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【京都・昇叙編】
075 後水尾天皇の行幸
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――その日、空は晴れ渡っていた。
「……なんや、気に入らへんけども……ほな、参りますか」
にっこりと、黒髪の美女が妖艶に微笑んだ。
金を基調にしたド派手な唐衣に真っ赤な光沢のある懸帯、中の着物も一目で上質とわかる十二単を身に纏い、平額・釵子・櫛の髪飾りを付け、金彩(細工物を金箔で彩ること)で美しい装飾を施した檜扇を手に、従者を引き連れ御所の廊下を歩く(要はお雛様みたいな格好でしゃなりしゃなりと歩いているのである)。
背筋を伸ばし、凛とした表情で歩く様は、美しく自信に満ち溢れ、威厳を兼ね備えていた。その女性は後水尾天皇。
背後に仕える従者達は皆一様に天皇に熱い眼差しを送っていた。
(そやけど、重いわぁ……)
涼しい顔をしながら、後水尾天皇は下腹部を撫でる。少しふっくらとしている。
そこには新しい命が宿っていた。
(はよう、脱ぎたいわぁ……)
今日、後水尾天皇は京都御所を出て家光達の居る二条城へと向かう。
「そういえば……、久脩は戻ってるんか?」
牛車に乗り込もうとふと足を止め、後水尾天皇が檜扇を口元に宛て、萌葱色一色の従者達の中、たった一人白い狩衣を身に纏った若い従者の男に訊ねる。
「……は、それが、まだでして。二条城で合流できるかと思われます」
従者はそう報告すると、片方の口角を上げほくそ笑む。
「はっ! 榊を清めるだけやというに随分時間が掛かっとるなぁ」
後水尾天皇は吹き出して、牛車に乗り込むと腰を下ろした。
「当主が遅れましても問題ございません。榊でしたら、私の方でご用意できております。天曹地府祭も私めが代わりに」
従者は自信満々に声を張りながら後水尾天皇を熱い眼差しで見つめた後、恭しく頭を下げた。
その瞳は鋭く、野心に燃えている。
天曹地府祭とは陰陽道で行われる祭祀の一つで、無病息災・延命長寿を祈祷する儀式のことであり、陰陽師が担っている。
従者の男がそれを口にしたということは、この従者は陰陽師なのである。
後水尾天皇が先程久脩と口にしたのは、この男の上司である当主のことだった。
「そうか、ほんでもあれに呪を施したんは久脩やからなぁ」
後水尾天皇が檜扇を顎に宛てながら悠長に告げる。
「は……? 呪でございますか? 当主が施したものは弟子の私でも問題ありません。お任せください」
「まぁ、どうにかなるかぁ……。あれは久脩にしか解けん、あやつのことや、間に合うやろう(あんた、何を企んどるんやぁ? ん?)」
男の言葉に後水尾天皇は目元、口元を緩ませるが、檜扇で口元だけ隠してまだ若い陰陽師を見下ろした。
その物言いは男の言葉など聴く耳を持たず、眼中にも無いとでも言いたげである。
「……っ」
後水尾天皇の言葉に男が唇を噛み締める。
「……久脩は強いからなぁ……」
悔しそうな男の様子にくすくすと後水尾天皇が愉快そうに嗤って、牛車の前簾を下ろしたのだった。
(大方、当主の座でも狙うたのやろうなぁ。……まだ早いわぁ、もう少し、歳を重ねったらええ面構えになりそうやない?)
