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お願いは・・・(ただの言い訳ですホンマすみませんでしたぁぁぁぁぁぁ)

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入学直前に呼び出されたあの時私がお願いしたのは、王子や側近たちに娼館を利用させることだった。
これは提案するか結構ギリギリまで悩んだのだけど、提案するだけはタダだと思って思い切って言ってみた。

さて、何故このようなお願いをしたかというと・・・。

読み漁っていた悪役令嬢モノのストーリーを思い出して、何をしておけばいいかなっていうのは定期的に考えていた。
それでおバカ王子のパターンだからあまり考えたくはなかったけれど、体で落とされるってのもあるなあって昔から思ってはいたのだ。

それで高位貴族はそういう風にならないようにハニートラップの対策の教育を受けているはずっていう設定のものもあって、自分もそういうのを受けていたから男性陣が受けているだろうなってことは分かっていた。

ただ、ね、気になっていたのは、私が受けていた内容が随分とお上品な内容だったのだ。

それもまあ、考えれば理解できなくもない。この国の貴族は日本よりもずっと礼儀作法や男女の交流に厳しい。

そもそも同性であっても紹介を受けない限り、知り合いにはなれない。たまたま同じ場所にいたから会話をして友達になるってのは貴族としてはあまりよろしくない。
結婚するまでは、婚約者であってもエスコートやダンス以外で体が接触することはまずないし、2人きりになるというのはもってのほかだ。婚約者なら多少お目溢しはあるかもしれないけれど。

そして、特に高位貴族や王族の体を婚約者や家族ではない者が触れたり礼を失した態度を取ればその場で叩き斬られても文句は言えないのだ。

そんな人間を相手にハニートラップを仕掛けるのであれば、上品で礼節を持った振舞いをするのは当然の話だ。
だからその対策もそれを前提に考えられている。


それに加えて特に高位貴族の子供はそれこそデビュタントを迎える頃までほぼ軟禁状態で育つ。軟禁先がお城レベルの広さなので軟禁感は薄いかもしれないけど。
出かける先は両親が選んだお茶会位、そうなると当然交流できる人も限られてしまう。


そんな人間がある日突然いろんな身分の同じ年頃の男女が入り乱れる学校に通い出すわけです。
ヒロインは平民で~、とか言う言い訳で距離感がやけに近いわけです。


ここまでを踏まえると、王子たちや、悪役令嬢もののヒーローたちって日本風に考えると

女性との交流は親戚くらいで、男の子しか入れない私立の一貫校に幼稚園から通っていた箱入り息子が高校で共学校に入ったら、ちょっと浮いているけど可愛いなくらいに思ってたクラスメイトが近づいてきてボディタッチやら気を持たせるような言動をしてきた。

的な状態なのではないだろうか。

さらにはそこからうまい具合に体の関係に持ってかれて、ご自由にどうぞ状態に持ち込まれたら・・・。


正直、そりゃあ思春期の男の子だよ?落ちるでしょ!?

と思う。

異論は認めない、私は女だから男子のその辺の事情は知らないけど、前世を含め。

いやでも、責任感とか自分の立場を弁えていたら、とかいろいろモヤモヤしながら男性陣の教育内容を確認してみたらやっぱりお上品。

せめてもうちょと女馴れっていうか、してもらった方がいいと思うけど・・・。
でも、婚約者でもボディタッチとかして変な人に知られるとはしたないってなるのでできないし、下手な人間に任せるわけにもいかないし、なんてウダウダ王妃様に相談して言われたのが娼館はいかが?って提案。

なんでも安いところはそうでもないけど、高級娼館になると日本で言う高級クラブを兼ねているらしく接待などでも使えて、ただ女の子と飲んで食べておしゃべりするだけってのも可能らしい。
万が一いたしたとしても管理はしっかりしているし問題はまず起こらない。

なるほど納得しつつも、ちょっと悩んでいるうちに入学式が近づき提案の機会がやってきたので提案してみました。


・・・しかし、私がしたことは間違っていたのだろうか?
なんか可愛かった近所の男の子が不良になって、ヤバめのネーちゃんとイチャイチャしているところに遭遇した気分・・・。


複雑な気分になって物思いにふけっていると、ガサリと後ろで音がした。
振り返って見るとバッチリと赤い瞳と目があった・・・。



・・・


静寂が落ちる・・・。

・・・


「見てたの、か?」

まあ当然、とても気まずげだ。

「えっと、見てなかった、なんて言っても信じてもらえません、よね・・・?」

「ど、どこから見ていたんだ?」

「えっと、彼女がヒロインとか叫んでたあたり・・・?」

「・・・。」

「・・・。」

王子は口元を手で押さえながら、目をキョロキョロさせ始めた。

必死に言い訳でも考えてるのかなぁ。
言い訳できないくらいエグいこと言ってたしね・・・。

「あの・・・。」

こちらが声をかけると、びくりと肩が跳ねた。
そして、視線が交差する。

「あまり女性関係に口出しする気はないのですが、相手とやり方は少々ご検討いただいた方が良いかと・・・。」

王子は呻き声を上げながら両手で頭を抱えてしゃがみ込んだ。
気まずいけど、これだけは言っとかなきゃだからね・・・。


王子が微動だにしないまま少々時間が経ってしまった。
そろそろ戻らないとヤバイな。

「すみません、次がありますので先に戻りますね?」

私がそう言うと、王子が急に立ち上がり、無言で腕を差し出してきた。
驚いて顔を見れば気まずげに目を逸らされる。

でも腕を引っ込めることはしない。
・・・エスコートしてくれるつもりなのだろうか。

そっと手を添えると、勝手に歩き出した。

でも、その歩く速さは私が歩きやすい速さで、そう気づくと、何故だか笑いがこみ上げてきた。

「なんだよ?」

「いいえ、なんでも。」

そう言いながら私の笑いは止まらない。
王子は不機嫌そうにそっぽ向くけれど、その歩みはやっぱり私の歩きやすいスピードで。

なんかもう、いっか、って思えた。



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