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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~

2-27.ピクシーのピート(3)「チョーちやほやされてるんですけど!」

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 もうね、チョーへろへろなワケ。分かる?
 昼間はボートの魔晶石浄化して、夕方には呪われた亡霊の浄化して、そんでその後はチョーーーばかでか蟹の中の 魔力溜まりマナプールを浄化しようとして、もーーーーーーーーー、へろへろなワケ!
 へろんへろんのぺらんぺらんなの!
 
 ほんとさ。ちょっとコクシされすぎじゃない? 最近のアタシってばさ!?
 だって、アレよ?
 ひげモサは、まあ、良いわよ。そこそこ。それなり? うん。
 チリポンもね。アタシを運ぶ乗り物として、頑張ってくれてたし? まあ、許してあげるけど?
 他、何よ?
 顔長にょろヨイとその子分たち?
 なーーーーんもしてない!
 チリポンの手下たち?
 蟹の卵拾ってただけ!
 
 もうね。
 アタシばーーーーーーーーーっか!
 アタシばーーーーっか、働き過ぎよ!?
 このままじゃこの、素敵で愛らしい世界の至宝たるピート・ピック・ピレスちゃんが!
 カローシしちゃうじゃない!?
 知ってる? カローシすると、異世界にテンセーとかするらしーわよ?
 あとおっきな鉄の馬車にひき殺されても異世界にテンセーするんだって!
 良く分かンないけど!
 
 とにかくワタクシこと世界の至宝のピートちゃんは、もうストライキします!
 そして寝ます! 
 って、チリポン達に宣言してやったのね。
 そしたら、何!?
 先に寝てんの!
 あいつら!
 チョーーー許せないんですけど!?
 何なのよ! 寝るわよ! もう!
 
 
 で。
 顔長とかチリポン達とかと、まあどちゃっとさ。
 テキトーな部屋でザコ寝よ、ザコ寝。ザコ寝シショーよ。
 ボーマ城塞とかゆー、さ。石ばっかりでチョーつまんないとこで。
 朝までザコ寝シショーよ。
 
 まあアタシなんかはお昼前まで優雅に寝てるけど?
 好きなだけね!
 んで。
 起きたら、アレよ? アレ。
 あの、アデアデ? とかいう? ソバカスちゃんが、チョーにたへらにたへらして、アタシのこと見てるの!
 うわー! よ!? 「んー、妖精ちゃんお目覚めでちゅー」とか!
 ちょっと! いくらピートちゃんが世界の至宝だからって、もうちょっとキョリカン? そういうのわきまえなさいよ!
 
 けどソバカスちゃん以外も何かチョーアタシのこと見にくるわけ。
 まあ? その気持ちは分かるけど?
 アタシってばチョーーー愛らしいしね? そりゃイタシカタナシ? だものね。
「あの……妖精様は、果物がお好きだと聞いて……」
 なーんて言いながら、一人が木の器に盛り盛りした果物の山とか、持ってくるわけ。
 ふふふん、何よ、良い心がけじゃない? 
 わるくない、わるくないわよ、グミンドモ!
 
 部屋を出てお昼の日差し浴びながら、フルーツパーリーするわけ。
 風の吹くまま気の向くままよ。優雅に飛びながら、オレンジをちゅーって食べて。
 ココナッツジュースもちゅーって飲んで。
 そのアタシの後ろを、何人も籠やら器やらに色々入れて付いて来るの。
 ふふん、良いわよ、良いわよ。
 やだもう、チョーちやほやされてるんですけど!
 
 このね。今、居る? ボーマ城塞とかって言う場所は、サンガク城塞? とかいうやーつーなんだって。
 何かキョーミ無いけど、横に付いて来てるソバカスちゃんとか他の取り巻きーズとかが、話してくるのね。
 こう、けっこう切り立った岩肌に穴を掘ったり、斜面を削ったり土を盛ったりして、段々にしたりして?
 まー、昔のヒトが、頑張って作ったんだって。
 もっと元々を辿ると、ドワーフの作った城塞を改造改築して、今のカタチになってんだって。
 
