上 下
135 / 214
第5章 転換期

135【魔道具開発5 『創作』の欠点】

しおりを挟む
「あ、マークさん。お兄ちゃんも。遅いよー」
「ごめんごめん、お待たせ!」
「いやぁ、お待たせしてしまって申し訳ありません。アレンさんが改良された魔道具が素晴らしい出来だったので、思わず見入ってしまいました」
「なるほど……つまり、お兄ちゃんのせいってわけですね」
「そういう事になりますね」
「なんで!?」

 ユリとマークさんが華麗な連携プレイで攻めてくる。

(息ぴったりすぎない!? よほど馬が合ったのかな? なんか2人共楽しそう……)

 2人の息の合い具合に若干嫉妬してしまう。

「さ、冗談はさておき、昼食にしましょう。ユリさんが素敵な昼食を用意してくださったんですよ」
「ここの所メン料理ばかり食べてたからね。今日はがっつり、肉メニューにしてみたの!」

 ユリの言う通り、テーブルの上には数々の肉料理が置かれている。並べられた料理は心なしか、いつも以上に美味しそうに見えた。

(確かに久しぶりの麺が嬉しくてメン屋にばっか行ってたからな。がっつり系は嬉しいかも!)

「いいね! 美味しそう。食べて良い?」
「いいよー。マークさんもどうぞ」
「ありがとうございます。では、遠慮なく」
「「頂きます!」」

 俺はさっそく肉料理にがっつく。

「んー! 美味しい!」
「これは! 本当に美味しいですね。ユリさんは魔法だけでなく、料理の才能もあるんですね」
「ありがとうございます。これに関してはお母さんのおかげです」
「ああ、イリスさんの。確かに彼女の料理も美味しかったですね。ですが、この料理もそれに負けず劣らず美味しいですよ」
「わぁ、ありがとうございます!」

 何かと母さんを目標にしているユリにとって、マークさんの言葉は最高の誉め言葉だろう。本当に嬉しそうにしている。

「それじゃあ、明日もお昼は私が作りますね! 色々お世話になっているお礼です!」
「お礼なんて……私が好きでやっているだけなので気にしないでください。ですが、美味しいお昼を頂けるのは嬉しいので、ぜひお願いします」
「任せてください!」

 そんな風にお昼の楽しい時間は過ぎて行ったのだが、途中で肝心なことを聞き忘れていることに気付いた。

「マークさん、先ほどおっしゃっていた『創作』の欠点についてですが……」
「ああ! すみません。料理が美味しすぎて忘れていました。――こほん。さて、アレンさんは『創作』の欠点について何かお気づきではありませんか?」

 マークさんが料理を食べる手を止めて俺に向き直る。

「欠点……他の属性の魔法使いがいないと強力な魔道具が作れない点ですか?」

 今、俺の実験室には、他の属性の魔法使いの協力が無いと改良出来ない魔道具がいくつかある。改良案はあるのだが、今の俺では実行することが出来ないのだ。

「まさしく。例えば一番簡単な『灯り』の魔道具。『創作』だけでも部屋を見渡せるぐらいの明るさの魔道具は作れるでしょう。ですが、『属性』を修めた魔法使いに協力してもらえば、街中を明るく照らす魔道具を作る事が出来るでしょう。この差が如実に表れる場面があります。どの場面だか、分かりますか?」
「えっと……すみません。わか――」
「――戦い……ですか?」

 答えが分からなかった俺の代わりにユリが答えた。

「ご名答です。戦いにおいて『創作』は、単体では最弱と言えるでしょう。どのように工夫しても他の属性の下位互換にしかなりません。単体では役に立たない。その代わり、皆の協力が得られれば最高の力を発揮する。それが『創作』です。ゆえに、『創作』魔法使いは、あらかじめ戦いに備えておく必要があるのです」

 確かに戦いにおいて何も備えていなかったら、俺は何もできずにやられてしまうだろう。

「備え……」
「ええ。言い換えれば、他の属性の魔法使い達の力を借りて強力な武器の魔道具を『創作』しておく必要があります」

 強力な武器の魔道具と聞いて思い浮かんだ魔道具がある。マークさんの失敗作の中にあった銃だ。あれを改良して、前世の銃と同じくらいの威力を出せるようにすれば、護身用としては十分な武器になるだろう。

(銃……知識チートの定番だな。作り方もだいたい分かるし改良については問題ないだろう。問題は……俺に銃が使いこなせるかだな)

 銃は強力な武器だが、武器である以上、誰を傷つけるかは使い手にかかっている。使い手の腕が悪ければ味方を傷つけてしまう可能性もあるのだ。そして残念なことに俺は銃を撃った経験が無い。

(ラノベだと、知識チートで銃を作った連中って当たり前みたいに100発100中させてるけど、現実はそんなに甘くない……俺が銃を使ったら、いつか絶対誤射する。何とかしないとな)

「分かりました。護身用の強力な武器の魔道具を用意します。ユリも協力してね」
「もちろん! でも、ごめん。今読んでる魔導書、まだ半分以上残ってるんだ。このペースだと読み終わるのに1週間くらいかかるかも……」
「いや、ユリさん。以前も言いましたが、通常、魔導書を読み切るには数週間から1ヶ月程度かかります。1週間で読み切るというのはとんでもない偉業だという事を忘れないでください」
「でも、お兄ちゃんは1日で2冊読みました」
「……アレンさんは偉業を通り越して、異常なのだと思ってください」

(本人を前にしてひどい言い草だな!? まぁ、知識チートだから異常って言われてもしょうがないけど……)

「大丈夫だよ。家に戻るまでまだ5ヶ月近くあるんだ。無理しないペースで修めてくれたら十分だよ」

(今の失敗作を改良すれば、銃の練習くらいできるだろうしね)

「うん! じゃあ、2ヶ月で全部の属性を修められるように頑張る!」
「……私ですら3ヶ月かかったんですけどね。いえ、目標を高く持つのは良い事です。ですが、無理していると思ったら止めますからね?」
「はい! 無理しない範囲で頑張ります!」
「ええ。そうしてください」

 マークさんから『創作』の欠点を聞いた俺は、次にやることを決めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

処理中です...