上 下
15 / 43

女子会

しおりを挟む
本日の授業も終わり、私は友人達と恒例になっている女子会に参加する為にサロンへ足を運びました。

サロンを開けると白を基調としたロココ調のテーブルやソファが並べられ、花瓶にはパステルカラーの可愛らしい花束が飾られています。
テーブルには焼き菓子が摘めるようになっており、早速摘んでいる友人もいました。

「遅れてしまってすみません。私が最後のようですね。」

「待っていましたわ、レイラ様。さぁ、おかけになって。」

私に声を掛けてくれたのは綿毛こと、リゼルさんだった。

「今日はずっとアルク殿下と手を繋いでいたんですって?羨ましいわ~。」

おっとりとお色気たっぷりに話しかけてきたのはエロスこと、セリーナさん。
さすがエロスの称号。エロ過ぎますお姉様。

「相変わらず仲がよろしいようで。私も羨ましい限りです。」

継いで声を掛けてきたのは健気こと、マリアさん。
羨ましさの中に寂しさが見え隠れしているのは、婚約者のセルゲイ先生が原因でしょう。
のらりくらりとしている彼は誰にも本心を語らない。
マリアさんという婚約者がいながら女性に対して来る者拒まず去るもの追わずのタイプ。
そんな彼を陰ながら見守っている彼女は健気過ぎる。

「しかもあの憧れの恋人繋ぎですよ!いいなー。私もザック様と繋いでみたいなー。」

目をキラキラ輝かせ、祈るように両手を組んだリゼルさんは明後日の方向を見ながら夢見ている様。

「そうね~。私もレイド様仕掛けてみたことあるけど、真っ赤になっちゃって、猫のように嫌がって離されてしまいましたわ~。何回狙ってもダメですの~。」

レイド様はお堅いタイプなので恋人繋ぎなどと目立つ様な事はもちろん、セリーナさんの色気も毒だと思いますよ。

「そういえば、今朝、レイラ様が変な令嬢に絡まれていたと耳にしましたが大丈夫でしたか?」

「え?そうだったんですか!?」

「初めて聞いたわ~。大丈夫でした?変なことされてません?」

そういえば、そんな事もありましたね。
ヒロインちゃんとエンカウントしたことよりアルク様との手繋ぎ事件の方が私的に重要だったのですっかり忘れてましたわ。

「ええ。問題ございませんわ。どうやら他の生徒とぶつかった拍子に転んでしまったようで、アルク殿下が助けに入られたのです。」

「さすがアルク殿下!紳士ですわね!」

「でも、それがどうして絡まれた事になってるんです?」

「実は、私とアルク様が絡まれたのではなく、私が彼女に絡んでしまったのです。」

嫌われてしまうかもと思い、しょんもりしました。
でも、仕方が無いのです。
今、私に必要なのは好かれる勇気より嫌われる勇気ですわ!

「アルク様を呼び捨てにしたので叱ってしまったのです!」

さぁ!罵られましょう!ドンと来いよ!
友人に嫌われるのは悲しいけど、仕方ありません。
これも悪役令嬢の為の第一歩ですわ!

「な~に?そんな事~?」

「自分の婚約者が自分より格下の令嬢に呼び捨てにされるのを叱るのは当たり前の事ではないでしょうか?」

「そうですわ!レイラ様は何も悪くありません!」

「で、でも、アルク様から手を差し伸べられて羨ましいとか、転んで汚れた顔を余計なお世話で拭ってしまったし、他の生徒もいるんだから気をつけなさいと叱りつけてしまいましたわ。」

「そんな事~?普通な事ですわよ?教師が注意する様な範囲じゃない~。私だったら平手打ちしてますわ~。」

おっとりエロス系お姉様は意外と過激派でした。

「なんだー。レイラ様悪くないじゃないですか。いつも清らかで天使の様なレイラ様が絡みに行くなんて何事かと思いましたー。」

リゼルさん?私、そんな風に見られてるの?リゼルさんにはフィルターが何枚も重なって見えてるのかしら?

「私が聞いた話と少し違いますね。なんでも、レイラ様が注意された後悲痛な面持ちでアルク殿下の元に戻られたので、周囲に聞こえないか見えない程度に何か嫌がらせを受けたのではないかと。でも、レイラ様がご無事で何よりです。」

あ、アルク様に嫌われたと思って絶望した時の顔をそんな風に解釈されてしまってたのですね。
ヒロインちゃん、とばっちりでしたね。申し訳ないですわ。

「あの、それは、アルク様に嫌われてしまったと思って·····」

「まぁ!そんな事はこの国が滅びても有り得ませんわ!あのアルク殿下の溺愛様!!しかもレイラ様は何も悪くありませんもの。嫌われる要素などありません。」

「そうですよ。私達も話をお伺いしましたが、アルク殿下がレイラ様を嫌いになる要素などありませんでした。もちろん、私達もです。むしろレイラ様は暴力ではなく、諭したのでしょう?立派です。」

「そうよ~。気にすることじゃないわ~。他の令嬢だったら私の様に平手打ちしてたわ~。」

3人はうんうんと頷くのをシンクロさせて私を励ましてくれました。
やはり私の友人は素敵です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

処理中です...