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第8章 結婚式
208【結婚式5 挨拶】
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「アレン。それから、ブリスタ嬢も。結婚おめでとう」
「素敵な式に呼んでもらえて嬉しいわ。何か困ったことがあったらいつでも言ってちょうだい。私達は貴方達の味方よ」
最初に俺達に挨拶に来てくれたのは、やはり、国王陛下と王妃様だった。この場には、侯爵位の貴族達も来ているが、いくら、受付で伯爵位を名乗ったとはいえ、国王陛下達より先に挨拶に来る事は出来なかったのだろう。
「お二人とも、お忙しい中お越し頂き、感謝致します。また、ご挨拶に伺えず、申し訳ありません」
本来であれば、俺達が挨拶に伺うべきところだが、今この場においては、陛下は伯爵としてこの場にいるため、俺達から挨拶に行くわけにいかなかったのだ。
「はっはっはっ! なに、構わんさ。そちのおかげでこの国は良い方向に変わり始めた。そんな功労者のために足を運ぶくらい、造作もない事よの。それに……この場でしか出来ん事もあるしな」
「ええ。そうですね」
そう言って、国王陛下と王妃様は俺達に頭を下げた。
「な、なにを!」
その様子に、周囲で成り行きを見守っていた貴族達はぎょっとする。いくら、伯爵としてこの場に来ているとはいえ、王族が頭を下げるなど、あってはならない事だからだ。
「息子達の事、謝罪させて欲しい。謝ってすむ事ではないが、謝らずにはいられないのだ……そして、息子達を改心させてくれてありがとう。そちならば、あやつらを殺す事も出来たであろうに……本当に感謝する」
頭を下げ続ける国王陛下の様子に、周囲のざわつきはどんどん大きくなる。
「せっかくの場を騒がせてしまってごめんなさい。でもこの場でしか、この人は貴方達に謝罪する事が出来ないの。私と同じように、この人を許す必要はないわ。でもどうか、この人の謝罪も受け取って欲しいの」
王妃様は、王子達が俺の両親が殺した事について、以前謝ってくれた。だが、国王陛下は、そう簡単に頭を下げていい立場の人間ではない。ゆえに王妃様はこの場を利用したのだろう。国王陛下が、1人の親として、俺に謝罪する事が出来るように。
「……承知しました。謝罪を受け取ります。ですので、お二人とも頭を上げてください」
「ああ、それで十分じゃ。感謝するぞ」
「ありがとね。アレン」
そう言って、国王陛下と王妃様は頭を上げる。その後は、普通の挨拶をした後、国王陛下達は俺達の元を離れた。
「(驚きましたね)」
「(うん。まさか国王陛下が謝罪して下さるとは思わなかったよ。しかも、皆の前で)」
個室などの密室で謝罪するのと、皆の視線がある中で謝罪するのとでは、大きく意味が変わってくる。謝罪とは、本来、自分の非を認めて、相手に許しを請う行為だ。国王陛下達の場合、許しは求めていなかったので、ただ、自分達の非を認めた、つまりは、俺に借りがあると宣言したようなものなのだ。
いくら、今の国王陛下は国王陛下ではなく、伯爵として、1人の親としての謝罪だったとしても、事の重大さは変わらない。
「(また『アレン=クランフォード』の価値が上がりましたね)」
「(はぁ……変なのが寄って来なければいいんだけど……)」
「(その時はわたくしが追い返しますよ)」
「(……ありがとう。どうしようもなくなったらお願いするよ)」
「(ふふ。了解です)」
貴族や商人の男性陣が押し寄せてきた場合は、自分で対処するつもりだが、女性陣が押し寄せてきた場合は、俺では対処しきれない場合もある。男である俺が下手に対処をすると、『娘が(精神的に)傷付いた。責任を取れ!』と言われてしまうためだ。
だが、クリスが対処した場合、どれだけ傷付いたとしても『女性同士の戦いで負けた』だけであり、俺達が責任を取る必要はない。むしろ、その娘にとって、醜聞にしかならないだろう。ゆえに、女性が押し寄せてきた場合は、クリスに対応してもらうのが一番なのだ。
「(さぁ、次の方が来られましたよ。切り替えましょう)」
「(ファミール侯爵家の方々、か……うん。そうだね。切り替えて、かつ、楽しもう!)」
「(はい! もちろんです!)」
俺達の前には、ファミール侯爵家の方々を先頭に、俺達に挨拶したい人達の列が出来ていた。ファミール侯爵家の方々は、俺達が落ち着くのを、待ってくださっている。今後の事で不安はあるが、今は披露宴の最中であり、挨拶に来てくれた人達の対応に集中するべきだろう。俺達は気合を入れなおして、挨拶に来てくださった方々の対応を行った。
それから先は、大きな問題もなく、参列者達と挨拶をしていく。
(まぁ、国王陛下から謝罪されるなんてレベルの問題なんてそうそう起こらないよね)
そんなフラグにもなりかねないような事を考えたりもしたが、特に問題もなく、俺達は参列者との挨拶を終えた。この後は、時間まで雑談して、披露宴は終了となる予定だ。
「アレン、少し良いか」
「モーリス王太子? ええ、もちろんです。どうされました?」
挨拶を終えて、一息ついていた俺に、モーリス王太子が声をかけて来た。
「う、む。その、なんだ。ちょっとここでは言いにくいので後で時間を貰えるか?」
「え……この後、ですか?」
歯切れの悪い様子で、モーリス王太子が俺に依頼されたが、あいにく結婚式の後も色々と予定が詰まっている。とはいえ、モーリス王太子からの頼み事を断るのも、外聞が良くない。
どうしたものかと俺が困っていると、ソルシャ様が間に入ってくださった。
「モーリス王太子。アレン様が困っていらっしゃいますよ。それに、あまり無理を言ってはクリス様が可哀そうです。アレン様は新郎なのですから、式の後は新婦のクリス様と一緒にいさせてあげなくては」
「――っ!! あ、ああ。そうだな。無理を言ってすまない。後日、空いている時でいいので時間を貰えるか?」
ソルシャ様のはっきりとした物言いに、意外にもモーリス王太子は自分の非を認めた。
(絶対怒り出すと思ったのに……なんか心境の変化でもあったのかな?)
