夫の親友〜西本匡臣の日記〜

2024年3月

3月8日

夕方に会社に戻ると早瀬さんからメーカーの三村さんから電話が来て、東に先に電話したが折り返しがないので俺から連絡が欲しいと伝言された。
定時まで30分だったが急ぎかもしれないと電話すると、20日から展示会があるとのことだった。
いつもは東が参加していたので少し前に、連絡したが返事が来なかったので不参加かと聞かれた。
最近色々あったので忘れているだけだと思うが、東が行かなくても若い子を連れて自分が参加すると返事をした。
定時間近に申し訳ないと言うと、孫が産まれたので
奥さんが娘夫婦のところに居て1人で家にいるだけだからと話していた。
2人目だから上の子の面倒をみているらしい。
展示会がこの時期とは珍しいと聞くと、原材料費の高騰で予定していたものがものすごく値上がりしてしまったので見送りになる予定だったが、少し落ち着いたのでとのことだった。
もう少し早くしたかったが会場の都合がつかずにこんな時期までズレてしまってと申し訳無さそうにしていた。
もうすぐ新入社員も入るので、気になるものがあったら早目にするか少し落ち着いた頃にするとトラブルなく仕事ができると思うとのことだった。
俺は若い子の初々しさや失敗も意外と好きだと言うと、昔はそういう人も多くいましたねと懐かしそうにしていた。

昨日のみかんは朝にはまだ4個残っていた。
段ボール箱は今日の昼過ぎに紙の回収業者が回収していった。
今となってはただの運搬容器だが、子供の頃はすごく貴重で大事なものだったと思う。
1番嬉しかったのは今や懐かしのブラウン管テレビが入っていた大きな箱だった。
アイツにも自慢したし、箱に入って蓋も出来たし、まるで自分の家のようだった。
ボールペンで穴を開けてハサミをねじ込んで窓を作ったのも覚えている。
ドアを作ろうとして失敗して、最後はどうなったのだろう。
自分で始末したおぼえはないし、母が片付けたのだろうか。
寂しいような悲しいような思いをしたのは覚えている。
気がついたらこの仕事をしていたが、あのときの失敗を取り戻したいのだろうか。
多くの段ボール箱にアイツと一緒にボールペンを刺してハサミを使い穴をあけたので、母はテレビの箱と言ってもおぼえていないかもしれないが、どうなったのか聞いてみたい。
アイツ家のみかんの箱は厚く穴をあけるのに苦労した気がする。
子供にとってみかんの箱は丈夫な建材だったのだろう。
大人になった今では、規格サイズではない戸を作るために木を切ったり枠を作ってガラス屋さんに依頼するのはすごく楽しい。
ボールペンをドリルにハサミをのこぎりに持ち換えたと思うと、あのときの自分がそのまま今の自分と繋がっていて不思議な気分だった。