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5章:月に叢雲(むらくも)、花に風
修羅の道を往く【side:テオ】
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テオ・ブラストは自室の書斎で部下からの報告を聞いていた。
「中立派と穏健派の一団は、秘密裏に帝都を出発してリベルタ王国へ向かったようです」
テオは、ただでさえ鋭い瞳を更に細め「そうか」と呟いた。
「奴らもなかなか姑息な手を使う。使節団のメンバーに選ばれなかったにも関わらず、帝国議会での決定を無視して他国へ渡るなど言語道断。俺が帰国したら相応の処罰を検討せねばな」
足を組み替えると厳めしい口調で眼前の部下に命じる。
「使節団に選ばれた貴族らに即時通達せよ。我々もすぐに出立する。遅れた者は容赦なく置いていく。強行軍になることを覚悟せよ――と伝えろ」
「かしこまりました。失礼いたします」と一礼して部下が立ち去る。
暗い室内に残されたテオは、椅子の背もたれにゆったり体を預け、両手を組んでみぞおちの上に置き目を閉じた。
「ソフィア・クレーベル。俺の女よ。ようやくお前に会いに行ける」
空に浮かぶ三日月より明るい金の目を開き、遠くにいる彼女を捕まえるように右手を持ち上げる。
「俺の腕の中に戻ってこい。ソフィア」
間もなく戦争になる。これは避けられない運命だ。
いくら中立派や穏健派が和平の道を模索しようとも、ここは強硬派貴族が多数を占める国。
宮殿の奥に引きこもり、まるで政に興味のないお飾りの皇帝には戦争を止められない。
両国の武力衝突が起きれば、セヴィル人であるソフィアはリベルタ王国での居場所を失うだろう。
「お前も俺も、決して自由にはなれない。生まれる時代や両親を選べないように、己の人生もまた選べないのだ。与えられた役割、子々孫々と受け継がれる伝統、慣習。忌まわしい呪縛。全て諦めて生きるしかない」
諦めるしかないのだ――とテオは自分に言い聞かせるようにもう一度呟いた。
その時、自室に近付いてくる足音に気が付いて、とっさに口をつぐむ。
屋敷の中でも軍靴をはき、足を引きずる歪な靴音を響かせる人間は、このブラスト侯爵邸に一人しかいない。
ドアが強めにノックされる。
「はい」――と返事をすると、すぐさま男が部屋に入ってきた。
黒い軍服を身にまとい、胸元にはあまたの勲章。
階級肩章には星がきらめき、左腕には高位の貴族軍人の証である深紅の腕章をつけている。
テオより更に険しい金の瞳が月明かりに照らされ、鋭い剣のきっ先の如くギラリと光った。
歳を感じさせない鍛え抜かれた大きな体に、そこに居るだけで相手に恐怖心を植え付ける圧倒的な威圧感。
傷だらけの顔には人間らしい感情は一切無く、帝国貴族として絶えず強さを追い求める残忍なまでの冷酷さと厳しさがにじみ出ていた。
アレフ・ブラスト侯爵――テオの父がここに足を踏み入れた瞬間から、自室はもはや憩いの場では無く、戦場へと一気に姿を変えた。
彼の不興を買えば、たとえ息子であっても容赦なく切り捨てられる。これは比喩ではない、文字通り絶命を意味する。
父の腰に下げられた剣の柄を一瞥し、テオは緊張で湿る手の平を握りしめ言葉を発した。
「このような夜更けにどのような御用向きでしょうか、父上」
緊張も恐怖も、こちらの全て見透かすような冷たい目でテオを見つめ、父はおもむろに口を開いた。
「中立派と穏健派に謀られたと聞いたが、事実か」
腹の奥に響く重低音が空気を震わせる。部屋に、死地のごとく緊迫した空気が漂った。
「申し訳ございません。ですが、これから我らも出発致します。奴らの行動など些事なこと。父上のご心配には及びません」
鋭い眼光を緩めることなく、父は忌々しげに自分の動かない左足を見下ろすと、「無念だ――」と唸った。
「足がこれでなければ、私が大使として直々にリベルタ王国へ行けたものを」
もともと父は幼少期から足腰が悪かったが、長年無理をしたため、今では引きずりながら歩くようになってしまった。
馬車での長旅など不可能な体だ。
