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第6話:失くしたモノ
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士郎は、大切な物を失くしてしまった。だが、何を無くしてしまったのか思い出せないでいた。それは、まるで心にポッカリと大きな穴が開いてしまった様な喪失感だった。
「でも……いったい何を失くしてしまったのだろう」
思い出せない。
何故?
さっきからそんな問いかけを自分の中でずっと続けていた。思い出せないのは、気持ち悪い。
だけど。
士郎は、ふっとため息を吐いて、辺りを見渡してみた。
「あれ?」
士郎は、少し戸惑った。考え事をして歩いているうちに駅前の商店街まで来ていたのだ。いつの間にか商店街のアーケードの中心を歩いていた。今日は、どうしたのだろう。今日は、何が遭った?
今日は、学校で……午前中は、寝ていた。午後は、また心臓の発作が起きた。そう言えば、朝比奈薫が保健室に居た。その後は、……どうした?
記憶が無い。
「あっ……チョットいいかな?」
っとそんな声がアーケードを抜けようとした士郎を呼び止めた。士郎を呼び止めたのは、二十歳ぐらいの青年だった。
「うっ!」
士郎は、驚いた。それもそうだ。その青年は、この世の者と思えぬほどの美青年だったからだ。いったい、何処の雑誌から抜け出てきたのかっと思うほどだった。服のセンスも良いし、ファッションモデルでもやっているのでは、
ないかと思うほどだった。
「君に訊ねたい事があるんだ」
美青年は、そう言って士郎の顔を見据えた。なんだろうって。最初は、士郎も軽い気持ちでそう思っていた。
「あっ、いいですよ」
士郎がそう言うと美青年は、少し困ったような顔をした。
「いや、そうじゃなくてね。ここじゃなんだからさ」
美青年は、そう言って顔をクイっと商店街の裏路地の方へ向けた。なんだか、士郎は、ヤバイ雰囲気を感じた。裏路地なんて、二人で話をする所では、かなり危険地帯だと言っていい。心臓の持病持ちの士郎には、どう足掻いても逃げ切れる自信がなかった。裏路地まで来ると美青年は、士郎から少し離れた所で口を開いた。
「君は、気がついてないのかな?」
「は?」
イキナリで予想しなかった問いかけに士郎は、そんな間の抜けた声を上げた。
「いや、まずは……自己紹介からだよな。僕の名前は、犬上一人……ひとりと書いてかずとって読むんだ」
「はあ、士郎は辰巳……士郎」
なんだかわけが解らないまま自己紹介をしたところで犬上一人は、馴れ馴れしく士郎の名前を呼んだ。
「士郎! 君は、妖魔に憑かれてるね?」
「はぁぁぁ?」
またまた犬上一人のとんでもない問いかけに士郎は、思わずそんな声を出した。
「身に覚えは、ないのかい? これほど強力な妖気が君の身体に染み着いていると言うのに?」
「妖気って? 解らないな……どうしてそんな事を言うんだ?」
誰だってそんな事を言われたら、驚くし言った人物を妖しいって思うはずだ。
と、士郎は、顔を険しくする。しかし、士郎にとって妖魔や妖気って言うのは、幼い頃から身近に感じていた。なのでそんなに驚くようなものでもなかった。なんでも士郎の家系は、妖魔に襲われやすいのだ言うのだから。
「でも……いったい何を失くしてしまったのだろう」
思い出せない。
何故?
さっきからそんな問いかけを自分の中でずっと続けていた。思い出せないのは、気持ち悪い。
だけど。
士郎は、ふっとため息を吐いて、辺りを見渡してみた。
「あれ?」
士郎は、少し戸惑った。考え事をして歩いているうちに駅前の商店街まで来ていたのだ。いつの間にか商店街のアーケードの中心を歩いていた。今日は、どうしたのだろう。今日は、何が遭った?
今日は、学校で……午前中は、寝ていた。午後は、また心臓の発作が起きた。そう言えば、朝比奈薫が保健室に居た。その後は、……どうした?
記憶が無い。
「あっ……チョットいいかな?」
っとそんな声がアーケードを抜けようとした士郎を呼び止めた。士郎を呼び止めたのは、二十歳ぐらいの青年だった。
「うっ!」
士郎は、驚いた。それもそうだ。その青年は、この世の者と思えぬほどの美青年だったからだ。いったい、何処の雑誌から抜け出てきたのかっと思うほどだった。服のセンスも良いし、ファッションモデルでもやっているのでは、
ないかと思うほどだった。
「君に訊ねたい事があるんだ」
美青年は、そう言って士郎の顔を見据えた。なんだろうって。最初は、士郎も軽い気持ちでそう思っていた。
「あっ、いいですよ」
士郎がそう言うと美青年は、少し困ったような顔をした。
「いや、そうじゃなくてね。ここじゃなんだからさ」
美青年は、そう言って顔をクイっと商店街の裏路地の方へ向けた。なんだか、士郎は、ヤバイ雰囲気を感じた。裏路地なんて、二人で話をする所では、かなり危険地帯だと言っていい。心臓の持病持ちの士郎には、どう足掻いても逃げ切れる自信がなかった。裏路地まで来ると美青年は、士郎から少し離れた所で口を開いた。
「君は、気がついてないのかな?」
「は?」
イキナリで予想しなかった問いかけに士郎は、そんな間の抜けた声を上げた。
「いや、まずは……自己紹介からだよな。僕の名前は、犬上一人……ひとりと書いてかずとって読むんだ」
「はあ、士郎は辰巳……士郎」
なんだかわけが解らないまま自己紹介をしたところで犬上一人は、馴れ馴れしく士郎の名前を呼んだ。
「士郎! 君は、妖魔に憑かれてるね?」
「はぁぁぁ?」
またまた犬上一人のとんでもない問いかけに士郎は、思わずそんな声を出した。
「身に覚えは、ないのかい? これほど強力な妖気が君の身体に染み着いていると言うのに?」
「妖気って? 解らないな……どうしてそんな事を言うんだ?」
誰だってそんな事を言われたら、驚くし言った人物を妖しいって思うはずだ。
と、士郎は、顔を険しくする。しかし、士郎にとって妖魔や妖気って言うのは、幼い頃から身近に感じていた。なのでそんなに驚くようなものでもなかった。なんでも士郎の家系は、妖魔に襲われやすいのだ言うのだから。
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