ふふふ、と牛車の中で若い陰陽師から向けられた熱い視線を思い出すと、牛車が動き出した。
(朕に想いを見透かされてしまうようではなぁ……。可愛い顔をして悪くはないが……、ちと色気が足らんなぁ)
ふふふん、と今後の成長が楽しみな人物を見つけたなと、行幸で少し滅入っていた後水尾天皇の気分は良くなったのだった。
◇
そうして、後水尾天皇が二条城に向かっている最中――。
「家光様に、御目通り願いたい。……ふぅ……」
「あなたは……?」
二条城、二の丸御殿の車寄で薄緑の狩衣を着た、春日局よりも背の高い男が立っていた。
長い銀髪に紅玉の瞳、はっきりした目鼻立ちに、薄い唇、すっとした顎。艶めいた顔立ち。
体格はその背に合うように造られていた。
一言で言ってしまえば美丈夫。
走って来たらしく、立烏帽子を脇に抱え、薄っすら汗ばんだ額と首に汗が滴り落ちていた。
「家光様を……起こしに参りました」
物静かな雰囲気で、男は告げる。
「な、何故そのことを……!?」
応対していたのは正勝だった。
正勝は男の言葉に目を丸くする。
「……後水尾天皇が来られる前に」
「…………っ(どうする!?)」
男が告げると、正勝は一瞬目を泳がせる。
すると、背後から誰かが近づいてくる気配がした。
「正勝、通せ」
「っ、春日局様っ!」
声に正勝が振り返ると、目の下に隈が一層濃くなった春日局が立っていた。
「……では、お上がり下さい」
「……どうも」
正勝は春日局に言われて渋々了承し、男を御殿に上げたのだった。
男は浅沓を脱いで御殿に上がる。
「正勝、この者の案内は私がする。お前は本丸御殿へ行き、後水尾天皇をお迎えする準備を」
「は、はいっ、畏まりました」
春日局に指示されて、正勝は本丸御殿へと向かうことに。
その間に、春日局は男を引き連れ家光の元へと向かう。
「……何故、家光様のことをご存じで? 見た所、公家の方のようですが……」
「……私はこの後、天子様……、後水尾天皇と拝謁される秀忠様、家光様にご祈祷を差し上げる者で、土御門久脩と申します。この度は遠く江戸よりよくお越し下さいました。後水尾天皇もこの日を心待ちにしておられました」
廊下を歩きながら春日局が訊ねるが、久脩は勝手知ったる御殿とばかりに襖に描かれた絵画に目もくれず、行く先を見据えていた。
「土御門……」
どこかで聞いたことがあるような気がして、春日局は記憶を辿るが睡眠不足の頭では直ぐには出て来そうにない。
考えている間に大広間も通り抜け、黒書院横も通り過ぎると、目的地。
「……入るぞ」
「……あっ、はい。どうぞ」
家光が眠る白書院二の間の前で、春日局は襖に声を掛けると中から風鳥の声が聞こえてきた。
春日局が離れる間、家光を任せていたようだ。
襖に手を掛けすーっと開く。
「……五日程、あの調子で眠っておいでで……」
部屋の中に入ると、春日局は久脩を引き連れ、褥脇に座る。
風鳥は襖の横に立っていた。
「ぅぅ……、ギョーザ……、パスタ……、タピオカミルクティー……」
家光が譫言の後で、口を動かしている。咀嚼しているようにも思える。
何かを食べている夢でも見ているのだろうか。
「……とりからは外せません」
「そうそう……竜田揚げも美味いんだって……」
こそっと、久脩が口元に手を添え眠る彼女の耳元へと告げると、家光が眠りながら嬉しそうに微笑んで相槌を打った。
「っ!?」
「え……?」
春日局と風鳥は驚き家光を見下ろす。
(眠っているのに……会話が成立した……!?)