強さを追い求める彼にとって、自らの体すら満足に動かせないというのは何よりの屈辱なのだろう。
もともと頑固な性格だったが、年々老い、衰えるのに比例して偏屈さは増していくばかりだ。
父は顔を大きく歪めて舌打ちをすると、苛立ち紛れに拳で太ももを強く叩いた。
金色の鋭い瞳には、全てを破壊しようとする残忍な本性が見え隠れしている。
「テオ。私が貴様に告げることはただ一つ。――己が使命を果たせ。私の名代であり、強硬派最大派閥ブラスト侯爵家の人間として。そして、此度の使節団の最高責任者として。必ずや目的を達せよ。コンフィーネ地方の山岳地帯。あれを我が国の領地として取り戻すのだ」
「はっ。必ずや」
「あの山岳地帯だけはなく、リベルタ王国はもともと我が国の属国――いわば所有物だ。今こそ全てを奪い返し、再び強い大帝国を築くときである」
「……」
『強かった時代のセヴィルを取り戻し、一大帝国を築く』――その理想を自分は父の口から何度聞いたことか。
セヴィル帝国がリベルタ王国やラメール王国を植民地化して栄華を極めたのは、もう遙か昔の話。
今では幾多の戦争により疲弊し、この痩せ細った過酷な北の土地に追いやられている。
ブラスト侯爵家をはじめ、強硬派閥の貴族たちはセヴィル帝国が世界の覇権を握った際に絶大な権力を手にした一族。
そのため、自分達の栄光の象徴である大帝国の再興は、父達にとって何よりの悲願だった。
――正直、そこまで過去の栄光に執着する気持ちが俺には分からんな……。
テオが顔にも声にも出さずこっそりため息をつく間にも、父は朗々と語り続けていた。
「山岳地帯を我が国に譲渡しないのであれば……リベルタ王国など滅ぼしてしまえばいい。あそこは自衛のための騎士団があるのみ。徴兵もなく民は戦いを知らない、無能もいいところだ。我が国が負けるはずがない。いいか、テオ。奴らに弱腰な態度を取るなよ?一歩も引くな。完膚なきまで蹂躙し、支配しろ」
「分かったな?」と鋭い眼光でにらみ付けられ、テオは本能的に震え出す体を必死に押さえて「承知いたしました」と応えた。
帝国の強硬派は目的を達成するためには戦争も辞さない。むしろ……。
――父上の本当の目的は金山じゃない。戦争だ。力で制圧……殺し合いの果ての完全勝利が欲しくてたまらないのだろうな。まさに、獣だ。理性なんてあったものじゃない。
父達の過激な思想とやり方は、やはりテオには理解できない。
――これから大寒波が来る。暖炉の火をともす薪も油も不足し、国の貯蔵庫には貴族たちが腹を満たすための備蓄しかない。こんな状況で戦争になれば、民は飢え、凍え……多くの未来が失われる。
テオは挑むように真っ向から父親を見すえ、意を決して問うた。
「父上たち強硬派が戦争も辞さない強行姿勢を貫くお気持ちは分かります。しかし、今の状況で戦争に突入すれば民の暮らしはどうなりましょうか。父上はそれについて、どのようなお考えなのかお聞かせ願えますか」
「――愚問だな」
ブラスト侯爵はテオの決死の抗議を冷酷な言葉で一蹴した。取りつく島がないとはまさにこのこと。
「我々はあまたの人間を束ねる侯爵貴族。私やお前には、国を守り繁栄させ、永続させる義務と責任がある。国民は我々の所有物であるが、我々は国民の保護者ではない。戦争や飢餓で死ぬのなら、それまでの命だったということ。我らが真に憂うのは民の明日ではなく、国の未来である」
「民あっての国であり、我ら貴族ではないのですか。高貴な身分には義務と責任が伴う。弱き者を切り捨てることは――」
「テオ。貴様はまだそのような甘いことを言っているのか? リベルタを攻め落とせば副産物として民などいくらでも手に入る。お前は使いものにならない物を捨てるのにいちいち感傷的になるか? ならないだろう。民など所詮その程度のもの」
父……いや、ブラスト侯爵はどこまでも非情な人だ。
誰が亡くなろうと決して揺るがない。たとえ息子や妻が命を落としたとしても、彼の心は動かない。
過去への執念によって生かされている虚ろな亡者だ。
ふと、彼は何かを思い出したように「あぁ……たしか、名はソフィア・クレーベルだったか」と呟いた。
