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第0章 ある未来の話

1.【あの日~復讐の始まり1 だるま】

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【sideアレン(主人公) 15歳の誕生日】

 15歳の誕生日のあの日、俺の幸せは崩れ落ちた。
 
 とても大切な……命より大切なものを奪われたからだ。

(なんで――なんで、なんで!なんで!?)

 明らかにを狙っての犯行。

(俺が色々開発したから? 裕福になったから? だから狙われた? 俺が悪いっていうのか?? ……いや違う。俺は……俺達は何も間違っていない。こんなことをするクズどもがいるからいけないんだ。これ以上は絶対に奪わせない。奪われる前に殺してやる!)

 ここに1人の復讐者が生まれた。
 
 
 
 
【2年後 sideアイズ(犯罪者?) 復讐の始まり】
 
「――はぁ、はぁ、はぁ」
 
 暗い森の中を全力で走る。
 
「なんなんだ……なんなんだよ、あいつは!!」
 
 振り返るが、人影は見えない。
 
「はぁ、はぁ…………まいたか?」
 
 息を整える。ここまで、かなり飛ばしてきた。精鋭部隊に属していた俺が全力疾走したのだ。まいたに違いない。
 
 ドバン!
 
 静かだった森の中に乾いた破裂音が響く。それと同時に、俺の左足が吹き飛んだ。
 
「いっ…………!? ぐあぁぁぁああ!!!!」
 
 バランスを崩して、地面に転がる。遅れてやってきた激痛に耐えきれず絶叫した。
 
「足が! 俺の足が!!!!」

 パキッ

「!!」
 
 背後から枝を踏む音が聞こえた。足の痛みを忘れて振り返る。
 
「ぁぁぁぁ………………」
 
 信じたくなかった。しかし、『そいつ』はそこにいる。右手には、煙を上げている魔砲銃が握られていた。
 
 なぜこんなことになったのか。
 
 
     ■     ■     ■


【数分前】
 
 仕事終わりに後輩と飲みに向かっていた。今日は新しくできたバーに向かう予定だ。引っ込み思案な後輩に、バーのママの口説き方についてレクチャーしながら歩いていると、急に足元が光り、気が付いたら見知らぬ森の中にいた。
 
「――『転移』魔法!?」
 
 人間を転移させるとなると、かなり高度な『転移』魔法が必要だ。産まれて初めて転移を経験した俺達は呆然と立ち尽くす。
 
「ここは………………どこだ?」
 
 あたりを見渡すも、見えるのは木ばかりで、動物の気配すらなかった。静寂につつまれた森は薄気味悪く、下手に動くことができない。
 
「――誰か! 誰かいないのか!?」
 
 『転移』魔法でここに飛ばされたなら、誰かが意図的に俺達を飛ばしたはずだ。そいつが俺達に友好的かはわからない。むしろ敵である可能性の方が高い。それでも、声を出さずにはいられなかった。
 
 声が届いたのか、黒いフードをかぶった男が現れる。
 
「アイズとブルーだな?」
 
 『そいつ』は俺達の名前を呼んだ。どうやら俺達の素性はばれているらしい。
 
「そうだが……お前は誰だ?」
 
 『そいつ』は答えない。何もしゃべらず、フードの奥から俺達のことをじっと見つめてくる。
 
「……目的はなんだ?」
 
 俺は沈黙に耐えられなくなり、さらに質問をした。
 
「俺達を転移させたのはお前だろう? 何が目的だ? 答えろ!!」 
「――――俺の質問に答えてもらうぞ。2年前、お前達はある・・家を襲ったな?」
 
 心当たりはある。2年前の極秘作戦だ。成金野郎を襲い、あるもの・・・・を譲ってもらった。なかなか譲らなかったから色々・・苦労した事を覚えている。しかし、作戦の詳細は極秘事項だ。たとえわずかな情報でも、漏らすことはできない。
 
(そもそも、なぜこいつは極秘作戦を知っている?)

 俺は『そいつ』に対する警戒心を1ランク強めた。色々と問い詰めるために『そいつ』に詰め寄る。
 
「貴様…………どこでそれを知った!?」
 
 俺が相手に詰め寄り、相手の視界から後輩を隠した。相手の注意が俺に向いているうちに、後輩が拘束用の魔道具の起動準備をする。いつもの流れだ。
 
「答えろ!? その情報をどこで――」

 ドバン!

「……!?!?」
 
 突然聞こえたきた破裂音に、頭がくらくらする。

 頭を振ってから『そいつ』を見ると、目の前の『そいつ』は、後輩に何かの魔道具を向けていた。見たこともない魔道具からは煙が上がっており、先ほどの破裂音はこの魔道具から発せられたようだ。
 
「貴様、何を――」

 ドサッ!
 
 背後で人が倒れる音がした。振り向くと後輩と思われる身体が倒れている。しかし、その身体に頭はついていなかった。
 
「…………ブルー?」
 
 耳も口もないのだ。返事があるわけがない。
 
「ブルー? おい、ブルー?? どうしたんだ、おい!」
 
 突然、後輩の頭が無くなったという現実を受け入れられず、俺は話しかけ続ける。しかし、後輩からの返事はない。ようやく俺は、後輩が死んだことを理解した。
 
「貴様!! よくもブルーを!! いきなり何をするんだ! なんなんだ、その魔道具は!?」 
「これか? 『魔砲銃』と言って命中すると破裂する弾を発射する魔道具だ。俺からは絶対に逃げられない。まぁ、安心しろ。質問に答えたら痛い思いはしないから。もう一度聞くぞ。お前達はの家を襲ったな?」 
「『魔砲銃』? 聞いたことな…………ん? 待て! 貴様、あの家の子供か!?」
 
 極秘作戦の後、あの家の子供を捕まえるために別の部隊があの家に向かったが、だれも生きて戻らなかった。送り込んだ部隊の死体は、全て身体の一部が破裂していたと聞く。ブルーの頭も破裂していた。まさか――。
 
「ああ、そうだ」 
「お、お前が!? ひぃ! ひゃーぁぁああああ!!!!」
 
 俺は逃げ出した。逃げて逃げて逃げて。そして捕まったのだ。
 
 
     ■     ■     ■
 
 
「だから逃げられないってのに。繰り返すけど、痛い思いをしたくなければ俺の質問に答えるんだ。いいな?」 
「し……知らない! 何も知らない!」 
「…………そうか」

 ドバン! ドバン! ドバン!
 
 3発の銃声が響き、男の右足と両腕が吹き飛ぶ。
 
「ぐがぁぁぁああああ!!!!!!」 
「思い出したか?」 
「が……ぐ……ぁぁ……し、知らない。本当に…………知ら……な……い」
 
 痛みと出血で意識が朦朧としてくる。薄れていく意識の中で、もうすぐ死ぬ事を悟った。恐怖はない。むしろ、死んで楽になれることに安堵さえ感じる。
 
「まだダメだよ。死ぬ前にお兄ちゃんの質問に答えて」
 
 『そいつ』以外の声に顔を上げると、いつの間にか『そいつ』の隣に少女がいた。『その子』が、こちらに手をむけると、自分の体が暖かい光に包まれていくのを感じる。
 
「これで大丈夫。ほら、もう痛くないでしょ? ちゃんと答えて?」
 
 『その子』が手を下ろす。両腕両足こそ無かったが、痛みは消え、出血も止まっている。

 (『回復』魔法!? そ、そんな……これじゃ……)

 これでは、死ぬ事はできない。
 
「あ……あ、あぁ…………」 
「もう一度聞くぞ。2年前、お前達は俺達の家に強盗に入ったな? 目的はなんだ?」 
「お、俺達は……か、金が欲しくて……」
「へーー、そっかぁーー…………でもそれだけなら、あんな事・・・・する必要は無いよな?」 
「い、いや……その……」 
「もう全部知ってるんだよ。お前達があの日何をしたかは。問題はな? 誰がそれを指示したかって事なんだよ。実行犯であるお前達3人・・を許す気はないが、所詮下っ端だ。黒幕がいるんだろ? そいつが知りたいんだ。さっさと吐け!!!!」
「う……うぅ…………」
 
 やはり、こいつは全部知っていた。

 俺は下手な誤魔化しが通用しない事を悟る。しかし、話すことはできない。話せば、『あの人』が許すわけがない。たとえどんな拷問を受けたとしても『あの人』にだけは逆らえない。『あの人』の恐怖に支配されれ、俺は沈黙した。
 
「…………」 
「……話す気はない、か。なら仕方ないな」
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