 けど、人間ってほら。おばかなの多いじゃない? 
 おばかじゃなくても、だいたいチョー早く死ぬじゃん?
 朝生まれて、お昼過ぎて、夜になると死んじゃうー、みたいな?
 だから、古い記録とか無くしてたり、使い方分からなくなってたりしたマドーグとか部屋とか、チョーあるんだって。
 まー、皆が皆、主サマみたいにチョー賢かったりはしないから? ムリからぬことよね。
 
 そんで、一番低いところは、ぐるーっと城壁に囲まれて、何か練兵所的なところとか、厩舎とか、家畜小屋とか、船着き場とかがあるのね。
 兵舎とか、物置とか、そんなのも。
 そこでは、チリポンの手下の顎トンガリのアダぽんと、顔長にょろヨイの手下のグラぽんとが、試合とかしてたりね、したりしたわけ。
 別に全然興味ないけど、まあ明らかにアダぽんの方が上ね。
 普段はドワーフ金属の丸盾使ってんだけど今は練習用の木の盾で、その、盾の使い方? それがけっこう巧いワケ。
 グラぽんは槍ね。試合だから穂先のないただの棒だけど。
 兵士の使うチョー長ーーいやつじゃなくて、投げ槍と同じくらいの短めのやつ。
 周りを、多分ここの警備兵とかが囲んで、やいやいやいやい大騒ぎよ。野蛮ねー。
 
「はっはー!
 動きが雑いぜ!
 槍だからってでっかく振り回しゃ良いってもんじゃねーぞ!」
 あら、何かエラソーね、顎トンガリのくせに。
「う、うるせーな!
 俺は狩人なん……だから、いいんだよ!」
 とか言いつつ、また大振りして盾に弾かれてるわね。
 こーの、ミジュクモノー!

 
 城壁の方にぷらーんぷらーんって、飛んでったら、顔長にょろヨイのトコの女子ーズ二人が腰掛けて遠く見てるの。
 何してんのー? て、聞いたら、あやかしとかいう東方人の使い魔を飛ばして、街の方に連絡してんだって。
 へー、便利ねー。
 けどそのあやかしとかって、アタシみたいにお話ししたり出来るのかしら?
 
「私のは無理。あんまり位の高いあやかしじゃないから」
「カリーナも腕上げて来てんだから、もうじき中級くらいのを召喚出来ンじゃない?」
 ふーん、良く分かんないけどー、と思って聞き流してると、ソバカスちゃんが急に変なテンションになって、
「なあなあ、そのあやかし言うんは、自分で作ったモノを姿として与えられるんやろ?」
「ん、そうだよ。
 低級ものなら小さい姿を一つだけ。
 中級くらいになると人間大くらいまで。
 高級なのになると、複数の姿や、凄く大きい姿も与えられるよ」
 
「せ、せやたらさ!
 妖精ちゃんそっくりの、ものっそ可愛ィ~姿も、与えたり出来るん?」
 え、何見てんのよ?
「う、うん。出来る……けど?」
 何よ、ちょっと。何かいやーな感じなんですけど?
 
「……師匠!
 アタシにその、あやかし召喚術いうのん?
 教えて! お願い!」
 ……何かチョー必死だから、置いていこーっと。
「あ、あ、待ってえな! 妖精ちゃん待って!
 カリナン! 頼むからね! 後で話そな!」
 うーん? でも、それならソバカスちゃんもちょっと大人しくなるのかな?
 
 
 城壁の方から山の方に向かって、下から二段目のあたりね。
 ここ、石畳の部分もあるけど、土のところもあって、あれ、こう、段々の? 畑とかも斜面にあるのね。
 何か特にココナッツとかサボテンフルーツとか、オレンジとかザクロとか育ててたりね。
 あと、甘い樹液のとれるヤシの木とかも育ててるのね。
 その周りに、ニキニキと丸顔オジサンと、ケービタイチョーとかとがなーんかたむろってて、アタシに気付いたら手を振って来たのね。
 
「ねえ、ピクシー! ちょっと来てー!」
 って。
 ニキニキはなんかけっこう目つき悪い系女子なんだけど、アタシへの態度はそんなに悪くもないのよね。
 まー、良くも無いけど。
 多分元々ここより北の方から来てる、ってのも関係あるわよね。
 北の方のがこの辺よりか精霊信仰強めだし、特にアタシみたいな妖精ももっと居るしね。
 ……ソバカスちゃんは、ちょっとアレな娘だから別ね。
 
「あー、妖精のお姫さん?
 一つ聞きたいんやけどな。これ、その浄化っちゅーやつ? でけへんもんやろか?」
「はー? もー、何よ、またピートちゃんをていよく利用してやろうって悪巧みィ~?」
 
 やーよー! 今日はぜったい働かなーい! ユーキューキューカ貰うもーん!
 
