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アザーズ Side
愛を抱くのなんてお粗末なもの、かしら?
しおりを挟む「・・・あ~~・・・」
一人でいるといろいろ考え込んでしまうなあ。
と、そこで手紙がきていた事を思い出す。
気晴らしにもなるし、読むか。
手紙を手にした時、ふと、そう言えば最近手紙がきたばかりで返事を早く書かなくてはと思っていたところだと思い出す。
少し不思議に思いながらも便箋を取り出しみると、いつもの柔らかく美しい文字ではなく、少し角ばった大きな字が目に入った。
元婚約者が亡くなった。
その手紙が告げたのはその事だった。
そうか、遂に。
一応、報告は受けていた。関係はもう無いと言っても、全く何も知らない状態にしているとそれはそれで面白おかしく言う者がいるから最低限だけ。
元婚約者はやはり辺境での生活が合わず一年としないうちに体調を崩しがちになっていた。そして、少し前に風邪を拗らせ帰らぬ人となった様だ。
寝転んだまま、追悼の祈りをあげる。
悲しみはひとかけらたりとも浮かばない。
一時は婚約者だった相手、私は冷たいのかな?
彼女、は彼の死を知ったら少しは悲しむのだろうか?
偽りと知りながらも愛していると信じ続けた彼の事を彼女はどう思っていたのだろうか?
分からない。
愛する者がいながら、他の女性に愛を囁いた王太子。
他の女に愛を囁いてもなお、その男を愛し続ける王太子妃。
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大変なことも辛いこともあるけれど、自分のやりたかった事をやりながら生きている。
でも時々、何か、うまくつかめないモヤモヤが浮かんでくる。
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そう疑問に思いながら、私は静かにまぶたを下ろした。
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