夫の親友〜西本匡臣の日記〜

2024年2月

2月2日

今日こそ佐々木君からヨシオ君の話を聞けると思いながら出社した。
こんな事を思うと不謹慎だが、佐々木君が戻ってこなかったあの日から毎日にハリが出た。
おそらくご両親が介入し安心したからだと思う。
いつもなら、きっと、乗田家の事で悩んでいたと思うがヨシオ君が頭のスペースを使ってると感じる。
これが俗に言う推し活ということだろうか。
佐々木君はもう来ていて、他の社員も勢ぞろいだった。
俺が最後かと思いながら椅子に座ると東が「揃ったし、ヨシオどうなった？」と楽しそうにしていた。
「大家さんが帰った後に掃除の続きをしたんです。ヨシオも落ち着いてきたからお母さんが、あんな会社辞めちゃいなさいって言ったんですけど、デモダッテちゃんみたいになって、俺んちに来た時は会社辞めたいって言ってたんですけど。」と佐々木君が話した。
「スパっと辞めちゃえよ」と東がもどかしいと言いたげに続きを急かした。
「お父さんも説得しだしたんですけど、やっぱりはっきりしなくて、俺は片付けてたんですけどトイレ行きたくなって、行ったらトイレも汚くて、ごみ袋取りに戻ってちょっと片付けて、おしっこしたんです。そしたら隣の部屋のトイレと隣り合ってる感じたと思うんですけど、水流れる音としたんです。俺の音も聞こえちゃったかなって思いながら、リビングに戻ろうとしたら、キッチンのシンクのお皿に虫いて殺虫剤かけたんですけど、中身ほとんどなくて、仕方ないから洗剤かけて洗ったんです。シンクは外の廊下に向く感じで。洗って布巾がないことに気がついて、ヨシオに布巾とかある？って聞いたんですけどわかんないしか言わなくて、お母さんが立ってキッチンの戸棚とか開けて探してくれたんです。ないから自然乾燥で乾ききらなかったらティッシュでって話してたらピンポンってまた鳴ったんです。」と佐々木が続けた。
「ついに来たか」と富田さんが食い入るように続きを急かした。
「ピンポンなったらまたヨシオがビビって、俺が出ようとしたら、隣の部屋の玄関が開く音と同時にガコンって玄関蹴る音したんです。隣の部屋のピンポンだったとお母さんと笑ってたんです。」と佐々木が話した。
早瀬さんが蹴られたのは隣ドアかと聞くとヨシオの家のと佐々木君が返した所で、片岡さんが出社してきた。
家の近くで高校生が転んだみたいで救急車止まってて遅刻しましたと焦りながら入ってきた。
俺達の様子を見て今日ってなんかありましたっけと、さらに焦りだした。
ヨシオ君のことを軽く説明しながら、時計を見ると始業時間を過ぎていた事に気付き、それぞれの仕事に向かった。