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物語の舞台が終わっても人生は続くってよくある話で
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さてその後の話。
例のビッチ系電波ヒロインさんだが、卒業を待たずに嫁入りした。
別に卒業まで待っても良かったらしいのだが、ビッチ系電波ヒロインさんなのでまあお勉強の成績が芳しくなく卒業待っても無意味だろうとのことで結婚が早まったらしい。
ちなみに私が遭遇したのはこの縁談話を話していたところだったらしい。
あの時の男性陣はヒロインさんが誘ってきたとはいえ、世間知らずのお嬢さんを弄んだと言う自覚があったらしく、また曲がりなりにも王族と体の関係を持ったことから下手なところと縁づいてもらっては困ると言うことで、嫁ぎ先を斡旋したらしい。
お相手は西の国境を守る辺境伯、30歳半ばの偉丈夫。数年前に奥方を亡くしていて後妻という事になるし、少し年が離れているが政略としてはよくある話。それにヒロインの実家は特になんの特色もない男爵家であることを加味すると、かなりの良縁と言える。
さらに加えて言えば、西の辺境伯領に接している隣国とは数年前に和平条約が結ばれていて、隣国の現国王はもちろん後継となる王子も我が国と友好を保つ方針。だから少なくとも私たちが生きている間に隣国と戦争などが再開されることはないだろう。
そして、その友好を深めるために交易などが盛んになっているため、今までになく西の辺境伯領は発展していく見通しだ。
これだけ聞くと、いやいや高待遇過ぎね!?
て思われると思う。
実際に高待遇だし、かなりの良縁である。
うん、だよね。
ただなあ・・・。
ヒロインちゃんが粉かけたのは、高位貴族の嫡男、もしくは将来有望な男子、かつ見目麗しい方々だ。
彼女が望んだのが、イケメンの旦那か、チヤホヤしてくれる環境か、地位や名誉か、金か、どれかなのか、それともどれもなのかわからない。
ただ、うん。
西の辺境伯は偉丈夫である、王家の信頼も厚い。
でも顔がとてつもなく厳つい。別に不細工ではないのだが、最前線で隣国と長年戦ってきただけある険しい顔つきをしていらっしゃる。
100歩、いや1万歩譲ってもイケメンではない。
それに、言い方は悪いが、筋肉ゴリラである。
身長は2メートルは軽く超えているだろうという大きさに、筋肉マッチョメンレベルじゃない。ゴリゴリマッチョ、筋肉だるまと言う言葉がよくお似合い。王都の近衛騎士や兵士がもやしに見えるレベルである。
細マッチョがもてはやされていた日本人女子の感性からしたらちょっと引くレベル。
王子なりを狙っていたことを考えると、確実にストライクゾーンからは外れている。
それに現辺境伯はすでに半隠居生活を送っている。母親の先代の辺境伯夫人と2人で領地の屋敷の本邸と同じ敷地内にある別邸で暮らしており、領政はほぼ次期辺境伯である息子に任せきりだ。どうしても辺境伯本人が出ないといけない公式行事などを除き私的な夜会や食事会すら出席せず、ほぼ辺境伯軍の次代育成をしている。
さてつまり、ヒロインさんは結婚後即姑と同居で当然お財布その他の管理は姑な上、華やかな場は義息子夫婦に取り仕切られるし、夫が出ない以上参加すら危ういのだ。
そして姑である前辺境伯夫人はとてもいい方なのだが、同時に自分に厳しく人にも厳しい芯の強いお方。また辺境伯家は質素倹約、品行方正を家訓としていて辺境伯も前辺境伯夫人もそれを忠実に守っている。
さらには前辺境伯夫人と仲良くしている御婦人情報だが、お年もあって融通がきかなくなっているらしい。
それに当然ヒロインさんが王都でやらかしたことは耳に入っているはずなので、辺境伯領でのヒロインさんの生活はお察しと言うやつである。
いわゆるざまあと言われるものではないけれど、どれほど過酷な環境かは嫁姑問題で苦労した方ならお分かりかと思う。
そして、私を含め王子やその側近たちは無事に学校を卒業してそれぞれの仕事に大忙しな毎日を送っている。
もっと言えば今日は王子と私の結婚式で、今は祝いの夜会が開かれている最中で、伝統の通りに主役の新婚夫婦は夜会を早めに切り上げた後で、湯あみやら寝る準備を終わらせて、わたくしは今1人夫婦の寝室におります。←イマココ
え、やばくない?何このスケっすけの夜着、いわゆるベビードール的な?
今更だけど、今っっっ更だけど今から初夜ですか!?
は!?
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!?!?!?!?!?
いや、前世は17歳で人生を終えました。
女子同士であの人かっこいい!!とか言い合っているのが楽しくて彼氏なんていたことありません。
え?つまり、経験なんてないのですよ!!!