春日局は久脩を見るが、久脩は穏やかな顔で家光を見下ろしているだけ。
「……では、家光様を起こしますね」
久脩が片手を開き、指を揃えて縦にし口元に持って来ると、人差し指に唇を触れさせて何やらぶつぶつ言い出す。
(さぁ、家光様、そろそろ生命力も回復した頃でしょう。起きましょう)
「六根清浄急急如律令」
真言を唱え始めると、久脩の周りに清浄な気のようなものが溢れ、その気が家光へと流れていく。
目には見えないが、部屋の空気が停滞していたものから動き出し、窓も開けていないのに風が吹く。
風は家光の髪に触れ、すぅっと眠る鼻や唇の中へと吸い込まれていく。
「真言……(成程、土御門……。陰陽師か……)」
春日局はやっと思い出したのか一息吐く。
風と共に清浄な気が家光を包み、しばらくすると。
「…………ん」
ぴくりと、寝かせた手指が僅かに動いた。
「家光様っ!」
春日局はすぐさま彼女の手を取り、様子を窺う。
「……もう、目を覚まされると思います。では、私は後程……」
久脩はすっと立ち上がると、ほのかに口角を上げて、部屋を出て行こうとする。
「ん……、謎の声……?」
「……後程」
家光が薄っすら目を開けて茫然と天井を見つめながら呟くと、久脩は軽く会釈して出て行った。
「家光様っ、良かった! もうお目覚めにならないのかと!」
春日局が、悲痛な面持ちで家光の手を強く握る。
「えぇ……? 何でよ…………寝てただけじゃん…………。てか、福…………、泣いてんの?」
家光が今にも泣きそうな顔で、自分を見下ろす春日局の頬に触れる。
「泣く…………?」
「へへっ……、目の隈すごいじゃん、どうしたの?」
家光の手が春日局の頬に触れると、一粒だけ熱い涙が零れ落ち、その手を濡らしたのだった。
家光は屈託ない顔で無邪気な笑顔を見せる。
「どうしたの……って……。っ、何言ってるんですか。そもそも貴女が眠りについて目覚めないから…………云々」
「え……目覚めないって…………?(どうゆうこと?)」
春日局は涙を拭うと、いつもの冷静な顔へと瞬時に戻ってぶつぶつ言い始める。
風鳥の位置から涙は見えなかったようだが、春日局が三日寝ていないのを知っているので、安堵したんだろうと思ったのだった。
「……おおっと。局様、お小言はそこまでにして、準備……なさいませんか?」
「……ああ、そうだったな。家光様、こちらがどこかわかりますか?」
「ここ……?」
言われて家光は部屋を見渡す。
初めて来たはずだが、知っている気がする。
「……ここ、白書院だよね(何の間かは知らんけど)」
ぽつりと、零した。
「……なんや、気に入らへんけども……ほな、参りますか」
にっこりと、黒髪の美女が妖艶に微笑んだ。
金を基調にしたド派手な唐衣に真っ赤な光沢のある懸帯、中の着物も一目で上質とわかる十二単を身に纏い、平額・釵子・櫛の髪飾りを付け、金彩(細工物を金箔で彩ること)で美しい装飾を施した檜扇を手に、従者を引き連れ御所の廊下を歩く(要はお雛様みたいな格好でしゃなりしゃなりと歩いているのである)。
背筋を伸ばし、凛とした表情で歩く様は、美しく自信に満ち溢れ、威厳を兼ね備えていた。その女性は後水尾天皇。
背後に仕える従者達は皆一様に天皇に熱い眼差しを送っていた。
(そやけど、重いわぁ……)
涼しい顔をしながら、後水尾天皇は下腹部を撫でる。少しふっくらとしている。
そこには新しい命が宿っていた。
(はよう、脱ぎたいわぁ……)
今日、後水尾天皇は京都御所を出て家光達の居る二条城へと向かう。
「そういえば……、久脩は戻ってるんか?」
牛車に乗り込もうとふと足を止め、後水尾天皇が檜扇を口元に宛て、萌葱色一色の従者達の中、たった一人白い狩衣を身に纏った若い従者の男に訊ねる。
「……は、それが、まだでして。二条城で合流できるかと思われます」
従者はそう報告すると、片方の口角を上げほくそ笑む。