彼女の名前が父の口から出た瞬間、テオに嫌な予感と緊張が走った――。
次話『ソフィア・クレーベルは戦争の道具』
「中立派と穏健派の一団は、秘密裏に帝都を出発してリベルタ王国へ向かったようです」
テオは、ただでさえ鋭い瞳を更に細め「そうか」と呟いた。
「奴らもなかなか姑息な手を使う。使節団のメンバーに選ばれなかったにも関わらず、帝国議会での決定を無視して他国へ渡るなど言語道断。俺が帰国したら相応の処罰を検討せねばな」
足を組み替えると厳めしい口調で眼前の部下に命じる。
「使節団に選ばれた貴族らに即時通達せよ。我々もすぐに出立する。遅れた者は容赦なく置いていく。強行軍になることを覚悟せよ――と伝えろ」
「かしこまりました。失礼いたします」と一礼して部下が立ち去る。
暗い室内に残されたテオは、椅子の背もたれにゆったり体を預け、両手を組んでみぞおちの上に置き目を閉じた。
「ソフィア・クレーベル。俺の女よ。ようやくお前に会いに行ける」
空に浮かぶ三日月より明るい金の目を開き、遠くにいる彼女を捕まえるように右手を持ち上げる。
「俺の腕の中に戻ってこい。ソフィア」
間もなく戦争になる。これは避けられない運命だ。
いくら中立派や穏健派が和平の道を模索しようとも、ここは強硬派貴族が多数を占める国。
宮殿の奥に引きこもり、まるで政に興味のないお飾りの皇帝には戦争を止められない。
両国の武力衝突が起きれば、セヴィル人であるソフィアはリベルタ王国での居場所を失うだろう。
「お前も俺も、決して自由にはなれない。生まれる時代や両親を選べないように、己の人生もまた選べないのだ。与えられた役割、子々孫々と受け継がれる伝統、慣習。忌まわしい呪縛。全て諦めて生きるしかない」
諦めるしかないのだ――とテオは自分に言い聞かせるようにもう一度呟いた。
その時、自室に近付いてくる足音に気が付いて、とっさに口をつぐむ。
屋敷の中でも軍靴をはき、足を引きずる歪な靴音を響かせる人間は、このブラスト侯爵邸に一人しかいない。
ドアが強めにノックされる。
「はい」――と返事をすると、すぐさま男が部屋に入ってきた。
黒い軍服を身にまとい、胸元にはあまたの勲章。
階級肩章には星がきらめき、左腕には高位の貴族軍人の証である深紅の腕章をつけている。
テオより更に険しい金の瞳が月明かりに照らされ、鋭い剣のきっ先の如くギラリと光った。
歳を感じさせない鍛え抜かれた大きな体に、そこに居るだけで相手に恐怖心を植え付ける圧倒的な威圧感。
傷だらけの顔には人間らしい感情は一切無く、帝国貴族として絶えず強さを追い求める残忍なまでの冷酷さと厳しさがにじみ出ていた。
アレフ・ブラスト侯爵――テオの父がここに足を踏み入れた瞬間から、自室はもはや憩いの場では無く、戦場へと一気に姿を変えた。
彼の不興を買えば、たとえ息子であっても容赦なく切り捨てられる。これは比喩ではない、文字通り絶命を意味する。
父の腰に下げられた剣の柄を一瞥し、テオは緊張で湿る手の平を握りしめ言葉を発した。
「このような夜更けにどのような御用向きでしょうか、父上」
緊張も恐怖も、こちらの全て見透かすような冷たい目でテオを見つめ、父はおもむろに口を開いた。
「中立派と穏健派に謀られたと聞いたが、事実か」
腹の奥に響く重低音が空気を震わせる。部屋に、死地のごとく緊迫した空気が漂った。
「申し訳ございません。ですが、これから我らも出発致します。奴らの行動など些事なこと。父上のご心配には及びません」
鋭い眼光を緩めることなく、父は忌々しげに自分の動かない左足を見下ろすと、「無念だ――」と唸った。
「足がこれでなければ、私が大使として直々にリベルタ王国へ行けたものを」
もともと父は幼少期から足腰が悪かったが、長年無理をしたため、今では引きずりながら歩くようになってしまった。
馬車での長旅など不可能な体だ。
強さを追い求める彼にとって、自らの体すら満足に動かせないというのは何よりの屈辱なのだろう。
もともと頑固な性格だったが、年々老い、衰えるのに比例して偏屈さは増していくばかりだ。
父は顔を大きく歪めて舌打ちをすると、苛立ち紛れに拳で太ももを強く叩いた。