二回も人生生きておきながら初・体・験!
気絶したい、気絶して起きたら朝でしたってならないかな?
むしろ、これ全部夢ってことでよくないですか?
あ、よくないですか・・・。
う~~~~わ~~~~~~・・・・・・。
うん、よし、必殺、寝たフリをしよう!
ほら、王族の結婚だけあって今日はっていうかもう何日も前から大忙しだったんだよ。
だから、待っている間につい寝落ちしちゃいました~!
って天然ヒロイン的な感じで!
よし!これで行こう!!
と覚悟を決めて、ベッドに向かおうと動き出したところで、私が入ってきたのと逆側のドアが開きました。
動き出しが、一歩遅かったようです。
ドアの方を見るとバッチリと赤い瞳と目があった・・・。
・・・
いつぞやを思い出させる静寂が落ちる・・・。
・・・
いや、そんなことはない、あの時とは違う何かが私たちの間を流れている。
それ以上に、視界に入ってくる、ガウンの合わせの隙間から見える鎖骨にはっきりと浮かんだ喉仏、広い肩幅、うっすらと湿った髪の毛がひどい色気を醸している。
そして、いや、今更ながらに、やっと、私は、彼がかわいい男の子ではなく、男、なのだと気づいてしまった。
再びあった瞳に熱が浮かんでいると感じたのは私の気のせいだっただろうか?
いや、そんなことどうでもいい。
2人の間に横たわる沈黙を破ったのは私の方だった。
彼が男なのだと気がつき、混乱に突き落とされた私は、そのままくるりと踵を返し、逃げ出そうとした。
全力で動いているつもりの私はしかし、フラフラとした動きで、あっさりと彼の広い胸に抱き込まれてしまったのであった。
さてその後、そのままうまいこと甘い雰囲気になることはなく、絶賛混乱中のわたくしはそのまま号泣いたしまして、優しく背中をぽんぽんされながら気づいたら眠りについておりました。
本当に今更だけど、人に女馴れとかいう前に自分が男馴れしていないことに気がついた私。
いや、今世は貴族として距離感ある付き合いしかできなかったし、前世は女同士でキャイキャイやってるだけだったしね。
遅れてやってきた思春期ばりに挙動不審になって、王子を避けまくりの、目線合わせられないの、周りに生温かい目を向けられながら、ラブコメ並のドタバタを繰り広げてから両思いになって、幸せな一生を送るのは、これはまた別のお話。
例のビッチ系電波ヒロインさんだが、卒業を待たずに嫁入りした。
別に卒業まで待っても良かったらしいのだが、ビッチ系電波ヒロインさんなのでまあお勉強の成績が芳しくなく卒業待っても無意味だろうとのことで結婚が早まったらしい。
ちなみに私が遭遇したのはこの縁談話を話していたところだったらしい。
あの時の男性陣はヒロインさんが誘ってきたとはいえ、世間知らずのお嬢さんを弄んだと言う自覚があったらしく、また曲がりなりにも王族と体の関係を持ったことから下手なところと縁づいてもらっては困ると言うことで、嫁ぎ先を斡旋したらしい。
お相手は西の国境を守る辺境伯、30歳半ばの偉丈夫。数年前に奥方を亡くしていて後妻という事になるし、少し年が離れているが政略としてはよくある話。それにヒロインの実家は特になんの特色もない男爵家であることを加味すると、かなりの良縁と言える。
さらに加えて言えば、西の辺境伯領に接している隣国とは数年前に和平条約が結ばれていて、隣国の現国王はもちろん後継となる王子も我が国と友好を保つ方針。だから少なくとも私たちが生きている間に隣国と戦争などが再開されることはないだろう。
そして、その友好を深めるために交易などが盛んになっているため、今までになく西の辺境伯領は発展していく見通しだ。
これだけ聞くと、いやいや高待遇過ぎね!?
