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2024年5月

5月4日 2/2

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リビングには高校の卒業式に撮った家族写真があり、その制服に懐かしかった。
写真の隣には1月に忘れて帰った色水のペットボトルがあった。
そのペットボトルを見た長女は、あっ、といった顔をして手にとって振っていた。
その笑顔と音が小学生の頃のアイツのことを思い出させた。
その音を聞いて振り返った長男は、話をやめ走ってもう一本の方に手を伸ばした。
バシャバシャと2人で音を立て混ぜた後、色水のなかで不思議に動くアクリル絵の具をじっと見ていた。
俺とアイツもこうだったのだろう。
動きが緩やかになったころに、長女のペットボトルの水の方が綺麗なことに気がついたのか交換してと長女にせまった。
一瞬嫌そうな顔をしたが、いいよと長男と交換した。
長女が作ったものは長女の物なので返すようにと言いたかったが、長男が不機嫌になるのではと思うと声が出なかった。
知恵を絞ってやっと出たアイディアは、言葉になってからやらかしたと思った。
俺の発言で長男は喜び、妻は驚き、アイツのお母さんは恐怖に引きつった顔をした。
「みつも自分で作ったら?」、その一言が周りに与えた影響は計り知れない。
立ってジャンプしながら頭の上で手を叩く様子に、もう後戻りはできなかった。
妻とアイツのお母さんは目を合わせアワアワとしていた。
長女は部屋の隅に置かれた文房具店の袋に入った絵の具を見つけると、自分ももう一回作りたいと言った。
どうしようとアイツのお母さんを見つめると、天を仰いでいた。
その時の俺の顔はきっと助けを求めた子供の頃と同じだっただろう。
情けない話だが、アイツのお母さんなら助けてくれると本気で考えていた。
「外の水道でるから外で遊んできたら?」と助けてくれた。
その言葉に今度は妻が手で顔を覆った。
外で水遊びが出来ると聞き長男は更に喜んだ。
ゴミ箱を見ると何本かあったので2本とり外に出た。
思ったほどは濡れなかった。
長女は黒っぽい色を長男は緑の色水を作った。
俺たちが遊んでいる間に妻が車から着替えをとってくれた。
玄関にはアイツのお母さんが用意したバスタオルが敷いてあり子供の頃を思い出した。
長男は玄関で着替え、出来上がったばかりの色水について説明していた。
昼過ぎだったので俺の実家に向かった。
今回も実家に連絡してくれていたようで、母が出迎えてくれた。
作ってきた色水をここでも自慢していた。
両親は正月に会った時とさほど変わりはなかった。
夕飯は天ぷらだった。
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