「そう悪く受け取らないでくれ。
 ニキが言うには、岩蟹の殻を砕いて撒くと作物の生育が良いというんだが、この殻も少しばかり濁った魔力の影響があるというんでな。
 これを浄化してより良いものにするには、妖精殿のお力が必要なのだ」
 ケービタイチョーが畏まってそんな風に言うの。
 んー。
 まあ、そこまで言われたらねー。とも思うけど……。
「私からもお願いします、妖精様。
 この果物もヤシ酒も、妖精様のお力があれば、より良いものに出来るはずです」
 アタシに付き従っていたソバカスちゃんと取り巻きーズの中から、ずーっとフルーツ盛りの器を持って着いてきてた、ホッソリした女の人がそう言ってくると、取り巻きーズ全員で懇願ウェーブ大合唱よ。
 
 もー! しょーがないわねー!
 けど、地面に積まれた岩蟹の殻を見ると、確かに濁った魔力は帯びてるけど、そーんなに重度では無かったのよね。
「んー……この程度の濁りなら、わざわざアタシがやる必要無いわよ。
 バカでか蟹ならともかく、この程度は死んだ後暫く放っておけば散っていくし」
 
 魔獣の濁った魔力は、生きているときにはその生命と結びついているから、自然に浄化されたりすることはまず無いけど、死んだら別ね。
 魂を失ったカラダからは自然と魔力そのものも抜けていくし、環境さえ良ければ濁りも浄化される。
 ま、逆に環境が悪いと、濁りも蓄積され増幅されたりするから、そこからさらに不死者が現れたり、濁りの強い魔力溜まりマナプールが発生してしまったりもするけど、このあたりの濁りのコンゲン? だったバカでか蟹は倒して浄化もしといたし、その影響もほぼ無くなっているだろうから、まあ大丈夫だと思うけどもねー。
 
「そうなんか? どんくらい放っておけばええんやろか?」
「んー? 
 2、3ヶ月から半年くらい?」
「長ッ!?」
「う、うむ。
 その、もう少し早くは出来ないものだろうか?」
「ゼータクねー。 
 ま、ちょっとアタシの妖精の粉でも振りかければ、すぐに浄化された状態になるんじゃない?
 あとで粉あげるから、それで勝手になんとかしてちょーだい」
 て。
 そう言ってやると、もうキショクマンメンよね。
 ふふん、モノドモよろこびアガメタテマツルのよ!
 
「ありがとう御座います。夫ともども、深い感謝を捧げさせて頂きます」
 ホッソリちゃんはそう言って、ケービタイチョーと2人で並んで、両手のひらを組んで祈りを捧げるポーズ。
 あらん、わかってるじゃない? ふふん、サイダイゲンのケイイのポーズね!
 何かその横でニキニキが、「お……夫? ふ、夫婦なの……?」とか呟いて呆けてるけど、「オット」て、まあそーゆー意味の言葉よね? ニキニキはあんまり言葉知らないのかしら?
「ウソ、マジで……?」って、そんな青ざめるよーなこと?
 
 丸顔オジサンも「ほんまありがとう! 助かるわー!」とかやいやいうるさいし声デカい。
 感謝するのは良いけど、丸顔オジサンとかソバカスちゃんはもっとテキセツなキョリカン保ってよね!
 