て思われると思う。
実際に高待遇だし、かなりの良縁である。
うん、だよね。
ただなあ・・・。
ヒロインちゃんが粉かけたのは、高位貴族の嫡男、もしくは将来有望な男子、かつ見目麗しい方々だ。
彼女が望んだのが、イケメンの旦那か、チヤホヤしてくれる環境か、地位や名誉か、金か、どれかなのか、それともどれもなのかわからない。
ただ、うん。
西の辺境伯は偉丈夫である、王家の信頼も厚い。
でも顔がとてつもなく厳つい。別に不細工ではないのだが、最前線で隣国と長年戦ってきただけある険しい顔つきをしていらっしゃる。
100歩、いや1万歩譲ってもイケメンではない。
それに、言い方は悪いが、筋肉ゴリラである。
身長は2メートルは軽く超えているだろうという大きさに、筋肉マッチョメンレベルじゃない。ゴリゴリマッチョ、筋肉だるまと言う言葉がよくお似合い。王都の近衛騎士や兵士がもやしに見えるレベルである。
細マッチョがもてはやされていた日本人女子の感性からしたらちょっと引くレベル。
王子なりを狙っていたことを考えると、確実にストライクゾーンからは外れている。
それに現辺境伯はすでに半隠居生活を送っている。母親の先代の辺境伯夫人と2人で領地の屋敷の本邸と同じ敷地内にある別邸で暮らしており、領政はほぼ次期辺境伯である息子に任せきりだ。どうしても辺境伯本人が出ないといけない公式行事などを除き私的な夜会や食事会すら出席せず、ほぼ辺境伯軍の次代育成をしている。
さてつまり、ヒロインさんは結婚後即姑と同居で当然お財布その他の管理は姑な上、華やかな場は義息子夫婦に取り仕切られるし、夫が出ない以上参加すら危ういのだ。
そして姑である前辺境伯夫人はとてもいい方なのだが、同時に自分に厳しく人にも厳しい芯の強いお方。また辺境伯家は質素倹約、品行方正を家訓としていて辺境伯も前辺境伯夫人もそれを忠実に守っている。
さらには前辺境伯夫人と仲良くしている御婦人情報だが、お年もあって融通がきかなくなっているらしい。
それに当然ヒロインさんが王都でやらかしたことは耳に入っているはずなので、辺境伯領でのヒロインさんの生活はお察しと言うやつである。
いわゆるざまあと言われるものではないけれど、どれほど過酷な環境かは嫁姑問題で苦労した方ならお分かりかと思う。
そして、私を含め王子やその側近たちは無事に学校を卒業してそれぞれの仕事に大忙しな毎日を送っている。
もっと言えば今日は王子と私の結婚式で、今は祝いの夜会が開かれている最中で、伝統の通りに主役の新婚夫婦は夜会を早めに切り上げた後で、湯あみやら寝る準備を終わらせて、わたくしは今1人夫婦の寝室におります。←イマココ
え、やばくない?何このスケっすけの夜着、いわゆるベビードール的な?
今更だけど、今っっっ更だけど今から初夜ですか!?
は!?
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!?!?!?!?!?
いや、前世は17歳で人生を終えました。
女子同士であの人かっこいい!!とか言い合っているのが楽しくて彼氏なんていたことありません。
え?つまり、経験なんてないのですよ!!!
二回も人生生きておきながら初・体・験!
気絶したい、気絶して起きたら朝でしたってならないかな?
むしろ、これ全部夢ってことでよくないですか?
あ、よくないですか・・・。
う~~~~わ~~~~~~・・・・・・。
うん、よし、必殺、寝たフリをしよう!
ほら、王族の結婚だけあって今日はっていうかもう何日も前から大忙しだったんだよ。
だから、待っている間につい寝落ちしちゃいました~!
って天然ヒロイン的な感じで!
よし!これで行こう!!
と覚悟を決めて、ベッドに向かおうと動き出したところで、私が入ってきたのと逆側のドアが開きました。
動き出しが、一歩遅かったようです。
ドアの方を見るとバッチリと赤い瞳と目があった・・・。
・・・
いつぞやを思い出させる静寂が落ちる・・・。
・・・
いや、そんなことはない、あの時とは違う何かが私たちの間を流れている。
それ以上に、視界に入ってくる、ガウンの合わせの隙間から見える鎖骨にはっきりと浮かんだ喉仏、広い肩幅、うっすらと湿った髪の毛がひどい色気を醸している。
そして、いや、今更ながらに、やっと、私は、彼がかわいい男の子ではなく、男、なのだと気づいてしまった。
再びあった瞳に熱が浮かんでいると感じたのは私の気のせいだっただろうか?
いや、そんなことどうでもいい。
2人の間に横たわる沈黙を破ったのは私の方だった。
彼が男なのだと気がつき、混乱に突き落とされた私は、そのままくるりと踵を返し、逃げ出そうとした。
全力で動いているつもりの私はしかし、フラフラとした動きで、あっさりと彼の広い胸に抱き込まれてしまったのであった。
さてその後、そのままうまいこと甘い雰囲気になることはなく、絶賛混乱中のわたくしはそのまま号泣いたしまして、優しく背中をぽんぽんされながら気づいたら眠りについておりました。
本当に今更だけど、人に女馴れとかいう前に自分が男馴れしていないことに気がついた私。
いや、今世は貴族として距離感ある付き合いしかできなかったし、前世は女同士でキャイキャイやってるだけだったしね。
遅れてやってきた思春期ばりに挙動不審になって、王子を避けまくりの、目線合わせられないの、周りに生温かい目を向けられながら、ラブコメ並のドタバタを繰り広げてから両思いになって、幸せな一生を送るのは、これはまた別のお話。
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