「承知しました。お心遣いに感謝致します。なるべく早く時間を作って、ご連絡させて頂きます」
「ああ。頼む」
そう言って、モーリス王太子は離れて行く。ソルシャ様も、モーリス王太子について行ったが、最後に俺達に向かってお辞儀した時の笑顔は、前回見た時とは比べ物にならないほど、いい笑顔だった。
「モーリス王太子とソルシャ様も上手くいっている……のかな?」
「そうですね。少なくとも、ソルシャ様にとっては良い関係になったと思います」
含みのある言い方だったが、俺はモーリス王太子にとってもいい関係になったと思っている。今のソルシャ様が主導権を握っている状態は、モーリス王太子が更生するのに、丁度いい状態だろう。更生するか、それとも、誰かに『ざまぁ』されるような王太子のままでいるのかは、モーリス王太子次第だ。
(話したい内容はその事かな? ま、どうでもいいんだけどね)
モーリス王太子が黒幕ではない事は分かり、さらにモーリス王太子の本性を周知させた今、俺はモーリス王太子に対する興味をほとんどなくしていた。後は、更正するも没落するも好きにすればいいだろう。
こうして、俺とクリスの披露宴は幕を閉じた。
「素敵な式に呼んでもらえて嬉しいわ。何か困ったことがあったらいつでも言ってちょうだい。私達は貴方達の味方よ」
最初に俺達に挨拶に来てくれたのは、やはり、国王陛下と王妃様だった。この場には、侯爵位の貴族達も来ているが、いくら、受付で伯爵位を名乗ったとはいえ、国王陛下達より先に挨拶に来る事は出来なかったのだろう。
「お二人とも、お忙しい中お越し頂き、感謝致します。また、ご挨拶に伺えず、申し訳ありません」
本来であれば、俺達が挨拶に伺うべきところだが、今この場においては、陛下は伯爵としてこの場にいるため、俺達から挨拶に行くわけにいかなかったのだ。
「はっはっはっ! なに、構わんさ。そちのおかげでこの国は良い方向に変わり始めた。そんな功労者のために足を運ぶくらい、造作もない事よの。それに……この場でしか出来ん事もあるしな」
「ええ。そうですね」
そう言って、国王陛下と王妃様は俺達に頭を下げた。
「な、なにを!」
その様子に、周囲で成り行きを見守っていた貴族達はぎょっとする。いくら、伯爵としてこの場に来ているとはいえ、王族が頭を下げるなど、あってはならない事だからだ。
「息子達の事、謝罪させて欲しい。謝ってすむ事ではないが、謝らずにはいられないのだ……そして、息子達を改心させてくれてありがとう。そちならば、あやつらを殺す事も出来たであろうに……本当に感謝する」
頭を下げ続ける国王陛下の様子に、周囲のざわつきはどんどん大きくなる。
「せっかくの場を騒がせてしまってごめんなさい。でもこの場でしか、この人は貴方達に謝罪する事が出来ないの。私と同じように、この人を許す必要はないわ。でもどうか、この人の謝罪も受け取って欲しいの」
王妃様は、王子達が俺の両親が殺した事について、以前謝ってくれた。だが、国王陛下は、そう簡単に頭を下げていい立場の人間ではない。ゆえに王妃様はこの場を利用したのだろう。国王陛下が、1人の親として、俺に謝罪する事が出来るように。
「……承知しました。謝罪を受け取ります。ですので、お二人とも頭を上げてください」
「ああ、それで十分じゃ。感謝するぞ」
「ありがとね。アレン」
そう言って、国王陛下と王妃様は頭を上げる。その後は、普通の挨拶をした後、国王陛下達は俺達の元を離れた。
「(驚きましたね)」
「(うん。まさか国王陛下が謝罪して下さるとは思わなかったよ。しかも、皆の前で)」
個室などの密室で謝罪するのと、皆の視線がある中で謝罪するのとでは、大きく意味が変わってくる。謝罪とは、本来、自分の非を認めて、相手に許しを請う行為だ。国王陛下達の場合、許しは求めていなかったので、ただ、自分達の非を認めた、つまりは、俺に借りがあると宣言したようなものなのだ。
いくら、今の国王陛下は国王陛下ではなく、伯爵として、1人の親としての謝罪だったとしても、事の重大さは変わらない。
「(また『アレン=クランフォード』の価値が上がりましたね)」