「はっ! 榊を清めるだけやというに随分時間が掛かっとるなぁ」
後水尾天皇は吹き出して、牛車に乗り込むと腰を下ろした。
「当主が遅れましても問題ございません。榊でしたら、私の方でご用意できております。天曹地府祭も私めが代わりに」
従者は自信満々に声を張りながら後水尾天皇を熱い眼差しで見つめた後、恭しく頭を下げた。
その瞳は鋭く、野心に燃えている。
天曹地府祭とは陰陽道で行われる祭祀の一つで、無病息災・延命長寿を祈祷する儀式のことであり、陰陽師が担っている。
従者の男がそれを口にしたということは、この従者は陰陽師なのである。
後水尾天皇が先程久脩と口にしたのは、この男の上司である当主のことだった。
「そうか、ほんでもあれに呪を施したんは久脩やからなぁ」
後水尾天皇が檜扇を顎に宛てながら悠長に告げる。
「は……? 呪でございますか? 当主が施したものは弟子の私でも問題ありません。お任せください」
「まぁ、どうにかなるかぁ……。あれは久脩にしか解けん、あやつのことや、間に合うやろう(あんた、何を企んどるんやぁ? ん?)」
男の言葉に後水尾天皇は目元、口元を緩ませるが、檜扇で口元だけ隠してまだ若い陰陽師を見下ろした。
その物言いは男の言葉など聴く耳を持たず、眼中にも無いとでも言いたげである。
「……っ」
後水尾天皇の言葉に男が唇を噛み締める。
「……久脩は強いからなぁ……」
悔しそうな男の様子にくすくすと後水尾天皇が愉快そうに嗤って、牛車の前簾を下ろしたのだった。
(大方、当主の座でも狙うたのやろうなぁ。……まだ早いわぁ、もう少し、歳を重ねったらええ面構えになりそうやない?)
ふふふ、と牛車の中で若い陰陽師から向けられた熱い視線を思い出すと、牛車が動き出した。
(朕に想いを見透かされてしまうようではなぁ……。可愛い顔をして悪くはないが……、ちと色気が足らんなぁ)
ふふふん、と今後の成長が楽しみな人物を見つけたなと、行幸で少し滅入っていた後水尾天皇の気分は良くなったのだった。
◇
そうして、後水尾天皇が二条城に向かっている最中――。
「家光様に、御目通り願いたい。……ふぅ……」
「あなたは……?」
二条城、二の丸御殿の車寄で薄緑の狩衣を着た、春日局よりも背の高い男が立っていた。
長い銀髪に紅玉の瞳、はっきりした目鼻立ちに、薄い唇、すっとした顎。艶めいた顔立ち。
体格はその背に合うように造られていた。
一言で言ってしまえば美丈夫。
走って来たらしく、立烏帽子を脇に抱え、薄っすら汗ばんだ額と首に汗が滴り落ちていた。
「家光様を……起こしに参りました」
物静かな雰囲気で、男は告げる。
「な、何故そのことを……!?」
応対していたのは正勝だった。
正勝は男の言葉に目を丸くする。
「……後水尾天皇が来られる前に」
「…………っ(どうする!?)」
男が告げると、正勝は一瞬目を泳がせる。
すると、背後から誰かが近づいてくる気配がした。
「正勝、通せ」
「っ、春日局様っ!」
声に正勝が振り返ると、目の下に隈が一層濃くなった春日局が立っていた。
「……では、お上がり下さい」
「……どうも」
正勝は春日局に言われて渋々了承し、男を御殿に上げたのだった。
男は浅沓を脱いで御殿に上がる。
「正勝、この者の案内は私がする。お前は本丸御殿へ行き、後水尾天皇をお迎えする準備を」
「は、はいっ、畏まりました」
春日局に指示されて、正勝は本丸御殿へと向かうことに。
その間に、春日局は男を引き連れ家光の元へと向かう。
「……何故、家光様のことをご存じで? 見た所、公家の方のようですが……」
「……私はこの後、天子様……、後水尾天皇と拝謁される秀忠様、家光様にご祈祷を差し上げる者で、土御門久脩と申します。この度は遠く江戸よりよくお越し下さいました。後水尾天皇もこの日を心待ちにしておられました」
廊下を歩きながら春日局が訊ねるが、久脩は勝手知ったる御殿とばかりに襖に描かれた絵画に目もくれず、行く先を見据えていた。
