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【新妻編】
123 夜伽もお役目
しおりを挟む――徳川将軍といえば、側室でしょぉ!?
家光の声が上擦り、恐る恐る訊ねてみると……、
「……将軍だとか、この際どうでもいい。お前は今日から俺のものになったんだ。俺以外のお手付きになるのは容認できない」
家光が後退りしているのに気付いた孝は彼女の手首を掴み縫い留める。
「っ……、ちょ、ちょっと……孝。あんたそれ問題発言……」
――お手付きって逆でしょうが!
心ではそう思ったが口にしたところで、孝には通じなさそうだと家光は口を噤んだ。
「……お前が誰かに抱かれるくらいなら、お前が抱かれないような身体にすればいいってことだろ……?」
「何それ どういう意味……って、手を放し(な、なんか、やばくない……!?)」
孝は俯きぶつぶつと告げる。
孝から不穏な空気を感じ取り家光は手を引っ込めようとするが、次の瞬間。
「あっ……!」
どさり。
家光の身体は布団に組み敷かれていた。
「っ、孝っ! 嫌だって言ったでしょ!」
「政なんだろ……?」
「っ……?」
孝は家光の手首をいとも容易く片手で捕捉し静かに問う。
家光が抵抗しても孝の手はビクともしなかった。
「……“この婚礼は政の一環”……だったっけ……? 政だというのなら夜伽の役目を果たせ」
「っ……やめっ……!」
するするする。
寝間着の帯を引き、その帯を家光の腕に巻くと孝は家光の肌を暴いていく。
「孝っ! イヤだっ!!」
「……くそっ……! 俺だってこんなことしたくねえんだよっ!!」
寝間着を捲ると家光の柔肌が直ぐに現れ、今朝から入念に手入れされた肌は薄暗い闇の中で青白く輝いていた。
柔らかそうな豊満な双丘が家光の抵抗により揺れる。
その頂には色濃い小さな実が二つ。
下へ下へと視線を移せば、括れた腰に肌中央には形の良い臍。
その下には薄く整えられた枝垂れ柳、そしてむっちりとした白い太腿が続く。足先の小さな指も愛らしく、全てが美しい。
――綺麗過ぎんだろ……!
何でこんなことになってんだよ。
俺だって本当はもっとゆっくりしたかったのに……!
家光の裸体を目の当たりにし、孝は憤りながらも息を呑む。
「っ、じゃあしなきゃいいじゃんっ!!」
「嫌だっ!」
家光は尚も抵抗するが、孝はそれも無視して家光の腕を頭上に持って来させた。
「こっちが嫌だっつーの……! …………っぁ!」
ぢゅぅぅ……!
孝が無遠慮に家光の双丘に実る小さな実に吸い付く。
吸い付かれた小さな実の芯にじくっ、と今まで感じたことの無い感覚が襲った。
「ぅぁっん!(な、なにっ……! おっぱい、吸ってるのっ!?)」
「…………俺だって、こんなことしたくないんだ。許せよ」
孝に強く吸われ、家光の身体が揺れる。
のも束の間、
「ぃっ!」
今度は吸い付かれた実とは違う隣の実が孝の親指と人差し指に挟まれ摘ままれた。
乱暴に引っ張られ、家光は痛みに顔を歪める。
「いったぃ! 痛いっ! 痛いってば!!」
――やだ、セックスって普通もっと気持ちいいものでしょ!? そんなに引っ張ったら千切れちゃうよっ!!
あまりの痛みに家光の瞳が涙で滲んでいく。
「……お前が俺以外……いや……、もう俺でも駄目か。誰にも抱かれたくならないようにする。そうすれば、お前は側室と寝ないで済むだろ?」
小さな実に歯を立てられ引っ張られ、外れると双丘が歪に揺れてから制止する。孝は据わった瞳で家光を見下ろしていた。
「ぃっ、ふざけないでよ! っ、まさ……正勝っ! 正勝っ、助けてっ!」
家光が正勝の居る方へを顔を向け、正勝を呼ぶ。
ところが衝立の向こう側からは何の反応もなかった。
「正勝……? ……正勝って、アレか……。お前の世話をしているとかいう小姓の……」
「っ、この向こうに御添寝役で居るのよ……! 正勝なら助けてくれるんだから!」
家光は孝を睨み付けてから、正勝の居る側の衝立の方に視線を移す。
正勝なら助けてくれる。
そう信じて待っているのだが、衝立の向こう側からは未だ反応がなかった。
――まさか寝てる……!? 正勝……!?
家光は衝立をじっと見るが、衣擦れの音も聞こえない。
正勝に限って主君の危機に乱入しないなんてあり得ないと思っていたのだが、まさか本当に眠ってしまったのだろうかと家光は不安になった。
すると、家光に馬乗りになっている孝が不気味に口角を上げる。
「ふ…………残念だったな。家光」
「……は?」
――どういうこと……?
嫌な予感がする。
きつく縛り上げられた手首がじくじくと痛んだ。
「御添寝役が将軍と正室の間に乱入することはないぞ?」
「っ! うそっ!?」
孝が複雑そうな顔で口を歪ませ、家光の首筋に唇を添わせると「ンッ!」と艶のある赤い唇から甘い声が零れ落ちた。
耳元で、孝が熱い吐息を吐き出しながら囁く。
「はぁ……側室ならまだしも……、俺は正室だぞ? 今回は特例で御伽坊主と御添寝役が入るのを許容したが、ここでそいつが乱入したらどうなると思う?」
云い終えると孝は家光の耳裏に舌を這わせ始めた。
ねと、れろぉ……。と孝の舌が耳裏から家光の首筋を這いながら、鎖骨辺りまで来ると、
ぢゅうっ……カリッ。
「いっっ!!(痛いことばっかりしてっ!! なんだこいつドSか!?)」
強く吸い付かれた後で鎖骨に噛みつかれてしまった。
その間も双丘の小さな実は孝の指で摘ままれ、きゅっきゅっと引っ張られていたが、最初よりもその手は優しく感じられる。
「っっ……ぃ……」
家光も規則的な刺激に痛みだけではない感覚を僅かながら感じ始めていたが、瞳には涙が滲んだままだった。
「…………はぁ……」
――痛そうだな……悪いな、家光。
家光には嫌悪感を与えなければならない。感じてもらっては困る。
男に対する恐怖心を植え付け、二度と自分以外の男と寝ようなんて思わないようにしなければ。
もう二度と抱けないなら尚のこと。
孝は再度家光の首筋に顔を近付け、耳に噛みつく。
噛んだあとで耳の中に舌を差し入れ、ぺちゃぺちゃ、ぴちゃ、とわざと水音を立ててやった。
「っぅ……! ……どっ、うなるっていうの……?(擽ったいっ!)」
――あぁ、もうやだ、お酒効いてないじゃん……! このままじゃ……!
家光は何とか正気を保ちながら孝に訊ねる。
孝はちゅっ、ちゅっ、ぴちゃ……と尚も水音を立てながら冷ややかな瞳で薄っすらと口を歪ませ、家光を見下ろした。
「ちゅ…………そいつの出世が断たれる」
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