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迷子の野良猫
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何事かとイリス様と目を合わせ、顔を傾け合った時、王宮の警備兵がこちらにやってきた。
「イリス様!ご無事でしょうか?」
「え、えぇ。何も問題ないわ。何かあったの?」
「ご無事でなによりです。どうやら王宮の庭園に迷い込んだのか野良猫がいましたので、他にも居るのではないかと思いまして。」
「まぁ!猫ちゃん?何処にいるのかしら。会ってみたいわ。」
「それはなりません!!あ、いえ、かなり凶暴でイリス様にお怪我をさせてしまいます故、御理解ください。」
「そう...残念だわ。」
「念の為、部下を2人置いて行きます。何かあればすぐに参りますので。お前達、警備をしっかりな。」
「「は!」」
「それでは、私は失礼いたします。」
そう言うなり、警備兵の方は部下らしき2人を置いて足早に去って行ってしまった。
「猫ちゃん...見たかっですわ...」
しょぼりと肩を落としたイリス様は猫に会えなかったことを残念がっていた。
私も会ってみたかったな。猫ちゃん。
...猫ちゃん。...野良猫。
確か、警備兵達が来たのはあっちの方向。
あっちの方向は噴水がある方向。
野良猫が隠語だとしたら...
野良猫、王宮の庭園、噴水...まさか、ヒロインちゃん...?
私の頭に1つの可能性が閃いた所で、なんとローラン様が慌てた様子でこちらにやって来た。
「イリス!!」
「まぁ!ローラン様!!どうしてここへ?」
「いや、キミが無事な事を自分の目で確かめたくて。」
「私なら何ともありませんし、レイラとお茶会をしていただけですわ。何かありましたの?」
「いや、無事なら良いんだ。安心した。」
「?…まぁ!ローラン様!!この手の傷どうなさったのです?手当をしなければ!!...あれ?この傷、まるで猫ちゃんに引っかかれた様な...」
「あ、あぁ、そうなんだ。実は野良猫に引っかかれてしまってね。かなり凶暴で手こずったよ。」
「さっき警備兵の隊長がここに来て、同じことを言っていたわ。凶暴な野良猫がいたって。その猫ちゃんはどうなったの?」
「王宮の外に追いだ...んん。門から丁重にお帰りいただいたよ。」
今、追い出したって言いそうになってましたよね?ローラン様。
それにしてもさっきから野良猫という言葉に引っ掛かりを覚える。
警備兵の隊長って人もローラン様も何か隠している様に感じる。
野良猫はヒロインちゃん説が濃厚になって来たわね。
「そう。猫ちゃん、私も会ってみたかったですわ...」
「あんな危険な野良猫にイリスを合わせる訳にはいかない。もう二度と野良猫1匹入らせないよう警備や検問を見直さなくてはな。イリスとの結婚も控えているし、厳重にしなくては。」
「ローラン様、私、そんなに守って貰わなくても...」
「イリス、私がやりたいんだ。キミを守るのは夫である私の勤めであり、私の最優先事項なんだ。それに、結婚式は一生の思い出だ。危険な事など起きて欲しくないし完璧な式にさせてあげたい。キミに何不自由なく、無事に結婚式を終えて欲しいんだ。」
「ローラン様...」
目を潤ませ頬を赤くしたイリス様をローラン様は堪らず抱きしめた。
「イリス。私のイリス。早く結婚してキミを妻に迎えたい。私は待ちきれないんだ。明日にでも、いや、今すぐにでも妻にしたいんだ。」
「ローラン様...私も一刻も早くローラン様の妻となり、アナタを支えたいわ。」
「あぁ、イリス!!」
「ローラン様!!」
熱く抱きしめ合う2人には私の姿は見えていない様で、2人の世界にドップリと浸かっていた。
あの...私も居るんですけど...
はぁ...私もアルク様に会いたい...
ひんやりとした肌寒い風が私のスカートを掠めて行った。
「イリス様!ご無事でしょうか?」
「え、えぇ。何も問題ないわ。何かあったの?」
「ご無事でなによりです。どうやら王宮の庭園に迷い込んだのか野良猫がいましたので、他にも居るのではないかと思いまして。」
「まぁ!猫ちゃん?何処にいるのかしら。会ってみたいわ。」
「それはなりません!!あ、いえ、かなり凶暴でイリス様にお怪我をさせてしまいます故、御理解ください。」
「そう...残念だわ。」
「念の為、部下を2人置いて行きます。何かあればすぐに参りますので。お前達、警備をしっかりな。」
「「は!」」
「それでは、私は失礼いたします。」
そう言うなり、警備兵の方は部下らしき2人を置いて足早に去って行ってしまった。
「猫ちゃん...見たかっですわ...」
しょぼりと肩を落としたイリス様は猫に会えなかったことを残念がっていた。
私も会ってみたかったな。猫ちゃん。
...猫ちゃん。...野良猫。
確か、警備兵達が来たのはあっちの方向。
あっちの方向は噴水がある方向。
野良猫が隠語だとしたら...
野良猫、王宮の庭園、噴水...まさか、ヒロインちゃん...?
私の頭に1つの可能性が閃いた所で、なんとローラン様が慌てた様子でこちらにやって来た。
「イリス!!」
「まぁ!ローラン様!!どうしてここへ?」
「いや、キミが無事な事を自分の目で確かめたくて。」
「私なら何ともありませんし、レイラとお茶会をしていただけですわ。何かありましたの?」
「いや、無事なら良いんだ。安心した。」
「?…まぁ!ローラン様!!この手の傷どうなさったのです?手当をしなければ!!...あれ?この傷、まるで猫ちゃんに引っかかれた様な...」
「あ、あぁ、そうなんだ。実は野良猫に引っかかれてしまってね。かなり凶暴で手こずったよ。」
「さっき警備兵の隊長がここに来て、同じことを言っていたわ。凶暴な野良猫がいたって。その猫ちゃんはどうなったの?」
「王宮の外に追いだ...んん。門から丁重にお帰りいただいたよ。」
今、追い出したって言いそうになってましたよね?ローラン様。
それにしてもさっきから野良猫という言葉に引っ掛かりを覚える。
警備兵の隊長って人もローラン様も何か隠している様に感じる。
野良猫はヒロインちゃん説が濃厚になって来たわね。
「そう。猫ちゃん、私も会ってみたかったですわ...」
「あんな危険な野良猫にイリスを合わせる訳にはいかない。もう二度と野良猫1匹入らせないよう警備や検問を見直さなくてはな。イリスとの結婚も控えているし、厳重にしなくては。」
「ローラン様、私、そんなに守って貰わなくても...」
「イリス、私がやりたいんだ。キミを守るのは夫である私の勤めであり、私の最優先事項なんだ。それに、結婚式は一生の思い出だ。危険な事など起きて欲しくないし完璧な式にさせてあげたい。キミに何不自由なく、無事に結婚式を終えて欲しいんだ。」
「ローラン様...」
目を潤ませ頬を赤くしたイリス様をローラン様は堪らず抱きしめた。
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「ローラン様...私も一刻も早くローラン様の妻となり、アナタを支えたいわ。」
「あぁ、イリス!!」
「ローラン様!!」
熱く抱きしめ合う2人には私の姿は見えていない様で、2人の世界にドップリと浸かっていた。
あの...私も居るんですけど...
はぁ...私もアルク様に会いたい...
ひんやりとした肌寒い風が私のスカートを掠めて行った。
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