「土御門……」
どこかで聞いたことがあるような気がして、春日局は記憶を辿るが睡眠不足の頭では直ぐには出て来そうにない。
考えている間に大広間も通り抜け、黒書院横も通り過ぎると、目的地。
「……入るぞ」
「……あっ、はい。どうぞ」
家光が眠る白書院二の間の前で、春日局は襖に声を掛けると中から風鳥の声が聞こえてきた。
春日局が離れる間、家光を任せていたようだ。
襖に手を掛けすーっと開く。
「……五日程、あの調子で眠っておいでで……」
部屋の中に入ると、春日局は久脩を引き連れ、褥脇に座る。
風鳥は襖の横に立っていた。
「ぅぅ……、ギョーザ……、パスタ……、タピオカミルクティー……」
家光が譫言の後で、口を動かしている。咀嚼しているようにも思える。
何かを食べている夢でも見ているのだろうか。
「……とりからは外せません」
「そうそう……竜田揚げも美味いんだって……」
こそっと、久脩が口元に手を添え眠る彼女の耳元へと告げると、家光が眠りながら嬉しそうに微笑んで相槌を打った。
「っ!?」
「え……?」
春日局と風鳥は驚き家光を見下ろす。
(眠っているのに……会話が成立した……!?)
春日局は久脩を見るが、久脩は穏やかな顔で家光を見下ろしているだけ。
「……では、家光様を起こしますね」
久脩が片手を開き、指を揃えて縦にし口元に持って来ると、人差し指に唇を触れさせて何やらぶつぶつ言い出す。
(さぁ、家光様、そろそろ生命力も回復した頃でしょう。起きましょう)
「六根清浄急急如律令」
真言を唱え始めると、久脩の周りに清浄な気のようなものが溢れ、その気が家光へと流れていく。
目には見えないが、部屋の空気が停滞していたものから動き出し、窓も開けていないのに風が吹く。
風は家光の髪に触れ、すぅっと眠る鼻や唇の中へと吸い込まれていく。
「真言……(成程、土御門……。陰陽師か……)」
春日局はやっと思い出したのか一息吐く。
風と共に清浄な気が家光を包み、しばらくすると。
「…………ん」
ぴくりと、寝かせた手指が僅かに動いた。
「家光様っ!」
春日局はすぐさま彼女の手を取り、様子を窺う。
「……もう、目を覚まされると思います。では、私は後程……」
久脩はすっと立ち上がると、ほのかに口角を上げて、部屋を出て行こうとする。
「ん……、謎の声……?」
「……後程」
家光が薄っすら目を開けて茫然と天井を見つめながら呟くと、久脩は軽く会釈して出て行った。
「家光様っ、良かった! もうお目覚めにならないのかと!」
春日局が、悲痛な面持ちで家光の手を強く握る。
「えぇ……? 何でよ…………寝てただけじゃん…………。てか、福…………、泣いてんの?」
家光が今にも泣きそうな顔で、自分を見下ろす春日局の頬に触れる。
「泣く…………?」
「へへっ……、目の隈すごいじゃん、どうしたの?」
家光の手が春日局の頬に触れると、一粒だけ熱い涙が零れ落ち、その手を濡らしたのだった。
家光は屈託ない顔で無邪気な笑顔を見せる。
「どうしたの……って……。っ、何言ってるんですか。そもそも貴女が眠りについて目覚めないから…………云々」
「え……目覚めないって…………?(どうゆうこと?)」
春日局は涙を拭うと、いつもの冷静な顔へと瞬時に戻ってぶつぶつ言い始める。
風鳥の位置から涙は見えなかったようだが、春日局が三日寝ていないのを知っているので、安堵したんだろうと思ったのだった。
「……おおっと。局様、お小言はそこまでにして、準備……なさいませんか?」
「……ああ、そうだったな。家光様、こちらがどこかわかりますか?」
「ここ……?」
言われて家光は部屋を見渡す。
初めて来たはずだが、知っている気がする。
「……ここ、白書院だよね(何の間かは知らんけど)」
ぽつりと、零した。
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