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色々と顔に合ってないけど口にしません大人だもの
しおりを挟むドアを開けた先にあったのはカントリー風?の部屋。
使い古されたラグが敷かれ過ごしやすそうな空間と、木でできた4人掛け位のテーブルと椅子。
そして奥にはキッチン、そしてここの家主だと思われる大柄な男性が手に包丁と食材らしきものを持った状態で半身をこちらに向けた姿勢のままこちらを見てて固まっていた。
でも、なにより私の目を引いたのは、その男性の髪だった。
なんの変哲もないスポーツ刈りなのだけど、色が緑だった。
なんて言うか、いや、詳しくは無いんだけどさ、髪を染めて出るような生半可な緑じゃなくて、かといってカツラって感じでもなさそうだし。
いや、私が知らないだけで、コスプレっぽい服もあったし、すごくよくできたカツラか、地毛を染めてこんな色を出す方法があるのかな?
驚きでこのところ良く起こす、パニックにプチだけど陥った。
この場が完全に凍った瞬間だった。
そのパニックも、手にしていたお盆から食器が落ちる音で落ち着いたけど。
カランと食器の落ちる音で正気に戻った私は、急いで落とした食器を拾った。
そして顔を上げると彼が目の前にいた。
彼の顔はよく見ると大分人相が悪くて、2、3人殺してそうな顔してる。
街を歩いたら確実に空間ができるタイプの顔。
アロハシャツでチンピラ風じゃなくて、かっつりスーツに縦じまのシャツに金の鎖をジャラジャラつけてで恐さマシマシになるタイプ。
ザ・顔面凶器。
でも緑髪のショックで感覚が麻痺していたのか案外すんなりと私はその顔を受け入れていた。
ちなみに、眉も髪と同じ色、・・・はっきりとは分からないけどまつ毛も同じ・・・?
かなり凝り性のコスプレイヤーさんかな。
失礼だけど、この顔でコスプレって顔だけ浮かない?
メイクで誤魔化せる範疇を越してる気がするんだけど。
彼は何かを言って手を差し出した。
何なのか分からなくて戸惑っていると、そっと私の手から食器の乗ったお盆を取ってキッチンに向けて歩き出した。
「あ、ありがとう!サンキュー!」
とっさに、お礼を言わねばと思い口に出した。日本語とカタカナ英語で。
彼は私の言葉に少し戸惑っていたようだからもしかしたら英語も分からないのかも、それでも言いたいことはなんとなく感じたようで二コリではなく、ニヤリとした顔を向けてくれた。
食器を片づけた彼と私はテーブルについて、まずは彼が色々私に話しかけてきた。
だけどやっぱり何を言っているのかさっぱり。
彼の話が落ち着いた所で、私も分かる限り色々な国の言葉で”こんにちは”を言いまくってみたけれど、一つも通じずじまい。
私のなんちゃって英語で迷子ですみたいなこととか、インターネットとか言ってみたけどやっぱり無駄で、最終的にマンガとかアニメとかそれらの題名とかキャラクターの名前とか言ってみたけど何一つ通じるものは無かった。
さすがに落ち込みを隠せない。
何を思ったのか彼はそんな私の手を取り、私が出てきた部屋の隣にあったドアを開けた。
そこにあったのは、トイレ。
さらに隣のドアを開けると、そこにあったのは脱衣所とお風呂。
お風呂はユニットバス的な感じじゃなくて、日本風の洗い場と浴槽が分かれているタイプ。
手振り身振りでお湯の出し方とか教えてくれているようだったので、しっかり使えるように覚えた。
使い方を理解したところで、居間に戻って目に入った窓の外はもう真っ暗だった。
ああ、どうなるにせよ今日はここに泊めてくれるつもりなんだな。
その後、特に言葉を交わすことなく、まあ通じないけど、寝る準備をして寝た。
ありがたいことに、ベッドは私が使わせてもらいました。
・・・ちなみに渡された着替え、私が着ていたTシャツとスウェットと下着類はきちんと洗濯されていたことだけは述べておく。
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