「(はぁ……変なのが寄って来なければいいんだけど……)」
「(その時はわたくしが追い返しますよ)」
「(……ありがとう。どうしようもなくなったらお願いするよ)」
「(ふふ。了解です)」
貴族や商人の男性陣が押し寄せてきた場合は、自分で対処するつもりだが、女性陣が押し寄せてきた場合は、俺では対処しきれない場合もある。男である俺が下手に対処をすると、『娘が(精神的に)傷付いた。責任を取れ!』と言われてしまうためだ。
だが、クリスが対処した場合、どれだけ傷付いたとしても『女性同士の戦いで負けた』だけであり、俺達が責任を取る必要はない。むしろ、その娘にとって、醜聞にしかならないだろう。ゆえに、女性が押し寄せてきた場合は、クリスに対応してもらうのが一番なのだ。
「(さぁ、次の方が来られましたよ。切り替えましょう)」
「(ファミール侯爵家の方々、か……うん。そうだね。切り替えて、かつ、楽しもう!)」
「(はい! もちろんです!)」
俺達の前には、ファミール侯爵家の方々を先頭に、俺達に挨拶したい人達の列が出来ていた。ファミール侯爵家の方々は、俺達が落ち着くのを、待ってくださっている。今後の事で不安はあるが、今は披露宴の最中であり、挨拶に来てくれた人達の対応に集中するべきだろう。俺達は気合を入れなおして、挨拶に来てくださった方々の対応を行った。
それから先は、大きな問題もなく、参列者達と挨拶をしていく。
(まぁ、国王陛下から謝罪されるなんてレベルの問題なんてそうそう起こらないよね)
そんなフラグにもなりかねないような事を考えたりもしたが、特に問題もなく、俺達は参列者との挨拶を終えた。この後は、時間まで雑談して、披露宴は終了となる予定だ。
「アレン、少し良いか」
「モーリス王太子? ええ、もちろんです。どうされました?」
挨拶を終えて、一息ついていた俺に、モーリス王太子が声をかけて来た。
「う、む。その、なんだ。ちょっとここでは言いにくいので後で時間を貰えるか?」
「え……この後、ですか?」
歯切れの悪い様子で、モーリス王太子が俺に依頼されたが、あいにく結婚式の後も色々と予定が詰まっている。とはいえ、モーリス王太子からの頼み事を断るのも、外聞が良くない。
どうしたものかと俺が困っていると、ソルシャ様が間に入ってくださった。
「モーリス王太子。アレン様が困っていらっしゃいますよ。それに、あまり無理を言ってはクリス様が可哀そうです。アレン様は新郎なのですから、式の後は新婦のクリス様と一緒にいさせてあげなくては」
「――っ!! あ、ああ。そうだな。無理を言ってすまない。後日、空いている時でいいので時間を貰えるか?」
ソルシャ様のはっきりとした物言いに、意外にもモーリス王太子は自分の非を認めた。
(絶対怒り出すと思ったのに……なんか心境の変化でもあったのかな?)
「承知しました。お心遣いに感謝致します。なるべく早く時間を作って、ご連絡させて頂きます」
「ああ。頼む」
そう言って、モーリス王太子は離れて行く。ソルシャ様も、モーリス王太子について行ったが、最後に俺達に向かってお辞儀した時の笑顔は、前回見た時とは比べ物にならないほど、いい笑顔だった。
「モーリス王太子とソルシャ様も上手くいっている……のかな?」
「そうですね。少なくとも、ソルシャ様にとっては良い関係になったと思います」
含みのある言い方だったが、俺はモーリス王太子にとってもいい関係になったと思っている。今のソルシャ様が主導権を握っている状態は、モーリス王太子が更生するのに、丁度いい状態だろう。更生するか、それとも、誰かに『ざまぁ』されるような王太子のままでいるのかは、モーリス王太子次第だ。
(話したい内容はその事かな? ま、どうでもいいんだけどね)
モーリス王太子が黒幕ではない事は分かり、さらにモーリス王太子の本性を周知させた今、俺はモーリス王太子に対する興味をほとんどなくしていた。後は、更正するも没落するも好きにすればいいだろう。
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