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2024年7月

7月3日 1/2

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葬式には両親も参加して欲しいとのことだったので、子供たち全員を連れて行った。
家族葬ということで、こじんまりとしたものだった。
俺たち家族も参加することについて、親族からなにか言われると思っていたが、何も言われなかった。
アイツとの思い出や俺が子供の頃に起こした騒ぎを聞いていたらしく、少し恥ずかしい思いをした。
母もそんなことありましたねと言いながら、恥ずかしそうにしていた。
アイツのお母さんは元々は奥ゆかしい感じの大人しい性格だったらしいが、アイツが問題児であることに気がついてから、変わったそうだ。
母も初めて会ったときよりも、アイツと俺が親しくなるにつれ、たくましくなったと笑っていた。
子供の頃なので覚えてないことも多いが、最初から母のような騒がしいとも違うが元気な人だったと思っていた。
アイツのお母さんの妹の華佳さんは、俺も何度か会ったことがあるし、話をよく聞いていたので他人とは思えず色々と盛り上がってしまった。
ここ何年かは、元の大人しい性格に戻っていたようだが、長男のことを話す時は俺たちが子供の頃と同じような口ぶりだったと笑っていた。
妻も昨日よりも落ち着いたようで、楽しそうに話に加わっていた。

火葬する前に長女に話さなくてはと思っていたが話せないまま、火葬場に着いてしまった。
長女と離れた時に母にも「焼く前に話さないと。」と心配された。
ぐずった陽翔を妻が抱えたタイミングで、長女がトイレに行きたいとのことだたので着いていった。
俺も気持ちを固めるために用を足し、長女が出るのを待った。
女性用トイレの戸が動いた時には、妻にプロポーズした時くらい緊張した。
口の中はカラカラで、大事な話があるんだけどとやっとの思いで声に出せた。
キョトンとした顔が妻に似ていた。
「亡くなった人ね、凪の」とまで言うと、「おばちゃんでしょ?知ってるよ。」と言った。
さぞ滑稽だっただろうが「なんで?いつから?ずっと?」としか出てこなかった。
「前に芽衣ちゃんから聞いたの。昨日お母さんからも。仏壇の写真の人がお父さんでしょ?」と全て知っているようだった。
もう少し詳しく知りたかったが、戻るのが遅いからと妻が迎えに来た。
アイツのお母さんとの別れよりも、長女が全て知っていたことが気になりすぎて何も覚えてない。
火葬中もチラチラと長女の方ばかり見ていた。
長男はずっと父にくっついていた。
双子は母が見ていてくれたと思うがどうしていたのだろう。
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