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もう少し、現実逃避していたかった

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一人暮らしを始めるときに買った少し硬めの、それでも地面で寝るよりもずっとやわらかい激安マットレスの感触。

ああ、あれはやっぱり夢だったんだ、なんてリアルな夢だったんだろうって、安心して目を開くとそこは私の部屋ではなかった。

当然ベッドは私の使いなれたものではなくて、文字通り大の字になってもまだ余るくらいの大きさは、少なくともダブル以上だと思う。

パニックにはならなかったけど、失望の色は隠せない。

いや、それでも、この様子だと誰かしらに助けてもらったのだろう。一歩前進。

と気持ちを奮い立たせた。


身の回りを確認していく。
今更ながらに着ているものを確認すれば、Tシャツにスウェットではなくシンプルなワンピースみたいなものになっている。
下着は・・・、つけていない・・・。

おぅ・・・、これは、どう考えるべきか・・・。
何か変なことされた感じはしないけど・・・。

そこで、私はハッとして部屋の中を見渡す。

部屋にあるのは使い古されたクローゼットのような家具のみ。
そして、今私が寝ている、大きめのベッド。

ここで最悪の想像が頭をよぎった。

つまり、ここは、そういうお店・・・?

助けられた、ではなく、売られた?


一気に体が恐怖に支配されていった。
それでも、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながら、震える体を叱咤してふらつく体を何とか動かしてベッドから降りる。

一つだけある窓に足を向け、外を見ればここはどうやら一階で外には庭があり、それより向こう側は塀で見えなくなっている。

窓は、開かない。

はめごろしって訳じゃなさそうなのにピクリとも動かない。

背筋がスッと冷えて、少し治っていた震えがひどくなる。

それでも、なんとか足を動かしてクローゼットに向かう。


あと少しで手が届くというところで、コンコンッとドアを叩く音がした。

ひっという悲鳴を飲み込み、ドアをただじっと見つめる。


返事はしていないけど、向こうが何かを言ってドアを開いた。
その先にいたのは、熊のように大きな男だった。

その姿を目に入れた途端、私は恐怖で腰を抜かし、体を抱きしめて身を縮めるしかできなくなっていた。

その男が何かを言っていたのは気づいていたけれど、何を言っているのかは分からなくて、ただただ恐怖に身を震わしていただけだった。


そして、気がついた時には部屋には私しかいなくなってた。


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