女のその言葉は、俺の質問に対する答えだった。その言葉と見下したようなでかい態度に俺は、正直良い気分ではなかった。
ただ、何の感情も持ち合わせて居ないような少女の冷たい視線に俺は、釘付けになっていた。でも、少女の回答が…少女自身が人でない事を俺は、理解できた。
上から、落ちてきた。つまり、屋上から飛び降りて五体満足に立っている少女は、人ではないと言う事だ。それにあの男との戦闘は、何だったのだろうか。俺は、これ以上この少女と係わりを持ちたくなかった。
人でないにしろ、人であったとしても…これ以上係わりをもてば、行掛りじょう引き換えない事件に巻き込まれそうな予感があったからだ。
「そうか。それじゃ、これで……」
俺は、そう言って少女の横を通り抜けようとした。
「待て!! お前に聞きたい事がある」
少女は、直ぐ横を通り抜けようとした俺の右腕を掴んだ。
「え?」
俺は、驚いた。これ以上係わりたくなかったのに、少女は、俺の腕を掴み引き止めたのだ
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