 
 んで、その丸顔オジサンが、「せや、妖精さんにも見て貰おうかいなー!」とか言いながら、岩肌を削った奥の方へと誘うのね。
 洞窟、というか、山を削って作った部屋の方ね。
「何よー? 何か企んでんのー?」
「そんなんしますかいな。
 こっちや、こっち。この奥や」
 何かどんどん暑くなる部屋の奥には、けっこうでっかい円筒状で密閉された金属の入れ物? みたいなのが二つあって、その一方は火を焚いて何かフットー? させてるみたいなのよ。
「おー、アルヴァーロ、イベンダーさん、どないですか?」
 中にはソバカスちゃんの弟のヒョロヒョロリンと、ヒゲもさドワーフが居て、その円筒状のばかみたいにでっかい入れ物とかを弄くり回してるの。
 
「おおう、ジョヴァンニ……と、ピートか。
 アデリアに……あ、あんたはジェシだったか? ホルストの奥方の」
 あら? 何かヒゲもさったら、いつの間にか色々詳しいじゃない? 
「ジョヴァンニ叔父、点検はもうじき終わりますよ。
 イベンダーさんはドワーフ合金の鍛冶も出来るそうなんで、古ぅなってるパーツは、今度持って来てくらはるて」
「おおォ~、そら助かりますわ!
 いやー、この蒸留器の修繕たらは、全部アニチェトに任せっきりでしたからなあ!」
 
 ふーん、とか、聞いてて、あれ、そーいえば、って。ちょっと思い出して。
「何か、装置直してほしー、とか言ってたのって、その、ジョーリュー器? のはなしなの?」
「あー、まあこれも、やな。
 他にもアニチェトに任せっきりやったもんぎょーさんあるんで、いっぱいいっぱいでしてん」
「午前中にはボート2艘と中型交易船一艘もメンテナンスしたし、城壁上のバリスタもな。
 バリスタも元に戻すならドワーフ合金のパーツを作ってくるが、この際メンテナンスし易いように別の素材で作り直すってのも考えた方が良いかもしれんぞ?」
 あら、マメに働いてんのねえ、ヒゲもさったら。
「そこはまた考え所やなー」
 うーんむ、と丸顔オジサンが丸い顔をくしゃっとすると、ヒョロヒョロリンが、
「……僕も、ちゃんと勉強して、父さんの仕事引き継げるよう頑張るわ」
 とか、何か殊勝なこと言い出しちゃって、ちょっとしんみり空気出して来て?
 わー、って。
 もうね、そーゆーの止めて! って感じ?
 なのでさっさか退散しまーす!
 
 
 で、さっきのジョーリュー器っていうのは、ヤシ酒をジョーリュー? するのに使うんだって。
 ヤシ酒は、甘い樹液を使って作るお酒ね。
 ふつーに作ると濁り酒になって、そこからジョーリューってのすると、透き通ったキレーなお酒になるの。
 ソレをまた取り巻キーズの一人がボウルみたいな器に入れて持ってきて、「妖精様もいかがですか?」ってね。
 もーう、そんな風にされたら? ンフ。飲んであげるしかないじゃない?
 ま、なかなかよ。なかなかの出来。
 ンフ。プカプカ浮かぶのもけっこう気持ちいーわね。
 
 そのまま器持った取り巻きちゃんに指示出してウロウロしてたら、厨房みたいなとこの奥で、顔長にょろヨイが何人かの女の人たちと壺か何かを前にもにょもにょやってんのね。
「おお~、ご機嫌だねぇ~」
 て。
「なーによォ~? 悪いィ~?
 ふふーん? にょろヨイこそ、何よー?
 女の人はべらせてさー?
 ハーレム? ハーレムってやつー?
 ユルサレンわよー?」
 ふふん、気持ちいーわね。
「んー、これね。岩蟹卵の塩漬けをねー。してるんだよねー。
 あー、そーいえば、これも浄化してもらった方良いかもって、イベンダーが言ってたんだよねぇ~」
 あーら、またなのー? 世話の焼ける、ねー。
「むふーん。しょーあらいわえー。
 ほらー、粉パター、粉パター」
 魔法の粉大サービスよ。
 
 
 それから、夕方ちかくになった辺りで、この山岳城塞の一番上の段? 
 塔とかそーゆーの除いての、よ。
 上の方の庭園に来てね。
 何気にけっこう綺麗に整えてあるわけよ、これが。
 花壇に、ちょっとした噴水とかあって。
 そしたら、そこのベンチに、何かちょっとタソガレちゃってるおばちゃんが居たのね。
 取り巻きーズとか、ソバカスちゃんとかも、何かちょっとかしこまっちゃったりしてさ。
 
