40 / 78
40 襲撃者が来客として扱われた理由
しおりを挟む
「一つ、お伺いします」
改めて、東の領主は俺たちに質問した。
「もしや、あなたがたは、スノーフォール様の使いなのでは?」
「……なぜそう思った?」
「その女の子が、あまりにこの肖像画にそっくりなものですから」
たしかに、小さいだけでこいつはスノーフォールである。
「へへっ」
ちびフォールは得意げだった。
スノーフォールの使い、か。
そう思ってもらえるなら、都合がいいな。
「それにあなたがつけているその仮面は、氷の魔法で作られたものでしょう? 室内でもほとんど解けないというのは……スノーフォール様の所業と、どうしても考えてしまいます」
「……スノーフォールはそこまで崇拝されているのか?」
「ええ。町の中心にある精霊教会は、スノーフォール様と霊域グラシアルを崇めるためのものですから」
「スノーフォールの使いだとしたらどうする?」
「お聞きしたいのです。私たちのしていることは、正しいのかどうか。東と西にわかれることが、精霊のためになるのかどうか」
「ほう?」
ここで東西の問題が出てくるか。
「領主よ、そもそも東と西に分かれているのは――」
「お察しの通り、霊域と精霊の考え方の違い……宗派の違いのようなものです」
東の領主は神妙な顔で頷いた。
「西の領主とは兄弟でした。ただ、精霊スノーフォールと霊域グラシアルの解釈が違いました。私は霊域グラシアルを雪や冷気を通して皆を見守っているのだと捉え、西の領主は寒いのは生き残るための試練と捉えております」
「そ、それだけ? 本当に? ただ考え方の違いでケンカしたってだけ?」
ちびフォールは面食らったようだ。他に何か理由があるのかと思いきや、自分が把握している情報だけだったことに少し呆れているらしい。
「私はその考えを精霊教会の神父に教わりました。おそらく弟も、神父に教わったのでしょう。今は、その神父たちも対立し、東の教会と西の教会に分かれております。神父はまるで聞いてきたかのように講釈をしますが、しかし実際のところ、本当なのか? と疑問になったりします」
「待て。教会の神父の口車に乗せられて、お前たち兄弟が対立したように聞こえるぞ。その対立のせいで東西が分かれることになったのだろう?」
「おっしゃる通りです。今思えば、神父に焚き付けられたのかもしれません」
東の領主は頷く。
俺は、ちびフォールに向き直って問う。
「実際のところはどうなんだ? ちびフォールよ」
「…………」
ちびフォールはしばし沈黙した後、答えた。
「……霊域も私も、ただそこにあるだけだよ。理由なんてない。解釈なんて、人間が勝手に決めたものでしょ。それこそ、どう解釈しようがいいと思うけど、私からしたらそれで東西分かれて争うのは、くだらないの一言だよね。見守りたかったり試練を与えたかったりしたいなら、直接そうしてるよ。できるんだから」
「そりゃ、そうか」
意味は、勝手に人間が決めたもの。
では、それを最初に決めたのは? なぜそれを決めたのか?
「し、しかし、教会の神父はそれが答えかのように説いております。なぜそんな、事実と違うことを伝えているのでしょう?」
「そうだな。神父が勝手に説いている。そこに答えはありそうだ。領主よ、今から教会の神父を問い詰めに行くから、一緒に来てもらおうか」
解釈を決めるのは、それが決めたものにとって都合がいいからだ。
そして教会が東西の流通を取り仕切るのは、利を得られるからだ。
「お前ら兄弟が仲悪いのは知ったことではない。しかし、スノーフォール本人が意味ないと言っていることにこだわって、民たちを苦しめる理由などない。そうだな?」
「おっしゃる通りです。私も、西の領主と話し合いをする必要がありそうです。……行きましょう。まずは、精霊教会へ」
東の領主は、よどみなく頷いた。
改めて、東の領主は俺たちに質問した。
「もしや、あなたがたは、スノーフォール様の使いなのでは?」
「……なぜそう思った?」
「その女の子が、あまりにこの肖像画にそっくりなものですから」
たしかに、小さいだけでこいつはスノーフォールである。
「へへっ」
ちびフォールは得意げだった。
スノーフォールの使い、か。
そう思ってもらえるなら、都合がいいな。
「それにあなたがつけているその仮面は、氷の魔法で作られたものでしょう? 室内でもほとんど解けないというのは……スノーフォール様の所業と、どうしても考えてしまいます」
「……スノーフォールはそこまで崇拝されているのか?」
「ええ。町の中心にある精霊教会は、スノーフォール様と霊域グラシアルを崇めるためのものですから」
「スノーフォールの使いだとしたらどうする?」
「お聞きしたいのです。私たちのしていることは、正しいのかどうか。東と西にわかれることが、精霊のためになるのかどうか」
「ほう?」
ここで東西の問題が出てくるか。
「領主よ、そもそも東と西に分かれているのは――」
「お察しの通り、霊域と精霊の考え方の違い……宗派の違いのようなものです」
東の領主は神妙な顔で頷いた。
「西の領主とは兄弟でした。ただ、精霊スノーフォールと霊域グラシアルの解釈が違いました。私は霊域グラシアルを雪や冷気を通して皆を見守っているのだと捉え、西の領主は寒いのは生き残るための試練と捉えております」
「そ、それだけ? 本当に? ただ考え方の違いでケンカしたってだけ?」
ちびフォールは面食らったようだ。他に何か理由があるのかと思いきや、自分が把握している情報だけだったことに少し呆れているらしい。
「私はその考えを精霊教会の神父に教わりました。おそらく弟も、神父に教わったのでしょう。今は、その神父たちも対立し、東の教会と西の教会に分かれております。神父はまるで聞いてきたかのように講釈をしますが、しかし実際のところ、本当なのか? と疑問になったりします」
「待て。教会の神父の口車に乗せられて、お前たち兄弟が対立したように聞こえるぞ。その対立のせいで東西が分かれることになったのだろう?」
「おっしゃる通りです。今思えば、神父に焚き付けられたのかもしれません」
東の領主は頷く。
俺は、ちびフォールに向き直って問う。
「実際のところはどうなんだ? ちびフォールよ」
「…………」
ちびフォールはしばし沈黙した後、答えた。
「……霊域も私も、ただそこにあるだけだよ。理由なんてない。解釈なんて、人間が勝手に決めたものでしょ。それこそ、どう解釈しようがいいと思うけど、私からしたらそれで東西分かれて争うのは、くだらないの一言だよね。見守りたかったり試練を与えたかったりしたいなら、直接そうしてるよ。できるんだから」
「そりゃ、そうか」
意味は、勝手に人間が決めたもの。
では、それを最初に決めたのは? なぜそれを決めたのか?
「し、しかし、教会の神父はそれが答えかのように説いております。なぜそんな、事実と違うことを伝えているのでしょう?」
「そうだな。神父が勝手に説いている。そこに答えはありそうだ。領主よ、今から教会の神父を問い詰めに行くから、一緒に来てもらおうか」
解釈を決めるのは、それが決めたものにとって都合がいいからだ。
そして教会が東西の流通を取り仕切るのは、利を得られるからだ。
「お前ら兄弟が仲悪いのは知ったことではない。しかし、スノーフォール本人が意味ないと言っていることにこだわって、民たちを苦しめる理由などない。そうだな?」
「おっしゃる通りです。私も、西の領主と話し合いをする必要がありそうです。……行きましょう。まずは、精霊教会へ」
東の領主は、よどみなく頷いた。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる