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2024年8月

8月1日

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長男を久しぶりに幼稚園に連れて行った。
カレンダーを見る限り久しぶりではないが、1ヶ月ぶりくらいの気持ちだった。
幼稚園に着く時間を指定されたので、言われた通りにするとジュン君と待ち合わせしていたようだ。
時間通りに着くと、お父さんと一緒に待っていたジュン君が長男を発見すると多く手を振って歓迎してくれた。
それに応えるかのように、走ってジュン君の元に向かった。
あれほど心配していたケンカなど無かったかのようだった。
ジュン君が肩からななめに提げている通園用のバッグから何かを取り出した。
渡された長男は横から下からとまじまじと見ていた。
追いつくと長男の手には透明のケースが握られてた。
ジュン君は俺が来たのを確認して、「セミのぬけがら、つかまえた。」と誇らしそうに説明してくれた。
長男に渡され見ると、3つの抜け殻が綿棒の容器に入っていた。
サイズ的には赤ちゃん用の綿棒の容器だった。
赤ちゃんがいることは知っていたが、改めて思い出させた。
おそらくお父さんが一緒に取りに行っているのだろう、寝不足もあるだろうし大変そうだ。
ママがやったと話していたが、容器は蓋が開かないようにビニールテープで止められており、いかにも子供を育てている人だと感じさせた。
きっとジュン君のお母さんも大変な目にあっているのだろう。
約束をしたのは、抜け殻は大事なものなのでなくさないように持って帰らせるためだった。
大事なものではあるがそこまでするのだろうかと思っていると、「子供がたくさんいるので、蓋を開けて室内でバラバラになると大変なので。」とジュン君のお父さんに言われた。
確かにそうだと思ったが、幼稚園でバラバラになるか家でバラバラになるかの違いかもしれない。
お礼を言いセミの抜け殻がを預かってから、幼稚園に長男を預けた。
会社に向かう間に、長男はセミと同じくらいうるさいので、等価交換なら今頃後ろのチャイドシートのセミの本体と一緒だったが、静かな抜け殻でよかったなと考えていた。
遅刻ギリギリだったが、なんとか間に合った。
昼に次の現場まで時間があったので、セミの抜け殻について調べると、9月上旬まであるそうだ。
まだまだ先だ。
俺も子供の頃はアイツと宿題もせずに抜け殻を探しに行っていた。
そう思うと、長男と抜け殻を探して長女には宿題について何も言えないかもしれない。
今日はまだテープがはったままだった。
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