「ママ……」
 ソバカスちゃんがそう呟くのか話しかけるのか分からないくらいの声で言って、周りの取り巻きーズが、「ロジータ様……」って、ね。
「アデリア……ああ、ソレと、妖精さんか……」
 なーんて。夕闇にちょっと逆光気味で振り返ってね。
 そこからすっ……と抜け出してガラガラの声でこう続けて来たの。
「アニチェトんこと、良うしてくれたらしいな。
 お礼……さして貰うわ」
 
 ふふん? 色々やりすぎて、もう何のことかは良く分からないけど、いいのよー、別にー? もっとショウサンしてくれちゃってー!
「あン人は最期まで、アタシ等のことばっかり気にしとって……せやから死んでも死に切れんかったんやろな。
 けどそれが……あんな風におかしなことンなって……。
 アンタが来てくれへんかったら、あン人はまだ、呪われた亡霊のままやったんやろな……」
 んーー……ああ、昨日の亡霊のはなし、ね? うん、覚えてるわよ? ちゃーんと? 覚えてる、覚えてる。
 
「ママ……パパは、もうきちんと天に召されたんかな?
 神様の国に、行けたんやろかな?」
 ソバカスちゃんも取り巻きーズも、なんかチョーしんみりモード入ってきちゃってる。
 ちょっと止めてよ、しんみりモード! しんみりが移るじゃない!
 
「あのねー、ニンゲンとかってよくそーゆーコト言うけど、意味ないからー」
 あんまりしんみりモードなられても困るから、ちょぉーっとばかしキョージュさせてあげることにしたのね。
「肉体を持って生まれたモノにはね、タマシイとレイがあるの。
 タマシイは大いなる生命樹の一部に戻って、そしてまた暫くしたら新たな肉体へと生まれ変わるの。
 だから、アニ……チェ? のタマシイも、もう今頃きっと、大いなる生命樹の一つになってるわ」
 
 ふふん。ハクシキでしょ? 
 アタシってば、愛らしさのみならずエイチのカタマリでもあるのよね。アイとエイチのカタマリよ?
 まあ、主サマの言ってたことそのまんまだけどね!
 
「死んだ後にもこっちに残っちゃってるのは、タマシイじゃないの。
 レイの、一部。
 レイはね、そいつがその生の中で生きてきてた記憶や感情や、そーいったもののカタマリなの。
 オンネン、とか、ムネン、とかってゆーでしょ?
 残るのはそーゆー、ネン、なのよ。ただ、気持ちとか思いが残ってただけ。
 アンタたちのことが心配だ、っていう気持ちだけが、ここに残ってたのよ。
 まあそれが濁りの影響で変な風になってたワケだけど、それも無くなったしね」
 
「せやたら、パパの魂は……?」
「変なコトさえなければ、次に進むため大いなる生命樹の一つになってると思うわよ。
 そしてアナタ達の縁が強ければ、多分次の生でも何らかの結びつきが出来るかもしれないし、残ってたネン? も、もう綺麗になって、アナタ達の中にあるはずよ」
 もうね。だからしんみりモードはオシマーイ! ね?
 
 そう思って言ってあげたのに、ママちゃんもソバカスちゃんも取り巻きーズも、ますますしんみり顔して、
「……アニチェトの残した思いは、アタシ等ん中に生きてる……ちゅうことやな……」
 とか、そんなこと言い出して、もうしんみり大合唱よ。
 もうね、好きにしてよ!
 
 何かこれからここでアタシの為の宴開いてくれるって言うし?
 それをふにゃふにゃのーんびり待ってたげるわ。
 
 そう言えば、ていうか、さっきさ。
 何かちょっと引っかかったことがあるのよね。
 タマシイとレイのはなししてて、何か……んーーー?
 このはなし、何で主サマから聞いたんだっけ? て。
 確か───大いなる生命樹の流れの中に一体化するはずの死者のタマシイが、まれにそのまんま次の生命の中にレイとしての記憶を持ったまま生まれ変わることがあるとかないとか、確かそーんな話だった気がするんだけど……。
 ……これ、使命とカンケーある話だっけか?
 
 ……思い出せないってことは、多分カンケーないね! うん。
 

 
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