金色の鋭い瞳には、全てを破壊しようとする残忍な本性が見え隠れしている。
「テオ。私が貴様に告げることはただ一つ。――己が使命を果たせ。私の名代であり、強硬派最大派閥ブラスト侯爵家の人間として。そして、此度の使節団の最高責任者として。必ずや目的を達せよ。コンフィーネ地方の山岳地帯。あれを我が国の領地として取り戻すのだ」
「はっ。必ずや」
「あの山岳地帯だけはなく、リベルタ王国はもともと我が国の属国――いわば所有物だ。今こそ全てを奪い返し、再び強い大帝国を築くときである」
「……」
『強かった時代のセヴィルを取り戻し、一大帝国を築く』――その理想を自分は父の口から何度聞いたことか。
セヴィル帝国がリベルタ王国やラメール王国を植民地化して栄華を極めたのは、もう遙か昔の話。
今では幾多の戦争により疲弊し、この痩せ細った過酷な北の土地に追いやられている。
ブラスト侯爵家をはじめ、強硬派閥の貴族たちはセヴィル帝国が世界の覇権を握った際に絶大な権力を手にした一族。
そのため、自分達の栄光の象徴である大帝国の再興は、父達にとって何よりの悲願だった。
――正直、そこまで過去の栄光に執着する気持ちが俺には分からんな……。
テオが顔にも声にも出さずこっそりため息をつく間にも、父は朗々と語り続けていた。
「山岳地帯を我が国に譲渡しないのであれば……リベルタ王国など滅ぼしてしまえばいい。あそこは自衛のための騎士団があるのみ。徴兵もなく民は戦いを知らない、無能もいいところだ。我が国が負けるはずがない。いいか、テオ。奴らに弱腰な態度を取るなよ?一歩も引くな。完膚なきまで蹂躙し、支配しろ」
「分かったな?」と鋭い眼光でにらみ付けられ、テオは本能的に震え出す体を必死に押さえて「承知いたしました」と応えた。
帝国の強硬派は目的を達成するためには戦争も辞さない。むしろ……。
――父上の本当の目的は金山じゃない。戦争だ。力で制圧……殺し合いの果ての完全勝利が欲しくてたまらないのだろうな。まさに、獣だ。理性なんてあったものじゃない。
父達の過激な思想とやり方は、やはりテオには理解できない。
――これから大寒波が来る。暖炉の火をともす薪も油も不足し、国の貯蔵庫には貴族たちが腹を満たすための備蓄しかない。こんな状況で戦争になれば、民は飢え、凍え……多くの未来が失われる。
テオは挑むように真っ向から父親を見すえ、意を決して問うた。
「父上たち強硬派が戦争も辞さない強行姿勢を貫くお気持ちは分かります。しかし、今の状況で戦争に突入すれば民の暮らしはどうなりましょうか。父上はそれについて、どのようなお考えなのかお聞かせ願えますか」
「――愚問だな」
ブラスト侯爵はテオの決死の抗議を冷酷な言葉で一蹴した。取りつく島がないとはまさにこのこと。
「我々はあまたの人間を束ねる侯爵貴族。私やお前には、国を守り繁栄させ、永続させる義務と責任がある。国民は我々の所有物であるが、我々は国民の保護者ではない。戦争や飢餓で死ぬのなら、それまでの命だったということ。我らが真に憂うのは民の明日ではなく、国の未来である」
「民あっての国であり、我ら貴族ではないのですか。高貴な身分には義務と責任が伴う。弱き者を切り捨てることは――」
「テオ。貴様はまだそのような甘いことを言っているのか? リベルタを攻め落とせば副産物として民などいくらでも手に入る。お前は使いものにならない物を捨てるのにいちいち感傷的になるか? ならないだろう。民など所詮その程度のもの」
父……いや、ブラスト侯爵はどこまでも非情な人だ。
誰が亡くなろうと決して揺るがない。たとえ息子や妻が命を落としたとしても、彼の心は動かない。
過去への執念によって生かされている虚ろな亡者だ。
ふと、彼は何かを思い出したように「あぁ……たしか、名はソフィア・クレーベルだったか」と呟いた。
彼女の名前が父の口から出た瞬間、テオに嫌な予感と緊張が走った――。
次話『ソフィア・クレーベルは戦争の道具』
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