逆転!? 大奥喪女びっち

みく

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【新妻編】

131 酔った勢い

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「ふっ……ゃ……っ……」


 ちゅっ、ちゅく……ぴちゃっ。小さな水音が二人の間から弾け、孝の舌は家光の逃げ越しの舌を絡め取っていく。
 それでも家光はなんとか逃げようとするのだが、孝のぬるりとした熱いうねりが何度も追って来るので逃れられない。


 ――キスは、ダメ! 私、キスこれに弱いんだって……!


 家光は口付けに弱い。
 口付けさえなければ割と強気で居られるが口付けした途端、何故か抵抗出来なくなるのだ。


「ん……、はぁ……ちゅ……(甘い……)」

「ぅん……、っ……はっ……や、め……っ(気持ちいい……!)」


 孝が半ばぼーっとする頭で薄っすら目を開け窺うと、家光はとろんとした顔で弱々しく孝の着物を掴んでいる。
 何ていじらしいのかと孝は興奮してしまった。


 ――こいつ、可愛いと思っていたが、こんなに可愛かったとは……!


 止めろという割に、着物をぎゅっと掴んで放さない家光に孝の胸が締め付けられる。


「……はっ……家、光……」

「や、だぁ……! こんな……はぅっ……んん……(息が……苦しい……)」


 れろ……ねとぉ……、歯列をなぞられ頬の内側を擦り舌裏を擽られていく。
 二人の唾液が混ざり合い、家光の唇の端から零れ落ちた。
 そして、家光の抵抗が無いとわかると孝は優しい手付きで家光の二つの柔餅の一つにそっと触れた。


 ――何でこいつ、こんなにキスが上手いの……!?


 孝からの優しい愛撫と、淫らな口付けに家光のお腹の奥がきゅんと疼いて、膝をもぞもぞと擦り合わせる。
 この感覚は一体……。


 ちゅっ、


 刹那、小さな水泡が割れた音がすると、漸く孝が離れた。


「……はぁ……、ふぅ……気持ちいい……(堪らず乳房に触れてしまったが大丈夫か……?)」


 孝が家光の様子を窺いながら自分の唇から零れた唾液を手の甲でゆっくりと家光に見せつけるように拭って舌なめずりをすると、瞳をうっとりさせ口角を上げた。
 はぁ、はぁ、はぁ……と孝も息が苦しかったのか、はたまた興奮しているのか獰猛さを孕んだ瞳で家光を眺めながら、肩を上下させ浅い呼吸を繰り返す。


「っ、ふー……ふー……、はぁ……はぁ……」


 ――なんて顔してるのよ……!


 自分を狙う孝の艶めかしい顔に家光の頬が熱くなる。

 この目が嫌いだった。
 自分は確かこいつが大嫌いだったはずなのだが、何だかおかしい。

 家光は困惑し、その視線を逸らせないまま自分も肩を上下させていた。
 そんな自分に呼吸を整えた孝が家光の頬の傍に手を持って来る。


「はぁ…………家光……、触れてもいい……か?」

「っ……、触れてもいいかって……散々触っておいて……」


 孝が頬に触れる直前で手を留め訊ねて来るので、家光は唇を引き結んだ。


「……っ、すまん、お前の顔を見てたら唇は我慢できなかった。けど、身体はお前がいいって言うまでは……」


 家光の言葉に孝は手を引っ込める。
 そして、孝は改めて端座し自分の膝の上にそれぞれ手を置くと、軽く目礼した。


「おっぱい触ってたじゃん……!」

「っ……すまん、我慢できなかった」


 尚も家光が指摘すると、孝は今度は頭を下げ“許して欲しい”と懇願する。


「……………………ぷっ。あんた正直者なのね。いつもそうやって素直で居ればいいのに」

「……家光……」


 家光が口元をそっと拭ってから微笑むと、孝は許されたと安堵したように心弛びした。
 ところが、


「…………今日、しなきゃダメなの……?」

「っ……それは……、だって初夜だし……(したいし……)」


 家光の質問に孝は着物の膝部分をぎゅっと掴む。


「……あんたは私の夫で、私はあんたの妻だけど、私達は愛し合っていないのよ……?」

「俺はっ! お前のことがす」


 家光の物言いに孝は自分の気持ちを伝えようとするが、遮るように家光は続ける。


「私はあんたの事を好きになれない。あんた、私とやりたいだけだよね?」


 真っ直ぐ孝を見つめ、先程まで蕩けていた家光の顔が今は真剣そのものだった。


「っ!? ちがっ……」


 ――違うっ……!! したいのはその通りだけど違うっ!


 どうすれば解ってもらえる??
 孝はここでキレてはまたいつものように嫌われて終わりだと、ぐっと堪える。

 だが、家光はそんな孝の気持ちなど知らずに……、


「……私、初めては好きな人とするって決めてるの。だからあんたとはしたくない。だから今日は諦めて。初めてさえ終わったら たまに相手してあげるから」

「っ…………!」


 家光の言葉は淡々としていて、義務的に聞こえた。
 孝が俯き、手元の着物の皺がどんどんと大きくなる。


「……っ……家光、お前は……俺がお前とやりたいだけだと思っているのか……?」

「夜伽も果たせって言ったのはあんたでしょ」

「あれはっ!」


 ――お前がつれないからつい……!


 言い訳はみっともないと思い、孝はそれ以上言えなかった。


「……ね、孝。多分気付いてると思うんだけど……、根本的に私達合わないんだよ」

「合わないって何だよ……。俺はお前を幸せにするって言っただろうが。何で伝わらないんだよ……はぁ……」


 頭の痛い話に孝は頭を抱える。
 何度家光にアピールしても暖簾に腕押しで、家光は聞く耳を持ってくれないのだ。


「……っ、いやだから、何て言うかこのやり取りがさ! いっつも喧嘩になっちゃうじゃん!? こういうの不毛なんだよ。あんたに可愛い女の子紹介するからさっ!」

「はぁっ!? ふっざけんなっ!! 俺はお前の正室なんだぞ!? 浮気しろっつーのか!?」


 これまで我慢していた孝だったが、遂に限界を超え声を荒げてしまった。
 とはいえ家光は口付けの余韻も薄れ、そもそも素面なので冷静である。


「たまには相手するし、浮気……って言うか、私、側室を迎えるんだよ??」

「そくっ!? はぁぁああああっ!!??」


 家光の言葉に孝が怒鳴り声を上げた。
 まだ酔っているのだろう、いつもよりもその声は大きい。


「っ……(うわ、何か怒ってる……?)」


 家光は孝の剣幕に僅かばかり恐怖を覚え、後退る。


「……聞いてないぞ?」

「え?」

「……春日局はお前は俺のものになるのだから、安心して輿入れしろと云った。お前……、俺以外の奴に抱かれるつもりなのか……?」


 じろり、と。

 孝が家光を睨み付けた。
 憎悪にも似た、強い眼差しに家光は息を呑み更に後退る。


「っ…………? いや、だって私将軍だよ……?」


 家光は胸がひゅっと冷えていくのを感じていた。
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