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しおりを挟むとりあえず彼について行ってるけど、その彼がレオーネなのかジャンなのかわからない。
エルマは絵本の王子様が飛び出してたきたような美形って言ってたけど……彼もまあまあ美男子だし。
――あっ、そうだ。
「こんなに広いお邸だと迷子になりそう」
「そうだね、僕は子供の頃から偶に来てるから平気だけど」
―――こっちはジャンか。
ふふ、策士リリアナの見事な作戦勝ちね。 こちらとしても順序としてはジャンからが良かったし、都合が良いわ。
そして、人気の無い場所まで来ると彼は振り返った。
「エルマ、会えなかった休みの間、僕のこの胸が何度君を想って苦しくなったか……」
「……ジャン」
嬉しい事を言ってくれるけど、ごめんなさい、私はエルマじゃないの。 本当はこんな事したくない、でもサラの為、不出来な妹の為にしなければならない。
「あのね、ジャン」
―――それでは始めましょう。 リリアナ・クルホワイトの名演技を披露するわ。
「悪いけど、もう冷めちゃったの」
「――なっ……冷めたって、ど、どういう事だい?」
「言葉の通りよ、会えない間あなたは想いを募らせ、私の想いは溶けて無くなってしまったの」
「そっ、そんな……!」
あなたも悪いのよ、エルマなんかにちょっかい出されてサラを悲しませたんだから。 サラ知らないけど。
「新学期が始まって一度もサラは授業に出て来ない、あなたを失ったのが相当ショックだったみたいね」
「そ、それは……」
「そのくせ、毎日私の部屋にやって来てはあなたの話をしてくるのよ」
「……僕にちょっかい出すのはやめてくれ、返してくれってサラが言ってるんだろ? それで君は……」
「それだったらこっちもやる気になるんだけどね」
「――? どういうことだ?」
「あの女、ジャンの事は本気なのか、真剣ならそれでいいから教えてってしつこいのよ」
「え……」
「貴族令嬢が何を生ぬるい事言ってるのか、本当にバカみたい。 誰だって自分の為、家を繁栄させる為に社交界に出てるのでしょう? ああいう女が一番嫌いなのよね、私からすればレオーネがダメだった時の保険、そんなの一人や二人じゃないのに」
「………」
「もぅ面倒になっちゃって、そんなに欲しいなら返してやるわよって言ったの。 そしたら自分は彼に求められてないから、って安い涙を見せられて、今度はジャンはこんなに素敵な人で、なんて私にあなたを勧めてくるのよ? バカにも程があるわ」
「……もう、いい」
「ああいう重たい女だからあなたも嫌になったんでしょ? でも、私としてもたかが保険の一人で学校生活やりにくくなりたくな……」
「――もういいって言ってるのだろッ!!」
大声を上げ、怒りを顕に肩を揺らすジャン。
はぁ……1発ぐらい殴られるかな、と覚悟を決めた時だった―――、
「だから言ったろ、エルマなんてやめとけって」
声の主は不敵な笑みを浮かべ、私とジャンの修羅場に悠々と近づいて来た。
こ、これはまた……規格外の美男子さんですこと……。
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